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ヒロイセカイ

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昼下がりの公園。
 ベンチには色褪せた帽子に染みの付いた作業服をきた老人が座っている。

 絡まれたら嫌だなと思いつつも公園に一つしかないベンチに座る。

 老人が話しかけてきた。
「こんな昼間から公園に来るなんて暇なのかい?」

 僕は適当に話を合わせることにした。
「最近仕事を失ってしまって。家にいてもやることがないから公園にきたんですよ」

「そうか」

 沈黙が続く。

 沈黙に耐えられなくなった僕は自分が口を開いた。
「未来は家で寝てるだけで買い物も食事もできて映画も見られたりするようになったらいいのになー」

 しばらく黙っていた老人は話し始めた。

「そうだな。未来はきっと、なんでも簡単に手に入ったり自由に好きな時にどこにでも行けるようになるな。ただ人間は2つの種類に分けられるんだよ。何かを生み出すやつとそれを作るために使われるやつ」

「今と変わんないっすね。会社とビジネスマン的な?」

「そんなもんじゃねー。頭で新しいことを創造できるか否かって話だよ」

「う~ん。よくわからないな」

「まぁ、まだまだ未来(さき)の話しだ」

 公園の中にスーツの女性が入ってきた。彼女はランチだろうか。
 老人は話を続けた。
「若い頃に知恵があってもな、老いるとできなくなるやつもいるもんだ。そういう奴は過去に……」

 さっきの女性が老人に近づいて話かけた。

「おじいちゃん、何してたんですか?勝手に出歩かれたら困りますよ。さ、みんなのところに戻りましょう」

 おぉ、と女性に促されて老人は立ち上がった。

「いいか、未来を変えられるなんて思うなよ。人は辛いと思った過去を笑えるようになることが大事なんだ」

 そう言って老人は女性に促されて歩いて行った。

 その先にはいつのまにか旅行ツアーで来た外国人の団体がいた。
 老人もあの中の一人だったのかな。

 先程の女性がまたこちらに向かってきた。
「先程はおじいちゃんがご迷惑おかけしました。何かお話しされましたか」

「いえいえ、未来の話を少し」

「未来の……。そうですか。お話しいただいてありがとうございます」

「あの、皆さんで日本に旅行ですか?」

「そうです。今の日本にね」

「皆さんどちらからいらっしゃたんですか」

「みんなバラバラなんです。それぞれの国からいらっしゃってます」

「さっきのおじいさんは日本の方ですよね」

「あのおじいさんは日本人ですけど他の方と同じように遠くから来られてるんですよ。あ、もう行かないと。それでは、さようなら」

「またどこかで会えたりしますかね」

「そうですね、もしかしたらいつかお話しできるかもしれないですね」

 では、と会釈して女性は去って行った。
 残された僕はその後もしばらくベンチに座ってぼんやりしていた。

 おじいさんの言ってた未来の話はちょっと不思議な感じだったけど、とりあえずなんかやってみるか。

 僕は立ち上がって公園の外に歩いて行った。
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