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やばい奴がいたんだが
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それから一時間くらい経っただろうか。
文也は相変わらず足音がすると俺たちを怖がらそうとする。
そんな話を聞き流し、愚痴を言いながらついて行く春則。
一方俺はというと、どっち側にもつけずにいた。
俺が帰るとか言い出したばっかりに、二人の間に微妙な空気が流れていたからだ。
なんとか場を和ませようと考えたが、思いついたのは歌を歌うことだけだった。
そうすれば俺の奇行ぶりに、さっきの件なんて忘れてくれるだろう。
意を決して歌おうとしたとき、再び文也が足を止めた。
「ここだよ、ここ。この門、間違いない。やっと着いたよー。」
目を凝らしてみると、そこには古びた門と、その周りを囲む柵が見えた。
噂は本当だったのか。
半信半疑だったが、実際にその光景を見ると、真実にはいられない。
だが春則は首をかしげていた。
「文也、なんでお前はここがそうだってわかるんだよ。地図にも載ってないんだろ。」
文也は一瞬動きを止めたが、すぐに振り向いた。
「いやー、春くん。俺の情報網を舐めないでくれる?村の一つくらい探すなんて、お手の物だよ。」
文也は得意げに話すが、やけに早口だった。
そしてそのまま一方的に話を打ち切り、柵を登り始めた。
「えっ、入るの?」
やっと帰れると思っていた俺は困惑した。
いくら人がいないとしても、不法侵入はまずいだろう。
なんとかやめさせようとしたが、あっという間に文也は柵の中に行ってしまった。
どうしようかと春則に聞いてみたが、放っておけの一点張りだった。
仕方なく俺は、文也を連れ戻すために村に入った。
堀を降りると、文也が待ち構えていた。
てっきり先に行っていると思ったので、意外だった。
事情を説明して、早く帰ろうと説得しようとした。
しかしさっきから頑なに自分の意思を曲げない文也のことだ。
きっと話し合っても無駄だろう。
俺は諦めて文也について行くことにした。
ある程度探索したら、満足するだろう。
そう思っていたが、文也の足取りはやけに早い。
まるで目的地まで、俺を誘導しているようだ。
「ちょっと待てって。どこまで行くんだよ?」
俺の静止なんて聞いていないようだ。
とにかく今は取り残されないよう、ついて行くしかない。
それからしばらく進むと、文也は足を止め、口元に手を当てた。
「静かに。あそこに何かいる。」
そう言われて見てみると、大木の下に白っぽい何かがいた。
さらに目を凝らすと、それは白装束を着た男だった。
何をしているのかしばらく観察してみると、男は突然服を脱ぎ始め、ふんどし一丁になった。
異様な光景に、俺が身動きできずにいると、男がゆっくりと振り返った。
その顔は気持ち悪いほど満面の笑みだった。
「うわあーーー!!」
俺は情け無い悲鳴をあげると、すぐに振り返って走り出した。
暗くて先が見えない中、何度も躓きそうになりながらも、なんとか柵を目指した。
後ろから男の声と足音が聞こえる。
文也のことは気になったが、とても後ろに振り返る余裕はなかった。
こんな場所に人がいたこと自体にも信じられないことなのに、あんな奇行なことをする奴だ。
捕まれば何をされるかわからない。
これなら幽霊の方がまだマシだった。
あれこれ考えているうちに、柵にたどり着いた俺は、急いでよじ登った。
勢いよく飛び降りた俺を見て、春則はキョトンとしていた。
俺は事情を説明し、早く逃げるよう促す。
しかし文也の行方を聞かれて、俺はハッとした。
しまった、置いてきてしまった。
引き返そうか迷っていると、文也が柵をよじ登ってくる姿が見えた。
「文也、早く!」
文也は焦っているのか、なかなか柵を登れない。
その間にも、足音が近づいてくる。
しかも柵の外からも聞こえてきた。
まさか、仲間がいるのか?
さらに気持ちが焦ってくる。
俺がたじろいでいると、春則が柵に登った。
一体、何をするつもりだ?
「おい、翔馬。ちょっと肩貸せ。」
俺が柵の前まで行くと、春則は俺を踏み台にした。
「さっさと掴まれ。」
春則は腕を伸ばして、文也を引き上げた。
一安心したのも束の間、足音がすぐそこまで近づいているのに気がついた。
「早く逃げるぞ。」
俺たちは一斉に走り出した。
文也は相変わらず足音がすると俺たちを怖がらそうとする。
そんな話を聞き流し、愚痴を言いながらついて行く春則。
一方俺はというと、どっち側にもつけずにいた。
俺が帰るとか言い出したばっかりに、二人の間に微妙な空気が流れていたからだ。
なんとか場を和ませようと考えたが、思いついたのは歌を歌うことだけだった。
そうすれば俺の奇行ぶりに、さっきの件なんて忘れてくれるだろう。
意を決して歌おうとしたとき、再び文也が足を止めた。
「ここだよ、ここ。この門、間違いない。やっと着いたよー。」
目を凝らしてみると、そこには古びた門と、その周りを囲む柵が見えた。
噂は本当だったのか。
半信半疑だったが、実際にその光景を見ると、真実にはいられない。
だが春則は首をかしげていた。
「文也、なんでお前はここがそうだってわかるんだよ。地図にも載ってないんだろ。」
文也は一瞬動きを止めたが、すぐに振り向いた。
「いやー、春くん。俺の情報網を舐めないでくれる?村の一つくらい探すなんて、お手の物だよ。」
文也は得意げに話すが、やけに早口だった。
そしてそのまま一方的に話を打ち切り、柵を登り始めた。
「えっ、入るの?」
やっと帰れると思っていた俺は困惑した。
いくら人がいないとしても、不法侵入はまずいだろう。
なんとかやめさせようとしたが、あっという間に文也は柵の中に行ってしまった。
どうしようかと春則に聞いてみたが、放っておけの一点張りだった。
仕方なく俺は、文也を連れ戻すために村に入った。
堀を降りると、文也が待ち構えていた。
てっきり先に行っていると思ったので、意外だった。
事情を説明して、早く帰ろうと説得しようとした。
しかしさっきから頑なに自分の意思を曲げない文也のことだ。
きっと話し合っても無駄だろう。
俺は諦めて文也について行くことにした。
ある程度探索したら、満足するだろう。
そう思っていたが、文也の足取りはやけに早い。
まるで目的地まで、俺を誘導しているようだ。
「ちょっと待てって。どこまで行くんだよ?」
俺の静止なんて聞いていないようだ。
とにかく今は取り残されないよう、ついて行くしかない。
それからしばらく進むと、文也は足を止め、口元に手を当てた。
「静かに。あそこに何かいる。」
そう言われて見てみると、大木の下に白っぽい何かがいた。
さらに目を凝らすと、それは白装束を着た男だった。
何をしているのかしばらく観察してみると、男は突然服を脱ぎ始め、ふんどし一丁になった。
異様な光景に、俺が身動きできずにいると、男がゆっくりと振り返った。
その顔は気持ち悪いほど満面の笑みだった。
「うわあーーー!!」
俺は情け無い悲鳴をあげると、すぐに振り返って走り出した。
暗くて先が見えない中、何度も躓きそうになりながらも、なんとか柵を目指した。
後ろから男の声と足音が聞こえる。
文也のことは気になったが、とても後ろに振り返る余裕はなかった。
こんな場所に人がいたこと自体にも信じられないことなのに、あんな奇行なことをする奴だ。
捕まれば何をされるかわからない。
これなら幽霊の方がまだマシだった。
あれこれ考えているうちに、柵にたどり着いた俺は、急いでよじ登った。
勢いよく飛び降りた俺を見て、春則はキョトンとしていた。
俺は事情を説明し、早く逃げるよう促す。
しかし文也の行方を聞かれて、俺はハッとした。
しまった、置いてきてしまった。
引き返そうか迷っていると、文也が柵をよじ登ってくる姿が見えた。
「文也、早く!」
文也は焦っているのか、なかなか柵を登れない。
その間にも、足音が近づいてくる。
しかも柵の外からも聞こえてきた。
まさか、仲間がいるのか?
さらに気持ちが焦ってくる。
俺がたじろいでいると、春則が柵に登った。
一体、何をするつもりだ?
「おい、翔馬。ちょっと肩貸せ。」
俺が柵の前まで行くと、春則は俺を踏み台にした。
「さっさと掴まれ。」
春則は腕を伸ばして、文也を引き上げた。
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