【短編】食べる手が止まらないんだ

気づけばふと、手が伸びていた。

軽い気持ちだったのに。一つだけならと思っていたのに。
一度手に取ってしまえばもう、止まらない。

その後の訪れる幸福で頭が満たされ、胸が脈打つ。

そうなったら最後、手を伸ばしてしまう。

止めた方がいいのに。なにも良い事なんて無いのに。
目の前にあると、気づけばもう手に取っている。

そして、飲み込む。

誰にも知られず、誰にも気づかれず。
食べる手が、止まらなくなっていく。

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