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第四章 風の連理編
07.何でも屋は何でも扱っている
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エリーゼは仲間達と別れた後、一人知り合いの店を訪ねていた。
「すみませーん、誰かいらっしゃいませんかー?」
「はいはいはい、今行きますよ~っと」
人影の見えない店内に声を響かせると、どこからともなく男の声が帰って来る。
渋い声色に反してひょうひょうとした口調の男は、階段を軋ませながら二階から姿を現す。
「おや、君は確か……」
「お世話になっております。エランダの孫のエリーゼです。お久しぶりです、シャルトルーズさん」
少し疲れを感じる表情をした、金髪を後ろで一つに絞った男。
エリーゼの前に現れた彼こそが、この店の店主シャルトルーズである。
「久しぶりだね。君と会うのは何年振りだったかな? まぁいいや。それより珍しいね、君がウチを訪ねて来るなんて。今日は一人かい? さっきまで連れがいたようだけど」
「ええ。ちょっと事情があるようで、外でお待ちして頂いております」
「事情ねぇ。で、今回はどういったご用件かな? 欲しい物があれば何でも用意するよ?」
「ああいえ、今回は交通の都合でしばらく取引が中断していた件についてお伝えしたく。無事問題は解消されましたので、滞っていたあれこれをまた手配して頂ければと」
「おっ、そうかいそうかい。確か賊が現れるようになったとか、法外な関門が敷かれたとかだったかな? それじゃあまた、荷馬車を出すよう伝えておくよ」
一見さんお断りな店主のシャルトルーズは手慣れた様子で書類の数々を引っ張り出し、エリーゼと滞っていた取引の話を進める。手早く要件を済ませたエリーゼは軽く挨拶を済ませて外に出ようとするが、せっかく現れた客を逃がさまいとシャルトルーズも話を続ける。
「それで、エリーゼちゃんはどうしてナルギットへ来たんだい? まさか、ただ僕と話すためだけじゃないだろう?」
「実は私、今は実家を離れて旅をしておりまして。その途中でこちらへ寄ったので、シャルトルーズさんへ話を伝えに来ました」
「へぇ、こりゃまた驚いた。でもそれじゃあエランダさんは悲しむんじゃないかい? 確か君の家族は……おっと」
「いえ、元気な従業員さんが沢山入りましたので、実家は前以上に活気に溢れていますよ。きっと祖母も商売に力が入っているはずです」
「そりゃあ良かった。悪かったね気が利かなくて。じゃあエリーゼちゃんは、家族を探すために旅をしているんだね?」
「はい。何年待っても帰って来ないので、私から探しに行く事にしました。あっそうです、シャルトルーズさん! 行方不明者について、何か情報が入っていたりはしませんか……?」
シャルトルーズが主に取り扱うのは、魔道具やエーテル結晶を始めとした価値や希少性のある物である。だが彼は価値があると感じた物については、何であろうとその人脈を使ってかき集める。その一つが、情報だ。
挨拶もせず別れた者とは、二度と会えないと噂される所以となった現象。この世界で時折り現れる、行方不明者の存在。その一端をシャルトルーズは集めていた。
「本来ならいくらかお代は頂くんだけど、エランダさんにはお世話になっているからね。僕が知っている限りの事は伝えよう。でもあまり期待はしないでね」
「いえいえそんな、教えて頂けるだけでもありがたいです……!」
帰る足を止め、食い入るようにシャルトルーズの前で情報を待つエリーゼ。大国の一つであるナルギットに拠点を置く何でも屋の店主は、エリーゼのまだ知らぬ世界について口にする。
「すみませーん、誰かいらっしゃいませんかー?」
「はいはいはい、今行きますよ~っと」
人影の見えない店内に声を響かせると、どこからともなく男の声が帰って来る。
渋い声色に反してひょうひょうとした口調の男は、階段を軋ませながら二階から姿を現す。
「おや、君は確か……」
「お世話になっております。エランダの孫のエリーゼです。お久しぶりです、シャルトルーズさん」
少し疲れを感じる表情をした、金髪を後ろで一つに絞った男。
エリーゼの前に現れた彼こそが、この店の店主シャルトルーズである。
「久しぶりだね。君と会うのは何年振りだったかな? まぁいいや。それより珍しいね、君がウチを訪ねて来るなんて。今日は一人かい? さっきまで連れがいたようだけど」
「ええ。ちょっと事情があるようで、外でお待ちして頂いております」
「事情ねぇ。で、今回はどういったご用件かな? 欲しい物があれば何でも用意するよ?」
「ああいえ、今回は交通の都合でしばらく取引が中断していた件についてお伝えしたく。無事問題は解消されましたので、滞っていたあれこれをまた手配して頂ければと」
「おっ、そうかいそうかい。確か賊が現れるようになったとか、法外な関門が敷かれたとかだったかな? それじゃあまた、荷馬車を出すよう伝えておくよ」
一見さんお断りな店主のシャルトルーズは手慣れた様子で書類の数々を引っ張り出し、エリーゼと滞っていた取引の話を進める。手早く要件を済ませたエリーゼは軽く挨拶を済ませて外に出ようとするが、せっかく現れた客を逃がさまいとシャルトルーズも話を続ける。
「それで、エリーゼちゃんはどうしてナルギットへ来たんだい? まさか、ただ僕と話すためだけじゃないだろう?」
「実は私、今は実家を離れて旅をしておりまして。その途中でこちらへ寄ったので、シャルトルーズさんへ話を伝えに来ました」
「へぇ、こりゃまた驚いた。でもそれじゃあエランダさんは悲しむんじゃないかい? 確か君の家族は……おっと」
「いえ、元気な従業員さんが沢山入りましたので、実家は前以上に活気に溢れていますよ。きっと祖母も商売に力が入っているはずです」
「そりゃあ良かった。悪かったね気が利かなくて。じゃあエリーゼちゃんは、家族を探すために旅をしているんだね?」
「はい。何年待っても帰って来ないので、私から探しに行く事にしました。あっそうです、シャルトルーズさん! 行方不明者について、何か情報が入っていたりはしませんか……?」
シャルトルーズが主に取り扱うのは、魔道具やエーテル結晶を始めとした価値や希少性のある物である。だが彼は価値があると感じた物については、何であろうとその人脈を使ってかき集める。その一つが、情報だ。
挨拶もせず別れた者とは、二度と会えないと噂される所以となった現象。この世界で時折り現れる、行方不明者の存在。その一端をシャルトルーズは集めていた。
「本来ならいくらかお代は頂くんだけど、エランダさんにはお世話になっているからね。僕が知っている限りの事は伝えよう。でもあまり期待はしないでね」
「いえいえそんな、教えて頂けるだけでもありがたいです……!」
帰る足を止め、食い入るようにシャルトルーズの前で情報を待つエリーゼ。大国の一つであるナルギットに拠点を置く何でも屋の店主は、エリーゼのまだ知らぬ世界について口にする。
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