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第二章 決断と静養
第11話 別れの挨拶と宣言 2
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竜也先輩の話はとても衝撃的なものだったが、会社を辞める私にとっては全く関係の無い話だったし、そこになんの感情も湧かなかった。が、秘書課の皆さんの顔には焦りの色がはっきりと見てとれた。
中には、私に縋り付く様な目を向ける人もいたが、そんな事をされても全くもって無駄だと思った。
いつも私一人に大変な事を押し付け、自分は楽な仕事だけをしてきた彼女。なのにあんな目を寄越して、今更なんだというのだろうか。
多分、助けて欲しいとでも思っているのだろうが、辞める私に出来る事は何も無いのだ。
それに普段から仕事をきちんとしていれば何ら問題はないはず。
今までずっと楽な事しかして来なかった彼女にとっては、大問題なのだろう。
まぁせいぜい頑張って下さいね。
そんな風に思った私は、その人からの視線を無視し、毅然と前を向いていた。
すると広澤先輩がおずおずと手を挙げ、私にこう質問を投げかけてきた。
「あの……本日付けで辞める山下さんのファイルは、どうなっているのかしら?」
と。
何故ここにきて、広澤先輩が私のファイルの事を気にする理由が分からずぽかんとしていると、
「山下さんのファイルは、私が秘書課の共有ファイルにきちんとありましたよ。」
と手塚課長が笑顔でそう答えて下さったんだ。その言葉に安心したのか、広澤先輩は続けて、
「そうでしたか。教えて下さりありがとうございます、課長。でしたらわたくしはそのファイルに補足だけすれ…「え?何を仰ってるのですか?広澤さん。」!?」
と広澤先輩の言葉に被せる様にそう仰った課長に、
「え?何をって……。嫌ですわ、課長。山下さんは専務の第2秘書ですのよ?彼女のファイルといえば、専務の事以外…「鈴木専務の事?ですか?う~ん……。それはおかしいですね。」え?何がおかしいんですの?」
と状況が理解できない広澤先輩が少し苛立った様な口調で、課長に説明を求めていた。
課長はそんな彼女にさらっと問うた。
「確かに山下さんは鈴木専務の第2秘書という立場でした。だから、専務の書類は全て貴女が作られた。そうでは無いですか?広澤さん。」
「えぇ。勿論ですわ!わたくしは専務の第1秘書ですもの。いつも完璧に仕事をしておりましたわ。」
と広澤先輩は胸を張ってそう答えた。
「そうですね。広澤さんの仕事は完璧だと鈴木専務もそう仰っておられましたから。だからこそ、山下さんの個人ファイルに専務の事が無くても当たり前。そうではないですか?」
と課長が瞳をキラリと光らせそう言ったんだ。
これには流石の広澤先輩もグーの音も出ないだろう。
だって広澤先輩はいつも、私に殆どの会議の資料を作らせていたし、しかも毎回渡してくる資料は大抵が1・2枚抜かれており、私が作り終え共有ファイルに入れた途端、先輩がそこから私には見せなかった(渡さなかった)資料を差し込み、完璧な資料としてプリントアウトしたものを専務に渡し、鈴木専務から叱られている私をこき下ろし、二人でバカにしていたんだから。
最初こそ、そんな資料は見ていない!渡されてない!と反抗したのだが、共有ファイルの中からは既に私が打った資料は削除されていた。
だが、私個人のパソコンに念の為とっておいたバックアップを見せ証拠を示した事があるのだが、
「あら?このわたくしが間違っているとでも?そう言いたいのかしら?それに……。そんなものじゃ、証拠になるわけないでしょう?だって、わたくしが資料を隠したっていう事実なんて、これじゃ分かるわけないのよ!それに、アナタがわたくしに嫌がらせをして、態と資料を作らなかったって専務に言えば……、わたくしの言葉とアナタの言葉。専務が何方の言葉を信じるのか?馬鹿なアンタでもよぉ~く分かるわよね?」
と、いつも真っ赤な口紅を塗った唇を歪めながらそう言われた事があった。
それからは、反抗しても無駄だと分かり、広澤先輩から渡された資料の分だけ作成し、落ち度があったら(まぁ絶対あるんだけど…)謝るというルーティンを甘んじて受ける事にしていたから。
中には、私に縋り付く様な目を向ける人もいたが、そんな事をされても全くもって無駄だと思った。
いつも私一人に大変な事を押し付け、自分は楽な仕事だけをしてきた彼女。なのにあんな目を寄越して、今更なんだというのだろうか。
多分、助けて欲しいとでも思っているのだろうが、辞める私に出来る事は何も無いのだ。
それに普段から仕事をきちんとしていれば何ら問題はないはず。
今までずっと楽な事しかして来なかった彼女にとっては、大問題なのだろう。
まぁせいぜい頑張って下さいね。
そんな風に思った私は、その人からの視線を無視し、毅然と前を向いていた。
すると広澤先輩がおずおずと手を挙げ、私にこう質問を投げかけてきた。
「あの……本日付けで辞める山下さんのファイルは、どうなっているのかしら?」
と。
何故ここにきて、広澤先輩が私のファイルの事を気にする理由が分からずぽかんとしていると、
「山下さんのファイルは、私が秘書課の共有ファイルにきちんとありましたよ。」
と手塚課長が笑顔でそう答えて下さったんだ。その言葉に安心したのか、広澤先輩は続けて、
「そうでしたか。教えて下さりありがとうございます、課長。でしたらわたくしはそのファイルに補足だけすれ…「え?何を仰ってるのですか?広澤さん。」!?」
と広澤先輩の言葉に被せる様にそう仰った課長に、
「え?何をって……。嫌ですわ、課長。山下さんは専務の第2秘書ですのよ?彼女のファイルといえば、専務の事以外…「鈴木専務の事?ですか?う~ん……。それはおかしいですね。」え?何がおかしいんですの?」
と状況が理解できない広澤先輩が少し苛立った様な口調で、課長に説明を求めていた。
課長はそんな彼女にさらっと問うた。
「確かに山下さんは鈴木専務の第2秘書という立場でした。だから、専務の書類は全て貴女が作られた。そうでは無いですか?広澤さん。」
「えぇ。勿論ですわ!わたくしは専務の第1秘書ですもの。いつも完璧に仕事をしておりましたわ。」
と広澤先輩は胸を張ってそう答えた。
「そうですね。広澤さんの仕事は完璧だと鈴木専務もそう仰っておられましたから。だからこそ、山下さんの個人ファイルに専務の事が無くても当たり前。そうではないですか?」
と課長が瞳をキラリと光らせそう言ったんだ。
これには流石の広澤先輩もグーの音も出ないだろう。
だって広澤先輩はいつも、私に殆どの会議の資料を作らせていたし、しかも毎回渡してくる資料は大抵が1・2枚抜かれており、私が作り終え共有ファイルに入れた途端、先輩がそこから私には見せなかった(渡さなかった)資料を差し込み、完璧な資料としてプリントアウトしたものを専務に渡し、鈴木専務から叱られている私をこき下ろし、二人でバカにしていたんだから。
最初こそ、そんな資料は見ていない!渡されてない!と反抗したのだが、共有ファイルの中からは既に私が打った資料は削除されていた。
だが、私個人のパソコンに念の為とっておいたバックアップを見せ証拠を示した事があるのだが、
「あら?このわたくしが間違っているとでも?そう言いたいのかしら?それに……。そんなものじゃ、証拠になるわけないでしょう?だって、わたくしが資料を隠したっていう事実なんて、これじゃ分かるわけないのよ!それに、アナタがわたくしに嫌がらせをして、態と資料を作らなかったって専務に言えば……、わたくしの言葉とアナタの言葉。専務が何方の言葉を信じるのか?馬鹿なアンタでもよぉ~く分かるわよね?」
と、いつも真っ赤な口紅を塗った唇を歪めながらそう言われた事があった。
それからは、反抗しても無駄だと分かり、広澤先輩から渡された資料の分だけ作成し、落ち度があったら(まぁ絶対あるんだけど…)謝るというルーティンを甘んじて受ける事にしていたから。
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