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救世主の神様現る?

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「おっ…女、だと……?」

目の前に現れたのは、ピンクの羽衣を着た、黒髪の少女だった。

まさかこの村に女がいたとは思わず、目が釘付けになった。

「よう!待っておったぞ!」

初対面なはずなのに、随分馴れ馴れしいガキだなと思いつつ、俺は睨みつけた。

「か…か……可愛い!!」
「……はあ?」

今まで散々ビビっていたはずの文也が、急に声色を上げたかと思えば、少女に駆け寄った。

「俺、文也って言うんだ。君の名前は?何でここにいるの?困ってる事があったら何でも言ってよ。助けになるよ!」

コイツ、こんなキャラだったかと唖然とした。
ひょっとして、ロリコンなのか?

一方少女の方は、さも慣れてるように平然としていた。

一体、この少女は何者だろうか。

「なんじゃ⁉︎随分とケッタイな顔じゃのう。誰だか分からなかったぞ。」

すると急に文也が黙り込んだ。

「うわあーーー!!春くんに化粧されてたの、忘れてたーーー!!」

と思ったら、次の瞬間、文也は頭を抱えて絶叫した。

が、別にどうでもいいので、俺が話を進めることにした。

「お前、誰だよ。その様子だと、俺たちの事は知っているようだが、何が目的だ?」

すると少女は不敵な笑みを浮かべて、胸にポンと手を当てた。

「わらわの名は天音。この村の神様であり、お主らの救世主となる者じゃ!」
「………全く意味が理解できないんだが。」

やはりこの村には、まともな奴はいないのだろうと、俺はため息をついた。

「なんじゃその態度は?わらわとしては、このまま村人どもに突き出しても構わんのじゃぞ。」
「ほう。やれるものならやってみろよ。」

こんな怪しい奴、誰が信用するというのだろうか。

こんなガキ1人なら、余裕で対処できる。

そう思い天音に歩み寄った時だった。

「駄目だよ春くん!!女の子に手を出すなんて最低だよ。この人でなし!!」

さっきまで落ち込んでいたはずの文也が、両手を広げて立ち塞がった。

何でコイツにそこまで言われなければいけないのかと腹が立ったが、ひとまず落ち着いて、もう少し話を聞いてみることにした。

「で、救世主ってどういう意味だ?」
「なーに、簡単な話じゃ。翔馬を救い出す手助けをしてやろうということじゃ。」

コイツは自身を村の神様だと名乗った。

つまりはコイツの言う事が本当ならば、村の中でもかなりの重役ということになる。

そんな立場の奴が、俺たちに手を貸す利があるとは思えず、俺は首を横に振った。

「そんな話、誰が乗るんだよ。お断りだ。」

だが天音は堪える様子もなく、余裕の表情で笑っていた。

「まあそう言うでない。せっかく、愛する翔馬を救えるチャンスを、みすみす逃すことはなかろう。」
「なっ……⁉︎」

何故、それを知っている?
俺は文也にしか話していないのに……。

「じゃじゃーん!この水晶玉で、お主らの行動をずっと見ておったのじゃ。だから、お主らの事は、全てお見通しじゃ!」

にわかには信じられないが、もう何でもありな気がして、気にならなくなってきた。

「なんと素晴らしい力をお持ちで!是非、我々に力をお貸しください、天音様!!」

さっきからキャラもテンションもブレブレな文也は、今後一切無視することにした。

「だとしてだな、お前には関係ない事だろ。どうして、手を貸すんだ?」

すると急に天音は、にやけた表情をやめて、神妙な顔つきになった。

「それでじゃな、わらわは思ったのじゃ。愛する者同士を引き離すのは、あまりにも酷な事ではなかろうかとのう。そしてそれは、あやつのためでもある、そう思ったのじゃ。」

愛する者同士、か。

正直のところ、俺の独りよがりではあるのだが、コイツが都合の良い勘違いをしているならそれでいい。

「……ああ、そうだ。俺と翔馬は恋人同士だ。だから、どうしても取り返したい。力を貸してくれ。」

そう言って俺は、深々とお辞儀して懇願するフリをした。

とりあえず今は天音を頼ってみて、少しでも怪しいところがあれば、すぐに手を切ればいい。
そう思った。

「良かろう。では、わらわ達は今から仲間じゃ!」

天音はそう言って腕を伸ばして、手のひらを広げた。

俺がその手を取る前に、文也がサッと割って入った。

「感謝感激だよ、天音ちゃん!君みたいな可愛い女の子が助けてくれるなんて!!」

すると天音は一瞬キョトンとして、すぐにニヤリと笑った。

「おっほっほ。言い忘れておったが、わらわは男じゃ。」
「へえー、男………ええーーーーーっ!!」

あまりにショックだったのか、文也は白目を剥いて気絶した。
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