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第二章 決断と静養
第10話 別れの挨拶と宣言 1
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「そうかね。残念だが仕方ない。」
と眉を下げて言葉をかけて下さる安東社長。
「はい。申し訳ございません。それから今まで大変お世話になりました。」
とお礼を申し上げ、深々と頭を下げた。
そんな私に、
「いやいや、山下さんが謝る事は何も無いよ。君があんなふうになったのは、全て私の不徳の致すところだからね。ゆっくり療養したらいい。」
と優しく仰ってくださった社長には、感謝の気持ちしかない。
「はい。本当にありがとうございます。」
そう言って深々と頭を下げると、
「元気でいなさい。またいつか一緒に食事でもしよう。そうだな。今度は君の伯母上の旅館が良いだろう。どうかな?」
と仰って下さった。
そう。私がまだ入社する前、一度だけ竜也先輩が食事に誘ってくれた事があったのだ。その時何故か社長も一緒にいらして、
「春から我が社に入社する山下 准子さんだね。竜也の父の安東 将也です。」
と、まさかの社長との会食に、緊張でガチガチになっていた私の心と体を解すように優しく仰って下さった事があるのだ。
「はい。是非!」
と思いの外大きな声で答えた私をご覧になった社長は、
「その時は家族で世話になるよ。」
と目を細めて笑顔を見せて下さった。
社長へのご挨拶が終わり、次は副社長の部屋へ。
「そうか…ごめんな、守ってやれなくて。本当にすまない。」
と退職の挨拶をした私に謝罪するように言葉をかけてくれる竜也先輩。
「そんな事はありません。私こそ色々とご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。」
と頭を下げた。
その後、そんな事は無い。いえあります。といった押し問答の様な会話をした私達は、2人同時に吹き出してしまった。
そして、ひとしきり笑った後、
「前にもこんな事があったな。」
と仰る先輩に、
「えぇ、ありましたね。あの時先輩……あ!失礼致しました、副社長。」
「いや。もう俺と准は上司と部下じゃないんだ。昔と同じ呼び方で呼んでくれて構わない。」
と副社長と呼ばなかった私を責める事無くそう言ってくれた。
その事にお礼を言った私に、
「で、もう挨拶は全て済んだのか?」
と聞いた先輩に私は
「殆どの方には済んでます。でも……秘書課と鈴木専務だけは……まだ……。」
と答えると、
「専務は海外支局に単身赴任中だから、挨拶は不用だよ。」
と聞かされ、あの男に会わずに済む事に胸を撫で下ろした。
あのエロ狸は、私の一件があった事から、きっとほとぼりが冷めるまで海外支局勤務になったんだろう。
どの国の何処の支局に飛ばされたのか知らないが、慣れない土地でせいぜい頑張って下さいね。そんな事を思っていると、
「秘書課への挨拶には、俺も一緒に行く。」
と先輩に言われてしまった。
とんでもないと一度はきっぱりとお断りするも、先輩は一度言い出したら聞かない性格である事を思い出した私は、不承不承ながらも彼の提案に頷いたのだった。
副社長室を出た私達は、そのまま秘書課へ行き、広澤先輩をはじめとする秘書課の面々と対峙した。
竜也先輩が現れた瞬間色めきだった秘書課(特に広澤先輩が)の面々だったが、私をご自身の隣りに立たせ、
「来月末付けで山下さんが我が社を退職されます。ただし、残っている有休と傷病を使う為、本日が最後の出勤となります。」
と皆さんにそう仰ってくださった。
そして、驚いている様子の秘書課の皆さんに冷ややかな視線を送り
「山下さんの様に優秀な人材を手放す事になってしまい、私としては非常に残念に思っている。この様な事態になってしまった事は、管理者としての私の不甲斐なさの所為だろう。これを機に、旧態依然と化した秘書課を含め、我が社全体の人事を大幅に見直す事にした。この件は社長より近々発表になると思う。君たちも、何処に異動になっても良いように、仕事の引き継ぎファイルを作っておく様に。私からは以上だ。」
と話を締め括り口を結ばれたんだ。
と眉を下げて言葉をかけて下さる安東社長。
「はい。申し訳ございません。それから今まで大変お世話になりました。」
とお礼を申し上げ、深々と頭を下げた。
そんな私に、
「いやいや、山下さんが謝る事は何も無いよ。君があんなふうになったのは、全て私の不徳の致すところだからね。ゆっくり療養したらいい。」
と優しく仰ってくださった社長には、感謝の気持ちしかない。
「はい。本当にありがとうございます。」
そう言って深々と頭を下げると、
「元気でいなさい。またいつか一緒に食事でもしよう。そうだな。今度は君の伯母上の旅館が良いだろう。どうかな?」
と仰って下さった。
そう。私がまだ入社する前、一度だけ竜也先輩が食事に誘ってくれた事があったのだ。その時何故か社長も一緒にいらして、
「春から我が社に入社する山下 准子さんだね。竜也の父の安東 将也です。」
と、まさかの社長との会食に、緊張でガチガチになっていた私の心と体を解すように優しく仰って下さった事があるのだ。
「はい。是非!」
と思いの外大きな声で答えた私をご覧になった社長は、
「その時は家族で世話になるよ。」
と目を細めて笑顔を見せて下さった。
社長へのご挨拶が終わり、次は副社長の部屋へ。
「そうか…ごめんな、守ってやれなくて。本当にすまない。」
と退職の挨拶をした私に謝罪するように言葉をかけてくれる竜也先輩。
「そんな事はありません。私こそ色々とご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでした。」
と頭を下げた。
その後、そんな事は無い。いえあります。といった押し問答の様な会話をした私達は、2人同時に吹き出してしまった。
そして、ひとしきり笑った後、
「前にもこんな事があったな。」
と仰る先輩に、
「えぇ、ありましたね。あの時先輩……あ!失礼致しました、副社長。」
「いや。もう俺と准は上司と部下じゃないんだ。昔と同じ呼び方で呼んでくれて構わない。」
と副社長と呼ばなかった私を責める事無くそう言ってくれた。
その事にお礼を言った私に、
「で、もう挨拶は全て済んだのか?」
と聞いた先輩に私は
「殆どの方には済んでます。でも……秘書課と鈴木専務だけは……まだ……。」
と答えると、
「専務は海外支局に単身赴任中だから、挨拶は不用だよ。」
と聞かされ、あの男に会わずに済む事に胸を撫で下ろした。
あのエロ狸は、私の一件があった事から、きっとほとぼりが冷めるまで海外支局勤務になったんだろう。
どの国の何処の支局に飛ばされたのか知らないが、慣れない土地でせいぜい頑張って下さいね。そんな事を思っていると、
「秘書課への挨拶には、俺も一緒に行く。」
と先輩に言われてしまった。
とんでもないと一度はきっぱりとお断りするも、先輩は一度言い出したら聞かない性格である事を思い出した私は、不承不承ながらも彼の提案に頷いたのだった。
副社長室を出た私達は、そのまま秘書課へ行き、広澤先輩をはじめとする秘書課の面々と対峙した。
竜也先輩が現れた瞬間色めきだった秘書課(特に広澤先輩が)の面々だったが、私をご自身の隣りに立たせ、
「来月末付けで山下さんが我が社を退職されます。ただし、残っている有休と傷病を使う為、本日が最後の出勤となります。」
と皆さんにそう仰ってくださった。
そして、驚いている様子の秘書課の皆さんに冷ややかな視線を送り
「山下さんの様に優秀な人材を手放す事になってしまい、私としては非常に残念に思っている。この様な事態になってしまった事は、管理者としての私の不甲斐なさの所為だろう。これを機に、旧態依然と化した秘書課を含め、我が社全体の人事を大幅に見直す事にした。この件は社長より近々発表になると思う。君たちも、何処に異動になっても良いように、仕事の引き継ぎファイルを作っておく様に。私からは以上だ。」
と話を締め括り口を結ばれたんだ。
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