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双子の過去 真相編
僕の目線の先には──
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その日以降、僕と伊佐川美由は、2人で何度かデートをした。
喫茶店や映画館など、ありきたりな場所ばかりだったが、それなりでも伊佐川美由は笑顔を見せていた。
そんなある日、伊佐川美由が、僕を自宅へと誘ってきた。
なんでも今日は、両親が留守にしているのだとか。
僕はというと、流石に2人きりは良くないと思い、初めは誘いを断った。
それでも結局、伊佐川美由に押し切られる形で、僕は彼女の家へとやって来たのだった。
「どうぞ。そこに座って。今、飲み物を持ってくるから。」
リビングに通された僕がソファに座っていると、キッチンから伊佐川美由が、2人分のオレンジジュースを持って現れた。
僕はとりあえず、手渡されたジュースを一口飲んだ。
「どうしたの?緊張してる?」
僕がほとんど喋らずにいたため、伊佐川美由に見透かされてしまい、僕は気まずくなって、下を向いた。
自分で思うのもあれだが、緊張するのも無理のない事だ。
今まで、意図的とはいえ、兄さんと遥華以外の人とは、あまり話した事がなかったんだ。
ましてや女子なんて無縁だった僕は、どう話せばいいか分からなかった。
それでも今までのデートは、公共の場ということもあり、何とかこなせていたのだが、今は状況が違った。
2人きりになれば、こうなる事は想定できたはずなのにと、僕は今更ながら後悔していた。
「ねえ、海斗くん。」
伊佐川美由は、僕に話しかけながら、すぐ隣に座ってきた。
それでも僕が黙り込んでいると──。
「………海斗くん、こっちを見て。」
その口調は、いつもよりも少し強く感じ、僕はゆっくりと顔を向けた。
そこには、笑顔を見せつつも、真剣な眼差しを向ける伊佐川美由がいた。
「ど…どうしたの?」
僕がそう尋ねると、伊佐川美由は一度呼吸を整えてから口を開いた。
「………キスして。」
「ええっ…!…………キス?」
僕の声は、思わず裏返ってしまった。
あの清楚そうだった伊佐川美由がそんな事を言うとは想像だにしていなかったからだ。
とはいえ、仮にも恋人同士なのだから、キスをせがまれるのは当たり前といえば当たり前かもしれない。
それでも、好きでもない人とキスをするなんて、いくら自分を偽り続けた僕でも難しい事だった。
「……もしかして、嫌なの?」
「──ッ⁉︎」
その言葉を聞いた瞬間、僕は咄嗟に伊佐川美由を抱きしめて、唇を重ねた。
嘘をついているのを、伊佐川美由にバレたくなかったのか。
それとも、兄さんへの想いを消し去るためにそうしたのか。
今でもどうしてそんな事をしたのかは、僕自身にもはっきりと分からない。
ただ、その時僕は、こう思ったことは覚えている。
今、キスしている相手が、伊佐川美由ではなく、兄さんだったら良かったのにと──。
「………兄さん。」
僕は唇を重ね終えると、無意識にそう口に出してしまい、慌てて口を押さえた。
だけど既に手遅れであり、伊佐川美由が真顔で見つめていた。
そして──。
「…………やっぱり、そうだったのね。」
「えっ……何が?」
伊佐川美由の目は、全てを見透かしたようであり、僕を動揺させるには十分だった。
「海斗くん、あなた、陸斗くんの事が好きなんでしょ?兄弟としてじゃなく、1人の男として……。」
「なっ…何を……言って………っ!!」
どうして彼女が、その事を知っているのか分からず、僕は思わず大声を上げた。
「分かるわよ。だってあの時ずっと、陸斗くんを見ていたでしょ………私のように。」
『私のように』のとは、どういう事だろう?
まさか、僕のように、兄さんの事が──。
「………好きって事、だよね。だったら、どうして僕と付き合うことにしたの?それも、僕と一緒の理由?」
僕がそう言えば、伊佐川美由はゆっくり頷いた。
「そう、私、本当は陸斗くんが好きだった。……だけど、彼には、七瀬さんがいたから──。」
七瀬遥華──。
それは、僕の中で、最も気に食わない存在だった。
そしてそれは、伊佐川美由にとっても同じ事だったのだろう。
彼女の目には、諦めが浮かんでいた。
「僕もさ、兄さんの事は諦めようと思って………だけど、無理だった。」
いくら誤魔化そうとしても、忘れようとしても、兄さんへの想いは増すばかりだった。
次第には、伊佐川美由と兄さんを重ねてしまい、僕は罪悪感に駆られていた。
けれども今、互いの事実を知った今となっては、もう僕は伊佐川美由に気を病むことはなかった。
「……だから、もうこんな偽りの関係は止めよう。」
「ええ、そうね。それじゃあ、これからは、私たち………ライバルね。」
その時抱いた感情は、嫌悪と憎悪だった。
兄さんと僕の仲を邪魔しようとする奴なんて、どうにかなってしまえと思った。
喫茶店や映画館など、ありきたりな場所ばかりだったが、それなりでも伊佐川美由は笑顔を見せていた。
そんなある日、伊佐川美由が、僕を自宅へと誘ってきた。
なんでも今日は、両親が留守にしているのだとか。
僕はというと、流石に2人きりは良くないと思い、初めは誘いを断った。
それでも結局、伊佐川美由に押し切られる形で、僕は彼女の家へとやって来たのだった。
「どうぞ。そこに座って。今、飲み物を持ってくるから。」
リビングに通された僕がソファに座っていると、キッチンから伊佐川美由が、2人分のオレンジジュースを持って現れた。
僕はとりあえず、手渡されたジュースを一口飲んだ。
「どうしたの?緊張してる?」
僕がほとんど喋らずにいたため、伊佐川美由に見透かされてしまい、僕は気まずくなって、下を向いた。
自分で思うのもあれだが、緊張するのも無理のない事だ。
今まで、意図的とはいえ、兄さんと遥華以外の人とは、あまり話した事がなかったんだ。
ましてや女子なんて無縁だった僕は、どう話せばいいか分からなかった。
それでも今までのデートは、公共の場ということもあり、何とかこなせていたのだが、今は状況が違った。
2人きりになれば、こうなる事は想定できたはずなのにと、僕は今更ながら後悔していた。
「ねえ、海斗くん。」
伊佐川美由は、僕に話しかけながら、すぐ隣に座ってきた。
それでも僕が黙り込んでいると──。
「………海斗くん、こっちを見て。」
その口調は、いつもよりも少し強く感じ、僕はゆっくりと顔を向けた。
そこには、笑顔を見せつつも、真剣な眼差しを向ける伊佐川美由がいた。
「ど…どうしたの?」
僕がそう尋ねると、伊佐川美由は一度呼吸を整えてから口を開いた。
「………キスして。」
「ええっ…!…………キス?」
僕の声は、思わず裏返ってしまった。
あの清楚そうだった伊佐川美由がそんな事を言うとは想像だにしていなかったからだ。
とはいえ、仮にも恋人同士なのだから、キスをせがまれるのは当たり前といえば当たり前かもしれない。
それでも、好きでもない人とキスをするなんて、いくら自分を偽り続けた僕でも難しい事だった。
「……もしかして、嫌なの?」
「──ッ⁉︎」
その言葉を聞いた瞬間、僕は咄嗟に伊佐川美由を抱きしめて、唇を重ねた。
嘘をついているのを、伊佐川美由にバレたくなかったのか。
それとも、兄さんへの想いを消し去るためにそうしたのか。
今でもどうしてそんな事をしたのかは、僕自身にもはっきりと分からない。
ただ、その時僕は、こう思ったことは覚えている。
今、キスしている相手が、伊佐川美由ではなく、兄さんだったら良かったのにと──。
「………兄さん。」
僕は唇を重ね終えると、無意識にそう口に出してしまい、慌てて口を押さえた。
だけど既に手遅れであり、伊佐川美由が真顔で見つめていた。
そして──。
「…………やっぱり、そうだったのね。」
「えっ……何が?」
伊佐川美由の目は、全てを見透かしたようであり、僕を動揺させるには十分だった。
「海斗くん、あなた、陸斗くんの事が好きなんでしょ?兄弟としてじゃなく、1人の男として……。」
「なっ…何を……言って………っ!!」
どうして彼女が、その事を知っているのか分からず、僕は思わず大声を上げた。
「分かるわよ。だってあの時ずっと、陸斗くんを見ていたでしょ………私のように。」
『私のように』のとは、どういう事だろう?
まさか、僕のように、兄さんの事が──。
「………好きって事、だよね。だったら、どうして僕と付き合うことにしたの?それも、僕と一緒の理由?」
僕がそう言えば、伊佐川美由はゆっくり頷いた。
「そう、私、本当は陸斗くんが好きだった。……だけど、彼には、七瀬さんがいたから──。」
七瀬遥華──。
それは、僕の中で、最も気に食わない存在だった。
そしてそれは、伊佐川美由にとっても同じ事だったのだろう。
彼女の目には、諦めが浮かんでいた。
「僕もさ、兄さんの事は諦めようと思って………だけど、無理だった。」
いくら誤魔化そうとしても、忘れようとしても、兄さんへの想いは増すばかりだった。
次第には、伊佐川美由と兄さんを重ねてしまい、僕は罪悪感に駆られていた。
けれども今、互いの事実を知った今となっては、もう僕は伊佐川美由に気を病むことはなかった。
「……だから、もうこんな偽りの関係は止めよう。」
「ええ、そうね。それじゃあ、これからは、私たち………ライバルね。」
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