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第四章 留学
第四話 渡米前日2
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姫菜子と龍輝の送別会場である櫻井柊氏の自宅へと到着した慎也と姫菜子。
会場には既に龍輝とその両親である張博龍 麗蘭夫妻、主催者である連城駿斗 百合香夫妻と菫香、それから濱田玲音と両親の流星 菜々子夫妻が到着していた。
櫻井家で働くメイド達から参加者それぞれに飲み物が行き渡ると、姫菜子と龍輝が百合香に呼ばれ、百合香の横に立ち並んだ。
「本日は香住姫菜子さん 張龍輝さんの留学送別会へお越し下さり誠にありがとうございます。姫菜子さんと龍輝さんは、将来お父様の会社を継ぐべく渡米し、向こうの大学へ入学されるご予定だそうです。そしてMBAを取得した後は、帰国後、それぞれお父様が経営なさる会社へ就職されるそうです。」
と百合香が一旦言葉を切ると、参加者から感嘆の声と共に温かい拍手が送られた。
「姫菜子さんはお小さい頃から、お父様の会社で秘書をされながら仕事を覚え、将来はお父様の跡を継いで会社を大きくしたいという思いを持っておられたそうです。そんな姫菜子さんをずっと見ていた私の娘 菫香が、渡米を決められたお友達である姫菜子さんを応援したいとわ申しました事で、この会が実現致しました。」
澱みないスピーチを続ける百合香の肩をそっと抱く夫の駿斗。
フランス人の血を引く百合香と高身長で国際弁護士の資格を持つ駿斗は、よく雑誌でも取り上げられている美男美女の夫婦だ。
そんな夫妻の仲睦まじい姿を見る姫菜子は、少しだけ羨ましく、そして悲しくなってしまう。
それは、前の生で婚約者だった祥太郎から得られなかった愛と、今回の生でも信じていた旭陽の裏切りとも取れる陽子への抱懐に対してだった。
そんな暗い表情を一瞬だけしてしまった姫菜子の手をそっと龍輝は握った。
それはまるで
俺がいる。俺が守る。だからそんな顔をするな。
と言っているかの様な温もりだった。
そんな龍輝の温かい心に触れた気がした姫菜子は、隣にいる龍輝をチラリと見ると、龍輝の手をぎゅっと握り返した。
ありがとう、龍輝。
という意味を込めながら。
そんな若い2人の姿を見ていた龍輝の父博龍は、妻の麗蘭に結婚を申し込んだ時の事を思い出していた。
博龍の父親は香港マフィアの首領。
一般人の麗蘭が博龍と結婚する事で被る危険のリスクは高くなる。が、何があっても麗蘭を守る!と言った博龍は、今の龍輝と同じ様に、麗蘭の手を握り締めながら言ったのだ。
後に麗蘭は、その時の博龍に絆され結婚を決めた。と周囲に話していた。
そんな2人の息子が、今目の前で生涯をかけて守り抜きたいと請い願う少女に対して男を見せている姿に、成長を感じた博龍は、龍輝を見つめ無言で頷いた。
それを見た龍輝もまた強い瞳で父親を
見つめ返し、無言の親子の会話をしていた。
会場には既に龍輝とその両親である張博龍 麗蘭夫妻、主催者である連城駿斗 百合香夫妻と菫香、それから濱田玲音と両親の流星 菜々子夫妻が到着していた。
櫻井家で働くメイド達から参加者それぞれに飲み物が行き渡ると、姫菜子と龍輝が百合香に呼ばれ、百合香の横に立ち並んだ。
「本日は香住姫菜子さん 張龍輝さんの留学送別会へお越し下さり誠にありがとうございます。姫菜子さんと龍輝さんは、将来お父様の会社を継ぐべく渡米し、向こうの大学へ入学されるご予定だそうです。そしてMBAを取得した後は、帰国後、それぞれお父様が経営なさる会社へ就職されるそうです。」
と百合香が一旦言葉を切ると、参加者から感嘆の声と共に温かい拍手が送られた。
「姫菜子さんはお小さい頃から、お父様の会社で秘書をされながら仕事を覚え、将来はお父様の跡を継いで会社を大きくしたいという思いを持っておられたそうです。そんな姫菜子さんをずっと見ていた私の娘 菫香が、渡米を決められたお友達である姫菜子さんを応援したいとわ申しました事で、この会が実現致しました。」
澱みないスピーチを続ける百合香の肩をそっと抱く夫の駿斗。
フランス人の血を引く百合香と高身長で国際弁護士の資格を持つ駿斗は、よく雑誌でも取り上げられている美男美女の夫婦だ。
そんな夫妻の仲睦まじい姿を見る姫菜子は、少しだけ羨ましく、そして悲しくなってしまう。
それは、前の生で婚約者だった祥太郎から得られなかった愛と、今回の生でも信じていた旭陽の裏切りとも取れる陽子への抱懐に対してだった。
そんな暗い表情を一瞬だけしてしまった姫菜子の手をそっと龍輝は握った。
それはまるで
俺がいる。俺が守る。だからそんな顔をするな。
と言っているかの様な温もりだった。
そんな龍輝の温かい心に触れた気がした姫菜子は、隣にいる龍輝をチラリと見ると、龍輝の手をぎゅっと握り返した。
ありがとう、龍輝。
という意味を込めながら。
そんな若い2人の姿を見ていた龍輝の父博龍は、妻の麗蘭に結婚を申し込んだ時の事を思い出していた。
博龍の父親は香港マフィアの首領。
一般人の麗蘭が博龍と結婚する事で被る危険のリスクは高くなる。が、何があっても麗蘭を守る!と言った博龍は、今の龍輝と同じ様に、麗蘭の手を握り締めながら言ったのだ。
後に麗蘭は、その時の博龍に絆され結婚を決めた。と周囲に話していた。
そんな2人の息子が、今目の前で生涯をかけて守り抜きたいと請い願う少女に対して男を見せている姿に、成長を感じた博龍は、龍輝を見つめ無言で頷いた。
それを見た龍輝もまた強い瞳で父親を
見つめ返し、無言の親子の会話をしていた。
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