26 / 41
第二章 決断と静養
第9話 准子の決意 2
しおりを挟む
待つこと5分
会議室のドアがノックされ、横山部長・手塚課長、それから人事課の田原課長が入って来られた。
「お疲れ様です。」
と椅子から立ち上がり頭を下げると、
「お掛け下さい、山下さん。」
と田原課長に着席を促された。
私の前に、3人の上司が座っている様は、宛ら入社の面接試験の様だった。
でもまぁ、今日のこれも一種の面接だろう。と言っても、当たり前だが入社するわけでは無く、【退職】の面談なのだけども。
「朝のお忙しいお時間にお手間を取らせてしまい申し訳ございません。」
と椅子に腰掛けた状態で深々と頭を下げる。
「大丈夫ですよ。それより……そのご様子から察するに、お辞めになるおつもりですね?」
察しの良い手塚課長が仰った言葉に
「はい。此方を……。」
と言って退職願を差し出した。
それを受け取った手塚課長が、ご自身の左隣りに座る横山部長に渡すと、チラッと中の便箋を出し目を通した部長が課長へ、その手塚課長がまた隣に座る田原人事課長へとまわしていく。
そして、田原課長が、読み終えた退職願を封筒に戻し
「分かりました。退職願を受理致します。」
と仰った事を受け、私は
「ありがとうございます。長い間お世話になりました。」
と言いながら、社員証と初期化したパソコンとUSBを手塚課長の前に差し出した。
「念の為確認致しますね。」
と、課長はパソコンを起動し、初期化の確認をすると社員証を田原課長に渡した。
「はい。確かに。」
と社員証を受け取った田原課長はそう仰って、私が使っていた社員証の一部に鋏をいれたんだ。
「これでもうこの社員証は使えなくなりました。」
「はい。」
「これからのお話を致しますね。退職願には、来月末の退職をご希望とありましたが、それで宜しいですね?」
「はい。」
「では、1ヶ月分は溜まっていた有給休暇20日分を消化と残りは傷病手当で充当するということで宜しいのですね?」
「はい、それでお願い致します。」
「分かりました。それでは雇用保険被保険者証・年金手帳・源泉徴収票、および離職票は、後日弊社から郵送にて送らせて頂きます。ご住所に変更は?」
「はい。実は今の住所から引っ越しを致します。ですので、私の実家である『電化のヤマシタ』にお送り頂けますでしょうか?」
「承知致しました。給与と退職金をお振込み致しますので、入金が確認出来ますまで、口座の解約はなさらない様お願い致しますね。」
と、優しい口調で話す田原課長からの事務確認が終わった後、
「一つ聞いてもいいかい?」
と、横山部長に聞かれた私は、
「はい。」
と背筋を改めて伸ばした。
「山下さんは本当に仕事が出来る良い秘書でした。辞められてしまうのは、正直言って痛手です。」
「ありがとうございます。ですが……」
「勿論お引き留めはしませんよ。もうこうなってしまいましたからね。」
と仰る横山部長の言葉に反応した田原課長が、鋏が入った社員証を持ちヒラヒラさせている。
私は苦笑いを浮かべ
「そうですね。」
と答えた。
「秘書課の山下さんの私物は?」
と手塚課長に聞かれ
「こちらにあります。」
と紙袋を見せると、
「分かりました。で、社外秘の物は?」
「既にシュレッダーしてあります。また在籍していた頃の諸々共有した方が良いと教えられました事柄につきましては、共有フォルダに入れてありますので、必要とあればご確認下さい。」
と言うと、手塚課長は「流石ですね。」と頷いて下さった。
「では、社長・副社長と、山下さんがついていた専務、それから秘書課で最後の挨拶をして貰いたいと思うので、私についてきてくれますか?」
と横山部長に言われた。
正直気が進まないし、また倒れるかも?という不安もあるがこれもケジメだと思ったのと、これですっきりしてしまおうと思う事で、なんとか部長の言葉に
「はい。宜しくお願い致します。」
と答えた。
会議室のドアがノックされ、横山部長・手塚課長、それから人事課の田原課長が入って来られた。
「お疲れ様です。」
と椅子から立ち上がり頭を下げると、
「お掛け下さい、山下さん。」
と田原課長に着席を促された。
私の前に、3人の上司が座っている様は、宛ら入社の面接試験の様だった。
でもまぁ、今日のこれも一種の面接だろう。と言っても、当たり前だが入社するわけでは無く、【退職】の面談なのだけども。
「朝のお忙しいお時間にお手間を取らせてしまい申し訳ございません。」
と椅子に腰掛けた状態で深々と頭を下げる。
「大丈夫ですよ。それより……そのご様子から察するに、お辞めになるおつもりですね?」
察しの良い手塚課長が仰った言葉に
「はい。此方を……。」
と言って退職願を差し出した。
それを受け取った手塚課長が、ご自身の左隣りに座る横山部長に渡すと、チラッと中の便箋を出し目を通した部長が課長へ、その手塚課長がまた隣に座る田原人事課長へとまわしていく。
そして、田原課長が、読み終えた退職願を封筒に戻し
「分かりました。退職願を受理致します。」
と仰った事を受け、私は
「ありがとうございます。長い間お世話になりました。」
と言いながら、社員証と初期化したパソコンとUSBを手塚課長の前に差し出した。
「念の為確認致しますね。」
と、課長はパソコンを起動し、初期化の確認をすると社員証を田原課長に渡した。
「はい。確かに。」
と社員証を受け取った田原課長はそう仰って、私が使っていた社員証の一部に鋏をいれたんだ。
「これでもうこの社員証は使えなくなりました。」
「はい。」
「これからのお話を致しますね。退職願には、来月末の退職をご希望とありましたが、それで宜しいですね?」
「はい。」
「では、1ヶ月分は溜まっていた有給休暇20日分を消化と残りは傷病手当で充当するということで宜しいのですね?」
「はい、それでお願い致します。」
「分かりました。それでは雇用保険被保険者証・年金手帳・源泉徴収票、および離職票は、後日弊社から郵送にて送らせて頂きます。ご住所に変更は?」
「はい。実は今の住所から引っ越しを致します。ですので、私の実家である『電化のヤマシタ』にお送り頂けますでしょうか?」
「承知致しました。給与と退職金をお振込み致しますので、入金が確認出来ますまで、口座の解約はなさらない様お願い致しますね。」
と、優しい口調で話す田原課長からの事務確認が終わった後、
「一つ聞いてもいいかい?」
と、横山部長に聞かれた私は、
「はい。」
と背筋を改めて伸ばした。
「山下さんは本当に仕事が出来る良い秘書でした。辞められてしまうのは、正直言って痛手です。」
「ありがとうございます。ですが……」
「勿論お引き留めはしませんよ。もうこうなってしまいましたからね。」
と仰る横山部長の言葉に反応した田原課長が、鋏が入った社員証を持ちヒラヒラさせている。
私は苦笑いを浮かべ
「そうですね。」
と答えた。
「秘書課の山下さんの私物は?」
と手塚課長に聞かれ
「こちらにあります。」
と紙袋を見せると、
「分かりました。で、社外秘の物は?」
「既にシュレッダーしてあります。また在籍していた頃の諸々共有した方が良いと教えられました事柄につきましては、共有フォルダに入れてありますので、必要とあればご確認下さい。」
と言うと、手塚課長は「流石ですね。」と頷いて下さった。
「では、社長・副社長と、山下さんがついていた専務、それから秘書課で最後の挨拶をして貰いたいと思うので、私についてきてくれますか?」
と横山部長に言われた。
正直気が進まないし、また倒れるかも?という不安もあるがこれもケジメだと思ったのと、これですっきりしてしまおうと思う事で、なんとか部長の言葉に
「はい。宜しくお願い致します。」
と答えた。
0
お気に入りに追加
250
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる