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クラス中から、視線を感じる気が…

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それから少しして、俺は学校へとたどり着いた。

自転車を止めて、教室へと向かう中、俺は周りをキョロキョロ確認しつつ進んでいく。

今のところ、薬の副作用を感じた事はなかったが、念には念をというわけだった。

そうしてようやく校舎に入り、上靴に履き替えた時だった。

「あーっ、翔馬!なんで学校に来てるの?ダメって言ったじゃん!」

「うわあっ!!文也か。脅かすなよ!」

突然背後から声がしたので、心臓が止まるかと思った。

「そうだけどさ……もういい加減、行かないとまずいかなーって。それに、今ところ、特に何もないし、多分大丈夫だろう。」

そう、今だって、特に誰かが寄り付いてくる気配はない。

要はただの、取り越し苦労だったという訳だ。

「えー!?でも、天音ちゃんが──」

「はいはい、心配ありがとう。ほら、早く行こう!」

俺は文也の手を引いて、教室へと向かう。

とはいえ、俺にとっては、これからが難題だった。



教室に入ると、クラス中の生徒が、俺に釘付けになった。

きっと、俺が久しぶりにやって来たので、度肝を抜いたのだろう。

だが、それにしても、やけに目がギラついているような……、いや、きっと気のせいだろう。

「………あっ。」

その時、席に座っていた春則と目が合った。

けれども春則は、すぐに俺から目線を逸らした。

……やっぱり、嫌われてしまったのだろうか?

「あっ、おはよう翔馬君!お久しぶりだねえ。てっきり死んじゃったのかと思ったよ。」

俺が落ち込んでいると、そこにクラスメイトのかけはし真咲まさきが、笑顔で駆け寄ってきた。

真咲は、小柄で童顔で可愛らしい見た目なので、髪を伸ばせば女の子に見間違えそうだ。

そんな見た目とは裏腹に、性格は少々毒っけがあるのだが……。

「って、なんで突っ立ってるの?ほら、早く春則君のところに行ってあげなよ。」

「うわっ!!ちょ…待って!」

背中を押してくる真咲を振り切って、俺は文也に助けを求めた。

「……あっ、そうだ真咲君!前に俺のレアカード見たいって言ってたじゃん。今少しだけ持ってるから、見せてあげるよ。」

「本当!?見せて見せて~!」

真咲は子どものようにはしゃぐと、文也の方に駆け寄って行った。

ふうー、ひとまず助かった。

……とはいえ、このまま春則と何も話すわけにはいかない。

俺は深呼吸をすると、ゆっくりと春則の席に向かった。

「あっ……おはよう………ッ!」

ダメだ、やっぱり近くで春則を見ると、胸がドキドキしてしまい、うまく頭が回らない。

「………翔馬。」

「えっ!……な…何……?」

春則にシカトされるのを覚悟で挨拶をしていたため、ちょっと嬉しかった。

「昼休み、屋上に来てくれ。……文也も一緒でいい。」

「……えっ?ここじゃ、ダメなの?」

「……ああ、まずい。非常にな。本当なら、今すぐ帰ってほしいところなんだがな。」

「俺は、帰らないから!」

少々声を荒立ててしまったので、再びクラス中の注目を集めた。

……と思っていたが、さっきからずっと、視線が刺さっていた、そんな気がした。

「ご…ごめん。……お昼休みだな?絶対行くから!」

俺はそれだけ言い残すと、自分の席に座り、ホームルームが始まるのを待った。
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