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弟
呆気ない幕切れとともに
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その時だった。
「その手を離せよ、この外道……。」
聞き覚えのあるその声により、僕を拘束していた手は解かれた。
ようやく身動きが取れるようになった僕が振り返ると、そこにはガタガタと震えている中年の男と、その腕を強く掴み、険しい表情を浮かべた純がいた。
「……次のホームで降りる。もし従わなくとも、証拠の映像は押さえている。だから、観念するんだな。」
高校生とは思えない威圧感に、中年の男は青い顔のまま、ガックリと肩を落とした。
その後、ホームを降りた僕たちは、駅員に事情を説明した。
そして程なく駆けつけた警察官によって、中年の男は連行され、僕たちも事情聴取のため、警察署へと連れて行かれた。
そのため長時間の拘束を覚悟していたが、物的証拠があったためか、思っていたよりも早く解放された。
警察署を出たところで、純が声をかけてきた。
「大丈夫……じゃないよな、海斗。」
純は先程とは打って変わって、優しい声で気にかけてきた。
「そう…だけど……嬉しかった。………ありがとう。」
秋山純──。
僕の唯一の友達であり、信頼も置いている存在だ。
「いや、俺は…何も……。」
純は少し、言葉を詰まらせた。
「……この事は、2人の秘密にしよう。海斗の兄貴にも、幼馴染にも、この事は告げない。だから──。」
「まっ…待ってくれ!」
僕の口調の変化に、純は驚いたような表情をした。
「その……海斗には、言わないでほしい。」
純は目を白黒させながら、僕を凝視した。
「まさか、陸斗さん?」
そう、今の僕は、兄さん。
そうだと思わせないと……。
僕はそう装うため、目線を落としながら頷いた。
「実は、今まで海斗を守るために、海斗に成り代わっていたんだ。でも、俺が痴漢に遭っていることは、海斗は知らない。だから、海斗、それに遥華には、絶対に言わないでほしいんだ。」
今一度、純を見つめると、彼は力強く頷いた。
「分かった。この事は絶対に話さない。だから、俺たちもこの事については、もう触れないことにしよう。」
「……ああ、そうだな。」
その言葉を最後に、僕たちは黙り込み、振り返ることもなく家路へと向かった。
「その手を離せよ、この外道……。」
聞き覚えのあるその声により、僕を拘束していた手は解かれた。
ようやく身動きが取れるようになった僕が振り返ると、そこにはガタガタと震えている中年の男と、その腕を強く掴み、険しい表情を浮かべた純がいた。
「……次のホームで降りる。もし従わなくとも、証拠の映像は押さえている。だから、観念するんだな。」
高校生とは思えない威圧感に、中年の男は青い顔のまま、ガックリと肩を落とした。
その後、ホームを降りた僕たちは、駅員に事情を説明した。
そして程なく駆けつけた警察官によって、中年の男は連行され、僕たちも事情聴取のため、警察署へと連れて行かれた。
そのため長時間の拘束を覚悟していたが、物的証拠があったためか、思っていたよりも早く解放された。
警察署を出たところで、純が声をかけてきた。
「大丈夫……じゃないよな、海斗。」
純は先程とは打って変わって、優しい声で気にかけてきた。
「そう…だけど……嬉しかった。………ありがとう。」
秋山純──。
僕の唯一の友達であり、信頼も置いている存在だ。
「いや、俺は…何も……。」
純は少し、言葉を詰まらせた。
「……この事は、2人の秘密にしよう。海斗の兄貴にも、幼馴染にも、この事は告げない。だから──。」
「まっ…待ってくれ!」
僕の口調の変化に、純は驚いたような表情をした。
「その……海斗には、言わないでほしい。」
純は目を白黒させながら、僕を凝視した。
「まさか、陸斗さん?」
そう、今の僕は、兄さん。
そうだと思わせないと……。
僕はそう装うため、目線を落としながら頷いた。
「実は、今まで海斗を守るために、海斗に成り代わっていたんだ。でも、俺が痴漢に遭っていることは、海斗は知らない。だから、海斗、それに遥華には、絶対に言わないでほしいんだ。」
今一度、純を見つめると、彼は力強く頷いた。
「分かった。この事は絶対に話さない。だから、俺たちもこの事については、もう触れないことにしよう。」
「……ああ、そうだな。」
その言葉を最後に、僕たちは黙り込み、振り返ることもなく家路へと向かった。
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