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第四章 留学

第十話 旭陽の覚醒と陽子の行動

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目が覚めた旭陽は、自分が何処かの病院のベッドに寝かされている事が分かった。

「気がついたか?旭陽。」

旭陽がその声の方を見ると、ほっとしている様子の孝介が椅子に座っていた。

「父さん……。俺は一体……。」

「櫻井院長のお孫さんが、お前を連れて来てくれたんだよ。車の中でお前は酷く暴れたから、車に同乗しておられた医師の方が鎮静剤を打ったそうだ。だから目が覚めるまで休ませて貰っているんだ。」

「暴れた……。そうか。今日もスクールに陽子さんが来て…その陽子さんが菫香に掴みかかろうとしたのを玲音が止めて…………。そうだ!父さん。姫菜子は?姫菜子は本当に龍輝と渡米したの?」

「龍輝君と一緒にかどうかは知らんが、姫菜子さんが渡米したのは本当だ。社長もついて行かれたからな。」

「何故だ!何故姫菜子は……。」

「落ち着くんだ旭陽。仕方がないだろう。お前は事故後からずっと姫菜子さんを忘れていただろう?彼女が目の前にいるのに、居ないものとして扱っていた。」

「…………」

「それにな?姫菜子さんは香住コーポレーションを継ぐのが目標だと言っていたのは知ってるだろう?今回の渡米は元々決まっていた事で、スクール卒業後はあちらの大学へ進学すると決めていたらしい。」

「渡米希望だったのは俺も知ってる。姫菜子から聞いていたから。でも!こんなに早く行くなんて聞いて…「ないだろうな。でもその原因は」分かってるよ。俺だよな。」

「分かっているならいい。それより旭陽。今までの話しぶりからすると、完全に暗示が解けて、思い出したんだな。」

「あぁ。菫香に言われた言葉で全部ね。」

「そうか。それは良かった。じゃあ父さんは先生を呼んでくるから、待っていなさい。」

そう言って孝介は病室を出ていった。

旭陽はベッドの上で膝を抱えてうずくまり、後悔の念にさいなまれていた。

(俺は馬鹿だ。あんなに大切に大切にしていた女なのに。姫菜は俺の唯一無二なのに……。ごめん……ごめんな、姫菜。馬鹿な俺を許してほしい。)

旭陽side ~終~
     *☼*―――――*☼*―――――*☼*

「もうなんなのよ!なんでアタシがこんな目に合うわけ?てか、どうして旭陽は私を避けるの?まさかの暗示が解けたとか?てかそんな事よりアタシにパンチしたアノ男よ!」

玲音の突きをくらって、無様にも歩道に倒れた陽子は、旭陽を連れて菫香達が立ち去った場所から動けず、その場に座り込んだまま叫んでいた。

するとスクール生の1人が屈強な体の男性教諭を連れて来てこう言った。

「This woman tried to use violence against Sumika. And she had come here several times before to harass Hinako. (この女は菫香に暴力を振るおうとしていました。それから、以前にも此処に来て、姫菜子に嫌がらせをしていました。)」

当然英語が全く分からない陽子は、玲音がやった事を日本語で訴えようとしたが、

「私の大切な生徒に手を出すんじゃねぇ!今度現れたらただじゃおかねぇから、そのつもりでいろや!分かったらとっとと消えろ!この雌豚が!」

と、まるで某ドラマのヤン〇み並に啖呵たんかを切る、見た目金髪碧眼でおとぎ話に出てくる王子様のようなルックスからは想像が出来ない位の言葉が出た為、陽子は面食らったまま口をパクパクさせている。

「早く行かないと、police man呼ぶぜ?良いのか?」

と口の端を上げて言う男性教諭。

"police man”と言われ、流石にこれではまずいと思った陽子は、

「二度と来ないわよ!」

としっぽを巻いて一目散に走って行った。

走りながら陽子は思った。

(なんで上手くいかないのよ!ちっとも姫菜子に近づけないじゃないのさ。近づけなきゃアレもコレも何も奪えないのに!こうなったら奥の手よ。アノ男を使うしかないわね。アレは今回も姫菜子の事が好きなんだろうから。姫菜子もアノ男が目の前で優しい言葉を言えば落ちるに違いないし?そうと決まればお屋敷に……って)

「あ゙?めっちゃヤバいじゃん!もうこんな時刻とか!またあの先輩に怒られるじゃないのさ!てか、どれもこれも姫菜子のせいよ!」

と叫びながら走る陽子。

「ママ~。あそこに変なおばちゃんいるよ?」

と、小さな男の子に指を指されながら言われたのだが、言い返そうと思うも、遅刻=減給になる為、諦めるしかなかった。


当然の事ながら、冴島の屋敷に着いたのは、約束の時刻を大幅過ぎていた為、メイド長に大目玉を食らったばかりでなく、半年間の減給となった。

陽子side ~終~
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