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第一章 婚約者からの冷遇
第六話 無事に手続きが終わりますか?1
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京平さんから婚約を破棄された証拠を持って、私は急いで自宅へ帰ったの。そして自宅にいた母にその事実を伝え、父の帰宅を待ったわ。
そういえば、京平さんに告げた書類についてまだお話していなかったわね。
その【書類】とは、婚約について書かれている云わば誓約書というか、〖覚書書〗なの。で当然なのだけれど、そこには”婚約破棄”についても記載されていたのよね。それには
《一柳院側の有責により婚約を破棄または破棄された場合、七菱は一柳院への融資を停止する。また七菱側の有責により婚約が破棄または破棄された場合は、一柳院への融資は継続されるものとし、それは一柳院からの『融資は不要』という申し出がない限り未来永劫続くものとする。》
という、まあ何とも一柳院に有利なものだったの。
まぁそれだけガチガチに固めておけば、京平さんがこの婚約を蔑ろにはしないだろうという思惑が込められていたのだけれども、これは京平さんとの婚約を渋り続けていた私への、母が考えてくれた父への提案事項でもあったの。
でもきっと、母から見てもこの婚約は絶対上手くいかないと思っていたんだと思うの。だからこそ、どちらかと言えば、一柳院側に有利な文言に思わせておいて、実は何かあった時は七菱としては容赦しませんよ?て意味の文を記載した覚書書を作成し、京平さんにサインさせたんだと思うよのね。まぁ彼の事だから何も読まずにしたのでしょうけれども。
当然私もサインしたわ。勿論、しっかり内容を熟読してからですけどね。
父の帰りを、リビングで母と待っている間
「良かったわね、優花。婚約破棄出来て。」
と、母が美味しい紅茶を頂きながらそう話を始めたの。そして
「始めはあれだけ(婚約を)嫌がってたのに、正式に婚約がなされた後は何も言わなくなっちゃったから、諦めたのかと思ってたのよ。でもそうじゃなかったのね」
と
「そうじゃなかった?どういう事ですか?」
「諦めて無かったって事でしょ?」
「あ~そういう事でしたか。というか、諦めるわけないじゃないですか。あんなナルシシストとなんて誰が結婚したいってなるでしょう。でもまあ、珠梨愛さんが婚約式の時に絡んで来た時に、彼女ならきっとやってくれるとは思っていました。一度は私を蔑ろにした事を謝罪してはくれましたが、実際ずっと水面下でお付き合いされていたんだと思います。」
「そうみたいね」
「ええ。でも彼女の事だから、今までどおり絶対やってくれるって思ってましたけど。」
と言って、思わずニヤリとしてしまったの。すると
「あらヤダ。とーっても悪い顔してるわよ優花」
と、母はホホホと笑ってそう言っていたわ。
それから暫くして父が帰宅されると、私は彼の書斎を訪ねたの。
「お父様。優花です」
「優花か。入りなさい」
「ありがとうございます。失礼致します」
と、書斎への入室を許可され部屋に入ると、父は着ていたスーツのジャケットを秘書の緒形さん ┄ 七菱に代々仕えてくれている秘書の家柄で、緒形家の現世帯主。御歳58歳。普段はキリリとした仕事の出来るイケおじ様だけれど、ご自宅に帰り可愛いお孫さん(2歳の女の子)を前にすると、お孫さんに甘々な優しいおじいちゃまになるらしい ┄ に預けているところだったの。
私は父に促され、書斎にあるソファーに腰掛けると、父が社長の顔から父の顔になる時を待っていたの。
「お待たせしたね優花。で、どうかしたのかな?」
と、いつもの優しい笑顔を浮かべた父は、三つ揃いのベストを脱ぎネクタイも外した、ワイシャツとスラックス姿で私の前のソファーに座ったの。
そんなラフな姿の父に、私は敢えてゆっくりと、そして低い声でこう言ったの。
「本日一柳院京平さんから、私との婚約を破棄したいとお申し出がありました。」
そういえば、京平さんに告げた書類についてまだお話していなかったわね。
その【書類】とは、婚約について書かれている云わば誓約書というか、〖覚書書〗なの。で当然なのだけれど、そこには”婚約破棄”についても記載されていたのよね。それには
《一柳院側の有責により婚約を破棄または破棄された場合、七菱は一柳院への融資を停止する。また七菱側の有責により婚約が破棄または破棄された場合は、一柳院への融資は継続されるものとし、それは一柳院からの『融資は不要』という申し出がない限り未来永劫続くものとする。》
という、まあ何とも一柳院に有利なものだったの。
まぁそれだけガチガチに固めておけば、京平さんがこの婚約を蔑ろにはしないだろうという思惑が込められていたのだけれども、これは京平さんとの婚約を渋り続けていた私への、母が考えてくれた父への提案事項でもあったの。
でもきっと、母から見てもこの婚約は絶対上手くいかないと思っていたんだと思うの。だからこそ、どちらかと言えば、一柳院側に有利な文言に思わせておいて、実は何かあった時は七菱としては容赦しませんよ?て意味の文を記載した覚書書を作成し、京平さんにサインさせたんだと思うよのね。まぁ彼の事だから何も読まずにしたのでしょうけれども。
当然私もサインしたわ。勿論、しっかり内容を熟読してからですけどね。
父の帰りを、リビングで母と待っている間
「良かったわね、優花。婚約破棄出来て。」
と、母が美味しい紅茶を頂きながらそう話を始めたの。そして
「始めはあれだけ(婚約を)嫌がってたのに、正式に婚約がなされた後は何も言わなくなっちゃったから、諦めたのかと思ってたのよ。でもそうじゃなかったのね」
と
「そうじゃなかった?どういう事ですか?」
「諦めて無かったって事でしょ?」
「あ~そういう事でしたか。というか、諦めるわけないじゃないですか。あんなナルシシストとなんて誰が結婚したいってなるでしょう。でもまあ、珠梨愛さんが婚約式の時に絡んで来た時に、彼女ならきっとやってくれるとは思っていました。一度は私を蔑ろにした事を謝罪してはくれましたが、実際ずっと水面下でお付き合いされていたんだと思います。」
「そうみたいね」
「ええ。でも彼女の事だから、今までどおり絶対やってくれるって思ってましたけど。」
と言って、思わずニヤリとしてしまったの。すると
「あらヤダ。とーっても悪い顔してるわよ優花」
と、母はホホホと笑ってそう言っていたわ。
それから暫くして父が帰宅されると、私は彼の書斎を訪ねたの。
「お父様。優花です」
「優花か。入りなさい」
「ありがとうございます。失礼致します」
と、書斎への入室を許可され部屋に入ると、父は着ていたスーツのジャケットを秘書の緒形さん ┄ 七菱に代々仕えてくれている秘書の家柄で、緒形家の現世帯主。御歳58歳。普段はキリリとした仕事の出来るイケおじ様だけれど、ご自宅に帰り可愛いお孫さん(2歳の女の子)を前にすると、お孫さんに甘々な優しいおじいちゃまになるらしい ┄ に預けているところだったの。
私は父に促され、書斎にあるソファーに腰掛けると、父が社長の顔から父の顔になる時を待っていたの。
「お待たせしたね優花。で、どうかしたのかな?」
と、いつもの優しい笑顔を浮かべた父は、三つ揃いのベストを脱ぎネクタイも外した、ワイシャツとスラックス姿で私の前のソファーに座ったの。
そんなラフな姿の父に、私は敢えてゆっくりと、そして低い声でこう言ったの。
「本日一柳院京平さんから、私との婚約を破棄したいとお申し出がありました。」
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