海より深い隠れ御曹司の溺愛

Saeko

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第一章 理不尽

第17話 自分勝手な人々 6(広澤凛子の場合 3)

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「はい。総務課 原です。」
「お疲れ様。わたくし、秘書の広澤ですけど。今から鈴木専務が車を使われるの。直ぐに回してちょ…「申し訳ごさいません。本日専務が社用車を使われるのは、13:30からとお聞きしております。只今社用車は副社長がお使いで、お帰りは13:15の予定です。なので、今は無理ですね。」え?何言っているの?アナタ!車は1台じゃないじゃない!」
とわたくしが言うと、電話の相手は盛大に溜息をつくとこう言ったの。

「はい。確かに社用車は2台ありますが、もう1台は終日出張中の社長がお使いなので、今は1台もありませんね。大体!秘書なら、役員の方々のスケジュール位把握しているでしょ?分かってて無理を言うのは止めて貰えます?」
そう言って、総務課の…名前は忘れたけど…女が内線電話をガチャン!と切ったわ。
全く!電話のマナーもなっていないのね?総務課は。

でも……車が無いのはマズイわね。仕方ないわ、ハイヤーを手配するしか無いわね。トラブルが起きても出来る秘書はあの手この手でクリアしていくものよね。
流石わたくしだわ。
「もしもし?わたくし、SPA商事専務秘書の広澤凛子と申します。ハイヤーを1台大至急……え?全て出払ってるですって!(なんですって?それじゃ困るのよ!)。分かりましたわ。他を当たって……って、それは本当ですの?」

電話対応してくれタクシー会社の従業員の男が言うには、某ホテルで大きな会議があって、ほぼ全てのタクシー会社のハイヤーが出払ってるというじゃない。
一体何だって言うのよ!全くもう!!

電話を切ったわたくしは、
「ちょっと!成菓堂まで歩いて……いえ、走ったらどれくらいで着きますの?」
と秘書の1人に聞きましたら、
「走ってですか?15分くらいじゃないですか。」
と答えたその言葉を聞いた途端、お財布が入っているバー〇ンを持って走り出しましたわ。

その時背後でわたくしを呼び止める声が聞こえた気がしましたけど、無視ですわ無視。



走りに走って、ようやく着いた成菓堂の店舗に入ったわたくしに、
「毎度ありがとうございます。態々わざわざ取りに来て下さったんですね。」
と納品書と請求書を渡され唖然とちゃったじゃないの。
「え?これはどういう?」
「今しがた其方の専務さんが受け取りに来て下さいましたよ。」

え?だって……え?社用車は?ハイヤーだって……。
わたくしは茫然自失ぼうぜんじしつの状態のまま、店主から出された請求書の額面を支払うと、領収書を貰って社に帰ったんです。

「お帰りなさい。」
と秘書の1人から言われ、その秘書にわたくしは目線だけ向けましたら、
「先程出られる時に声をかけたんですけど……もう終わっている事ですが、一応伝えますね。」
と言ってきたんです。
その事に何も答えないわたくしの様子に、それを是と思った彼女が続けた言葉に、わたくしは愕然としてしまったんです。
それはこんな話でしたわ。

副社長が予定よりも早くお戻りになった事で、社用車が空いたと総務から連絡を受けた事をわたくしに伝えようとしたのですけど、生憎わたくしが電話中だったので、気を利かせて、彼女が直接専務に車の用意が出来たと連絡を入れたと。その知らせを受け、専務はそのままお出かけになったということでした。
そうとは知らないわたくしは、本来社用車が戻ってくる時刻に間に合う様に手土産のお菓子を取りに行き、戻ってくればall OKだと考え、急いで出て行った為、彼女はわたくしにそれを伝えられなかったと……。

この歳でオフィス街を全力疾走したにも関わらず、わたくしがあずかり知らぬ所で全てが終わっていたという事実に、恥ずかしさを通り越して放心状態になってしまったわたくしは、そのあとの時間何をして過ごしたのかさえも覚えてませんの。

ただ後日、コンビニで買ったYAKUMIKUのクッキーを経費として落とそうとしたのですが、私的に購入したものを落とそうとしたと判断されてしまい、三枝さえぐさ経理課長からウチの部課長のお耳に入ってしまい、お2人からだけでなく副社長からもお叱りを受けてしまったわたくしは、罰として半年間の給与カット(10%)と反省文を書かされてしまったの。

おのれ、山下准子!アンタのせいでこっちはとんだとばっちりを受けたじゃないの!
出てきたら今まで以上に苛めぬいてこき使ってやらないとわたくしのプライドが許しませんわ!

逃げてばっかりいないで、とっとと出てらっしゃい!
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