海より深い隠れ御曹司の溺愛

Saeko

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第三章 新しい生活

第2話 大好きな事

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静岡こっちに来て、私は本当に心身共に健康になったと思う。
多分それは、毎晩大好きな温泉に浸かれるからという事と、休日にとある事が出来るようになったからじゃないかなと思っている。

私が休日にしている事
それは、大学時代に書いていたBlogを書く事だ。

清風館の仲居達のお休みは、特に希望日が無ければ仲居頭の陽子さんが組んでくれるシフトで決まる。
その陽子さんからは、いつも「もっと休みなさい」「有給休暇を取ってちょうだい。」と言われてるけど、私は仲居の仕事が大好きなのと、SPAで社畜をしていたからか、連休を取ろうとかあまり思わないのだ。
でもそんな事言ったら、また悠兄に怒られるだろうから絶対言わないけれど。

だから陽子さんには
「いつも陽子さんが適度にお休みを入れて下さるから、十分休めてますよ。ありがとうございます。連休を頂きたくなったらちゃんと言いますから。」
と言って誤魔化している。

きっと陽子さんは、私が清風館ここにお客として来た時の、私の悲惨だった様子を仲居として接客していた時に見てくれていたから、今でもまだ心配してくれてるんだと思う。

実は、陽子さんは晃子おばさんの親友だ。当然母とも親友関係にあった事になる。
だからなのか、陽子さんも晃子おばさんも私の事を実の娘の様に心配してくれるんだ。

私の母は、私が小さな頃他界している為、私は母親の温もりというものを覚えてはいない。
勿論、母がいない分、父も祖父母も兄も、家族全員が私をいっぱい愛してくれたから、母がいなくても寂しい思った事はない。が、清風館に来て、晃子おばさんや陽子さんの優しさに触れると、あぁお母さんてこんな感じなのかなぁと思う事がある。

とはいえ、お二人にとても良くして下さってる事は本当に有り難いとは思うけれども、今の私はこの旅館の一従業員だし、晃子おばさんは雇用主で陽子さんは上司だ。
だからちゃんと線引きしないといけないって思ってる。

それにしても、本当に今の私は周りに恵まれていると思う。
勿論SPAにいた頃も、私の事を分かってくれる人達はいてくれたけど、ここ程の事ではなかったと思うから。

そういう存在の人達が身近にいるというだけで、仕事も頑張れると思うんだよね。
だからこそ仕事を頑張ったその後に貰えるお休みは、本当に至福のひとときを与えてくれるんだと思う。

そんな風に考えられる様になったのは、社会人になって社畜同然だった私が、心に余裕が出来たからだろう。

そんな余裕を持たせてくれた清風館にお礼の意味を込め、また、少しでも仕事や勉強を頑張る人達の癒しになればと思って、大学卒業と同時期からずっと開店休業状態だったBlogを再開させたんだ。

私が書いてるBlogのタイトルは【じゅんのぶらり温泉宿】。
その名の通り温泉の事を書いたBlogだ。

Blogには、自らが温泉宿に出向き、温泉に浸かったり、滞在先の料理を食べたりして、思った事を書いたり写真を貼ったりして公開している。
勿論その際は、滞在先の支配人に許可を得ての公開だ。

そしてそのBlogには、バナーを貼って清風館のホームページとリンクもさせてある。

清風館のホームページの管理人は、支配人で晃子おばさん女将の旦那さんの周平さん。
周平さんは、広告代理店にお勤めされていたらしいけど、たまたま清風館ここに社員旅行で来た際おばさんに一目惚れ。
旅行後直ぐに仕事を辞めて、此方に来ると、おばさんに猛アタックをし、晴れて結婚になったそうだ。

そんな経歴のある周平さん支配人だから、ホームページ作成なんてお手のものだろう。
私のBlogとリンクさせたいと申し出ると直ぐにBlogにバナーを貼ってくれ、また私のBlogも清風館のホームページから飛べるようにしてくれた。

しかもそのホームページに、『新米仲居の奮闘記』というコラム枠も作ってくれ、
「准子ちゃん目線で、清風館の特色を書いて、この清風館を盛り上げてくれるかな?」
と言ってくれた。

旅館に何か恩返しが出来たらと考えていた私は、その提案を快く受け入れた。
そしてほぼ毎日、清風館でおきた、ほっと心温まる出来事や、季節を感じる事が出来るお庭の様子やお料理、そして露天風呂から見える満天の星空等をコラムに掲載した。

その甲斐があってか、清風館は連日満室状態をキープしていて、嬉しい悲鳴が上がっているとかいないとか。
兎に角毎日忙しくて毎日が楽しく過ぎていったんだ。
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