海より深い隠れ御曹司の溺愛

Saeko

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第二章 決断と静養

第8話 准子の決意 1

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「おはようございます。お久しぶりですね。もうお体は大丈夫なんですか?」

兄に決意を語った日から3日後。
私はSPA商事に来ていた。

いつも誰よりも早く出勤していた私は、守衛さんとも顔見知りだ。
「はい。ご心配をおかけ致しました。」
と笑顔で応え秘書課があるフロアへと向かった。

社員証で秘書課のドアの鍵を開けると共にセキュリティを解除する。
極秘情報を扱う部署なので当たり前だが、同時に誰が何時に入退室したか分かる様になっているのだ。

入室した私は、自分の机に向かうと直ぐ、持ってきた大きめの紙袋の口を広げると、机の上の私物を放り込んでいく。
次に、机の1番上の引き出しを鍵を使って開け、ここからもまた私物を紙袋に放り込む。残り2段の引き出しも同様にした後、名刺フォルダと数冊のファイルを引き出しから出すと、中身を全てシュレッダーにかけてしまう。
その名刺には、その方それぞれの趣向や嗜好品等が書かれている為、十分個人情報にあたるからだ。
「共有フォルダにはちゃんとデータを保管してあるんだから大丈夫よね。」
会議等で用いた書類に関しても、OKになった物はファイリングしてある筈(私が作成したものは広澤先輩の嫌がらせでほぼほぼボツだから不要とも言える)なので、これも処理して大丈夫だろう。

「これでよし!最後はパソコンを起動し、支給されていたUSBを差し込んでっと…………よし!USBもパソコンも初期化完了!っと。」
そう言って腕時計を見ると、そろそろ部課長が出勤して来る時刻になっていた。
私は鞄と紙袋そして社員証を持ち、役員フロアへと向かった。

フロアに着くと秘書課 部課長の後ろ姿と、その前を歩く副社長の姿が見えた。
「副社長。部長。それから課長。少しだけお時間頂けますでしょうか?」
と彼等の後ろから呼びかけると、3人が同時に振り向いた。
「「山下さん?」」
「准!どうした?出てきて大丈夫なのか?」
振り向いて私の苗字を呼んだだけの横山部長と手塚課長とは違い、竜也先輩は駆け寄ってきてくれた。
先輩は本当に優しい人だと思った。
そんな竜也先輩に向かって笑顔を作りながら
「大丈夫です。ありがとうございます、副社長。」
と答えた後、
「横山部長。お話があるのですが……、今お時間大丈夫でしょうか?」
と話しかけた。
すると部長は私の姿を頭からつま先までを見るように一瞥すると、
「分かりました。荷物を置いたら参りますので、そこの会議室で待ってて貰えますか?」
とにこやかに仰った。

私は
「分かりました。お待ちしております。」
と答え、会議室に入って待つことにしたのだ。




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