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第四章 風の連理編
30.扉の通り方
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赤い光に包まれたシキは、夢でも見ているような不思議な感覚を覚えていた。
呆然と広がる光の中から、一筋の光景が浮かび上がる。そしてその先へと、意識が引っ張られていく。
シキ達の前に現れたのは、どこかの洞窟内にある巨大な建物の一面ようであった。
「ここは……?」
「ここは赤の国グラナート領にある、ヴァーミリオンの研究所。と言ってもグラナートのどこにあるのかは、わたしも知らない」
シキが思わず呟くと、隣から飴を転がしたような甘い少女の声が聞こえて来た。
振り向くとそこへ広がる光が引き、いつの間にかアイヴィの姿が浮かんでいた。
隣に現れたアイヴィは目の前の光景について説明する。しかしその様子は、目的地に辿り着いた喜びではなく、今まで辿り着けなかった困惑が勝っていた。
「でもどうして。さっきまでコアを使っても転移出来なかったのに」
「私達もここへ来ようとして出来なかった。移動の条件はなんだったのだ?」
「コアに触れてグラナートを思い浮かべると、そこへ繋がる径路への扉が開くって……あ」
「どうした?」
アイヴィはグラナートから教えられた条件をシキに伝える。その途中、今までどうやって転移していたかを思い出し、同時に扉を通る条件について気づく。
「扉を通るには、鍵と径路、二つの記憶が必要だったんだ」
「二つの記憶……? 私とお前のか?」
「そう。わたしは径路の記憶を持っているけど、黄のコアが鍵としての記憶を持っていなかった。逆にシキくんは鍵としての記憶を持つ赤のコアを持っていたけど、径路に関する記憶をシキくんが持っていなかった。だからわたし達が揃った事で、扉が開いたの」
「なるほど。だがそれで言うなら、もう一つ加えて三つ必要だな」
「もう一つ?」
足場すらない謎の空間に浮くアイヴィは、身体ごと周りシキの方へと振り向く。
アイヴィの予想では径路の記憶を持つ自身と、鍵の記憶を持つ赤いコアの所有者シキ。二人が揃った事により扉を通る条件は満たされたのだと思っていた。その証拠に、今この場にいるのはアイヴィとシキの二人だけであったからだ。だがシキはそれとは別に、条件はさらにもう一つがあると言い出した。
「扉の記憶だ。そもそもとして扉があると知らないと、転移の魔術など使えないだろう」
「なーにそれ、どの魔術だって知らないと使えないのは同じじゃない」
「そうだ。だがその常識を知らなかった私は、コアを手に入れるまで、いやコアを手に入れエーテルを使えるようになってからも、まともに魔術を扱う事が出来なかった」
「……それで?」
「扉があるという常識を知り、径路が広がっている空間を捉え、鍵の存在という条件を得る。この三つの相乗効果により、転移の魔術ははじめて使用可能となる。……ような気がする」
「気がするって、確信があったんじゃないの?」
「確信はあるのだが、どうして確信出来るのかが分からない。だから気がする、なのだ」
シキの中でも、どうしてこの理論が浮かんだのか分からない。どこかで聞いた事がある気もするし、元々知っていたような感覚もある。それこそ、身体へ取り込んだコアのどれかから記憶となるエーテルを供給されたのかも知れない。だからこれ以上は、否定も肯定もする事が出来ないでいた。
結局あやふやなまま結論づいてしまった話題に対し、アイヴィはひとまず扉を通れたという現実だけを受け入れる。そして、目の前に浮かび上がる光景が何を意味しているのか。扉を抜けると何が待ち構えているのか。アイヴィは改めて、シキに問いただす。
「……この先に向かえばヴァーミリオンが待っている。グラナートや彼の実験体だけじゃない。集められた生き物や魔物、人質を取られた者や洗脳を受けて操られている者といった、文字通り彼の所有する全てがね」
「分かっているさ」
「分かってないよ。こんな異常がずっと続いているのに、誰も止めないし止められていない。それが答えなの。ここから先はただの人助けじゃない。グラナートという大陸最大の国家を敵に回す事になるのよ」
アイヴィの言葉は至極当然であった。挨拶もせず別れた相手とは二度と会えない。人が消えるのは言い伝えだからと捉えられ、この世界では諦めるものだ。そんな常識がまかり通っているのは、皆どこかで気づいていたからなのだろう。諦めなければ、次は自分に何かあるかもしれないのだから。
もしそんな事をしていて断罪されず、もみ消す事が出来る存在と言えば、この世界で一番の力を持つ赤の国グラナートくらいだ。そんな相手に歯向かう事は、自ら死にに行くようなものではないか。
そのような馬鹿げた事をしでかす奴などいないのが当然か、いたとしても消されている。それを分かった上で、彼は、彼女は。
「でもお前は、やるのだろう?」
「えっ」
「守るものがあって、救う人達が居て、敵わないから諦めるなど、もうしたくないのだろう? だったら私もやってやる」
「…………ふふっ、聞いてたの? 最悪ね。でもそれは私の願望であって、君の願望とは違うでしょ」
「では私の願望が何か、お前は知っているのか?」
その者に触発されてしまった悪者は、その者を止めようと悪意の刃を振り回す。だが振り回した悪意を倒したのは、他でもないその者であった。
何とか説得をするアイヴィに対し、シキはその方法では意味がないと敢えて自ら伝える。お前の為ではなく、自分のためにやっているのだと。
シキに問われたアイヴィは、彼との出会いを思い出し、彼の置かれている状況を今一度理解する。
そして彼がずっと求めている者と言えば、答えなど聞かずとも分かっているはずではないか。
「そんなの……記憶を取り戻したい。じゃないの」
「ああ、それも願望の一つだ。そのために記憶の眠るコアを集めなければならない。だからこそコアを所有し、仲間のコアまでも奪ったヴァーミリオンとは決着をつける必要がある」
「そんなの、後回しでも構わないじゃない。コアは世界中にいっぱいあるんだから、今すぐ目先の危険に挑まなくたって、全て終わった後でもいいじゃない」
アイヴィもアイヴィで聞き訳が悪い。結局は彼を危険な目にあわせたくないから、何とか言い聞かせようと別の手段を必死に考える。それがシキの術中にはまり、自ら墓穴を掘っているとは知らずに。
「ふむ。ではもう一つ、仲間と合流する必要もあるな。私のすぐ側にはネオンとエリーゼが居た。その少し先にはレンリとオームギも居た。彼女らは扉に関する記憶を持っていたから、一緒に転移しているかもしれん。であれば扉を通り抜け、確認しなければならないだろう」
「まさか、そのために三つの記憶とか言い出したの? だったら着いたらすぐ確認してナルギットへ戻れば問題ないでしょう」
「二つの記憶が必要と言い出したのはアイヴィ、お前ではないか。ならばお前も一緒に戻ってもらうが、問題はないな?」
「……ッ。それって、どちらにせよわたし達は同じ場所に居ないといけないじゃない」
「そういう事だ、諦めろ。いや、共に諦めるなと言った方が正しいのか」
行くにせよ引くにせよ、シキとアイヴィは一心同体。扉をくぐるには二人揃っていないと意味がないと、アイヴィは説き伏せられる。それと同時に、彼がどこまでも真っ直ぐで、ウザったいほどに自分の事を心配しているのだと、アイヴィは感じ取ってしまう。
それがおかしくて、腹ただしくて、どこか心地良い。悪くないかもしれないなんて思わせる、彼は真っ直ぐな卑怯者だ。
「んふっ、ふふふ……っ」
「……? 何がおかしい?」
「別にぃ? わたし、笑うのが癖なの」
「そうか。そういえば良く笑っているな」
「んふっ、そうでしょ?」
笑顔は力の源だ。辛くても苦しくても、笑顔で居れば不思議と錯覚する。だから彼女はいつも笑い、いつまでも笑い続ける。忘却の通り魔として、アイヴィという一人の少女として。
「……ちゃんと諦めないから、約束して。無茶はしないし無理もしない。お互い最低限の目的だけ果たして、生きて帰る事。間違ってもグラナートに喧嘩なんか売らないでよね」
「分かっているさ」
「信じっちゃうんだから、裏切らないでよ。……それじゃあシキくん、行くよ!!」
「ああ……ッ!!」
二人は赤い光の空間から扉を通り抜け、共に敵の拠点で笑いあうのであった。
風の連理編 終わり。
呆然と広がる光の中から、一筋の光景が浮かび上がる。そしてその先へと、意識が引っ張られていく。
シキ達の前に現れたのは、どこかの洞窟内にある巨大な建物の一面ようであった。
「ここは……?」
「ここは赤の国グラナート領にある、ヴァーミリオンの研究所。と言ってもグラナートのどこにあるのかは、わたしも知らない」
シキが思わず呟くと、隣から飴を転がしたような甘い少女の声が聞こえて来た。
振り向くとそこへ広がる光が引き、いつの間にかアイヴィの姿が浮かんでいた。
隣に現れたアイヴィは目の前の光景について説明する。しかしその様子は、目的地に辿り着いた喜びではなく、今まで辿り着けなかった困惑が勝っていた。
「でもどうして。さっきまでコアを使っても転移出来なかったのに」
「私達もここへ来ようとして出来なかった。移動の条件はなんだったのだ?」
「コアに触れてグラナートを思い浮かべると、そこへ繋がる径路への扉が開くって……あ」
「どうした?」
アイヴィはグラナートから教えられた条件をシキに伝える。その途中、今までどうやって転移していたかを思い出し、同時に扉を通る条件について気づく。
「扉を通るには、鍵と径路、二つの記憶が必要だったんだ」
「二つの記憶……? 私とお前のか?」
「そう。わたしは径路の記憶を持っているけど、黄のコアが鍵としての記憶を持っていなかった。逆にシキくんは鍵としての記憶を持つ赤のコアを持っていたけど、径路に関する記憶をシキくんが持っていなかった。だからわたし達が揃った事で、扉が開いたの」
「なるほど。だがそれで言うなら、もう一つ加えて三つ必要だな」
「もう一つ?」
足場すらない謎の空間に浮くアイヴィは、身体ごと周りシキの方へと振り向く。
アイヴィの予想では径路の記憶を持つ自身と、鍵の記憶を持つ赤いコアの所有者シキ。二人が揃った事により扉を通る条件は満たされたのだと思っていた。その証拠に、今この場にいるのはアイヴィとシキの二人だけであったからだ。だがシキはそれとは別に、条件はさらにもう一つがあると言い出した。
「扉の記憶だ。そもそもとして扉があると知らないと、転移の魔術など使えないだろう」
「なーにそれ、どの魔術だって知らないと使えないのは同じじゃない」
「そうだ。だがその常識を知らなかった私は、コアを手に入れるまで、いやコアを手に入れエーテルを使えるようになってからも、まともに魔術を扱う事が出来なかった」
「……それで?」
「扉があるという常識を知り、径路が広がっている空間を捉え、鍵の存在という条件を得る。この三つの相乗効果により、転移の魔術ははじめて使用可能となる。……ような気がする」
「気がするって、確信があったんじゃないの?」
「確信はあるのだが、どうして確信出来るのかが分からない。だから気がする、なのだ」
シキの中でも、どうしてこの理論が浮かんだのか分からない。どこかで聞いた事がある気もするし、元々知っていたような感覚もある。それこそ、身体へ取り込んだコアのどれかから記憶となるエーテルを供給されたのかも知れない。だからこれ以上は、否定も肯定もする事が出来ないでいた。
結局あやふやなまま結論づいてしまった話題に対し、アイヴィはひとまず扉を通れたという現実だけを受け入れる。そして、目の前に浮かび上がる光景が何を意味しているのか。扉を抜けると何が待ち構えているのか。アイヴィは改めて、シキに問いただす。
「……この先に向かえばヴァーミリオンが待っている。グラナートや彼の実験体だけじゃない。集められた生き物や魔物、人質を取られた者や洗脳を受けて操られている者といった、文字通り彼の所有する全てがね」
「分かっているさ」
「分かってないよ。こんな異常がずっと続いているのに、誰も止めないし止められていない。それが答えなの。ここから先はただの人助けじゃない。グラナートという大陸最大の国家を敵に回す事になるのよ」
アイヴィの言葉は至極当然であった。挨拶もせず別れた相手とは二度と会えない。人が消えるのは言い伝えだからと捉えられ、この世界では諦めるものだ。そんな常識がまかり通っているのは、皆どこかで気づいていたからなのだろう。諦めなければ、次は自分に何かあるかもしれないのだから。
もしそんな事をしていて断罪されず、もみ消す事が出来る存在と言えば、この世界で一番の力を持つ赤の国グラナートくらいだ。そんな相手に歯向かう事は、自ら死にに行くようなものではないか。
そのような馬鹿げた事をしでかす奴などいないのが当然か、いたとしても消されている。それを分かった上で、彼は、彼女は。
「でもお前は、やるのだろう?」
「えっ」
「守るものがあって、救う人達が居て、敵わないから諦めるなど、もうしたくないのだろう? だったら私もやってやる」
「…………ふふっ、聞いてたの? 最悪ね。でもそれは私の願望であって、君の願望とは違うでしょ」
「では私の願望が何か、お前は知っているのか?」
その者に触発されてしまった悪者は、その者を止めようと悪意の刃を振り回す。だが振り回した悪意を倒したのは、他でもないその者であった。
何とか説得をするアイヴィに対し、シキはその方法では意味がないと敢えて自ら伝える。お前の為ではなく、自分のためにやっているのだと。
シキに問われたアイヴィは、彼との出会いを思い出し、彼の置かれている状況を今一度理解する。
そして彼がずっと求めている者と言えば、答えなど聞かずとも分かっているはずではないか。
「そんなの……記憶を取り戻したい。じゃないの」
「ああ、それも願望の一つだ。そのために記憶の眠るコアを集めなければならない。だからこそコアを所有し、仲間のコアまでも奪ったヴァーミリオンとは決着をつける必要がある」
「そんなの、後回しでも構わないじゃない。コアは世界中にいっぱいあるんだから、今すぐ目先の危険に挑まなくたって、全て終わった後でもいいじゃない」
アイヴィもアイヴィで聞き訳が悪い。結局は彼を危険な目にあわせたくないから、何とか言い聞かせようと別の手段を必死に考える。それがシキの術中にはまり、自ら墓穴を掘っているとは知らずに。
「ふむ。ではもう一つ、仲間と合流する必要もあるな。私のすぐ側にはネオンとエリーゼが居た。その少し先にはレンリとオームギも居た。彼女らは扉に関する記憶を持っていたから、一緒に転移しているかもしれん。であれば扉を通り抜け、確認しなければならないだろう」
「まさか、そのために三つの記憶とか言い出したの? だったら着いたらすぐ確認してナルギットへ戻れば問題ないでしょう」
「二つの記憶が必要と言い出したのはアイヴィ、お前ではないか。ならばお前も一緒に戻ってもらうが、問題はないな?」
「……ッ。それって、どちらにせよわたし達は同じ場所に居ないといけないじゃない」
「そういう事だ、諦めろ。いや、共に諦めるなと言った方が正しいのか」
行くにせよ引くにせよ、シキとアイヴィは一心同体。扉をくぐるには二人揃っていないと意味がないと、アイヴィは説き伏せられる。それと同時に、彼がどこまでも真っ直ぐで、ウザったいほどに自分の事を心配しているのだと、アイヴィは感じ取ってしまう。
それがおかしくて、腹ただしくて、どこか心地良い。悪くないかもしれないなんて思わせる、彼は真っ直ぐな卑怯者だ。
「んふっ、ふふふ……っ」
「……? 何がおかしい?」
「別にぃ? わたし、笑うのが癖なの」
「そうか。そういえば良く笑っているな」
「んふっ、そうでしょ?」
笑顔は力の源だ。辛くても苦しくても、笑顔で居れば不思議と錯覚する。だから彼女はいつも笑い、いつまでも笑い続ける。忘却の通り魔として、アイヴィという一人の少女として。
「……ちゃんと諦めないから、約束して。無茶はしないし無理もしない。お互い最低限の目的だけ果たして、生きて帰る事。間違ってもグラナートに喧嘩なんか売らないでよね」
「分かっているさ」
「信じっちゃうんだから、裏切らないでよ。……それじゃあシキくん、行くよ!!」
「ああ……ッ!!」
二人は赤い光の空間から扉を通り抜け、共に敵の拠点で笑いあうのであった。
風の連理編 終わり。
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