海より深い隠れ御曹司の溺愛

Saeko

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第二章 決断と静養

第7話 ストーカーの恐怖(兄の提案)

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「お前は暫く晃子おばさんの所に行ったらどうだ?」
「晃子おばさんの所へ?」
「そうだ。此処でアイツの行動に怯えているよりも。おばさんの旅館を手伝いながら、お前が大好きな温泉につかって、のんびりしてこいよ。」
晃子おばさんの旅館……。温泉……。
「うん。行く!」
元気に答えた私にハハッと小さく笑った兄は、
「あぁ。そうしろ。俺もその方が安心だからな。ほとぼり冷めるまでのんびりして来いよ。」
と言って満足気に頷いた。

「では、来月末でお部屋は退去ということになさいますか?」
加藤さんの言葉に動揺した私は
「え?えと……。それはどういう意味です「そうだな。そうして下さい。」」
私の言葉を遮って、加藤さんの言葉に兄が賛同する。
「え?どうして退去に?別に退去しなくたって……。」
と言い募る私をあやす様に、兄は
「あのな?お前さ。今やストーカーになってるあの男が、1ヶ月やそこらで諦めると思うか?」
「…………」
「そうですよ山下さん。今はこの様な手紙で済んでいますが、これからどんな悪質な手で山下さんとの接触を試みるか分かりませんからね。追い詰められた人間の取る行動は、常識を逸脱しているのが常というものです。それに……」
「それに?」
「住まれていないのにお家賃を支払うのは無駄ですよ。」

家賃の無駄……。加藤さんの言うとおりだ。
おばさんの旅館へ行くにしても、いつまでいるのか?
また、いつ会社へ復帰出来るか分からない。
それまでずっと部屋を不在にしているのにも拘わらず、家賃だけを支払い続けるのは、いくら傷病手当を貰っていたとしても痛い出費には違いない。

というか、そもそも会社復帰なんて出来るのか?
行けばまた翔太に会う。会えばまた苦しくなって倒れるかもしれない。
もう翔太に想いは無かったとしても、精神的苦痛は続くに違いないだろうし。

いや。それより何より。会社あそこにはもう私の居場所はないのかもしれない。
いくら竜也先輩副社長が優しくても、病気で休み続けている様な社員、しかも上司の遠縁の人間と、男をめぐってバトる様な羞恥を行なった社員を雇い続けるなんて、会社にとってはなんの得も無いだろう。先輩だって庇いきれるわけが無いのだから。


もし会社を辞めるにしても、この部屋には愛着がある。
使い勝手が良かったし、生活環境も最高だった。
でも……。このまま借り続けたとしも、おばさんの所から度々此処へ帰ってきては、部屋の空気の入れ替えやらしなくてはならなくなるだろう。
でもその度に翔太に会ったらどうしようと怯えなければならないかもしれない。

そんなの真っ平御免だ。

それにしても。私を裏切って捨てたクセに、今更会って何を話したいというのだろうか?
あの時、あの人達と私を貶めて笑い者にしただけじゃ、まだ足りないとでも?


それから少しの間ではあったが色々と考えてみた。
そして1つの結論を導き出した。

それは……
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