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春則への想い

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「行ってきまーす!」

俺は母さんに見送られた後、自転車に乗って学校に向かった。

久しぶりに外に出て、太陽が少し眩しく思えた。

それでも俺の心は、あの快晴のように晴れやかにはなれなかった。

副作用の事は確かに少し不安だ。

けれども春則の事の方が、俺の心に陰りを落としていた。

『愛する者同士』

あの時の綺礼の言葉。

そして、春則からのキス。

最初は全然、頭の整理が追いつかなかった。

春則が、俺を、愛していた……。

その事実を理解して、動揺しつつも、俺自身、どこかでそんな感情があった事も、今になって気づいた。

でもそう思ったのは、こんな身体になったせいかもしれない。

そう思うと、どうしても春則には言えなくて、今に至っている。

ひょっとしたら春則は、俺が拒絶していると思い、傷ついているかもしれない。

それでもまだ、元の身体に戻るまでは、本当の気持ちは伝えられない。

もし、身体が戻っても、春則の事が好きなままなら、この想いを打ち明けよう。

だからそれまでには、春則と普通に話せるようにしよう。

たとえ、春則の顔が、まともに見られなくても……。
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