47 / 56
第四章 留学
第二話 渡米二日前
しおりを挟む
渡米二日前の事
『皆さんにとっては突然の話になりますが……』
そう朝のホールムールで話を始めたのは、姫菜子のクラス担任のジョセフ先生だ。
『このクラスのMs.姫菜子 香住と、隣りのクラスのMr.龍輝 張が今日でスクールを休学し、U.S.Aへ行くことになりました。』
この言葉にクラスメイト達はザワザワし始めた。
動揺しなかったのは、姫菜子の親友の菫香とその恋人の玲音、そして、姫菜子に無関心になっている旭陽だけだった。
菫香と玲音が動揺しなかったのは、ずっと秘密裏に計画されていた姫菜子と龍輝の留学を、発表の1週間前に知らされており、秘密にしていた理由に納得出来た為と、2人から謝罪を受けたからだった。
ホールムールが終わった途端、ほぼ全員が姫菜子の席を取り囲む。
理由を聞く者、寂しいと言って姫菜子にしがみつく者、スマホを出して、自身のメッセージアプリのアカウントやメールアドレスを書いた紙を半ば強引に姫菜子に手渡す者と様々だった。
そして口々に、
『あんな薄情男なんて忘れて、向こうで頑張れ!』
と、旭陽を睨み付けながら、姫菜子にエールを送った。
すると、その輪の中から抜け出したクリスチーヌが
『無様なものね。あれだけ 姫菜を護るのは俺だ!姫菜子は俺のものだと言ってたあんたが、事故に遭ったとはいえ、最愛の恋人の事を忘れたばかりじゃなく、思い出そうともしないなんてね。結局あんたの【amour】なんてその程度のものだったのね。姫菜子は龍輝に幸せにして貰えば良いわ。』
と、旭陽の前で腰に手を当てフン!と鼻で笑った。
その言葉に、クラスメイト達も旭陽に向き直り、揃って首を縦にふっていた。
流石の旭陽もこれには耐えきれず、教室を出ていってしまった。
・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚
教室を出た旭陽は悩んでいた。
理由は、最近よく起こす原因不明の頭痛と同時に目の前に断片的に浮かぶ映像の事でだ。
映像には決まって同じ少女が出てくる。
そしてその少女はいつも泣いていた。
そんな少女を慰めてあげようと近づくも、悪魔の囁きが聞こえて、全く動けなくなってしまうのだ。
その内に少女は大人になり、ある時は自分の方をチラリと見た後悪魔の手によって声も出すこと無く命を落とす。
またある時は、自分ではない誰かが来て、彼女を護るように抱き締めると、すっと消える。
いずれのパターンも、自分は動く事も出来ず、声も発せられず、手を伸ばしても届く事は無く、ただ見ているだけだった。
そして彼女が消えた後、その場に崩れ落ち、初めて絶望の叫び声を出す。
悪夢に近いその映像は、旭陽の精神を蝕んでいったのだった。
「何故俺は、こんな風になったんだろう。香住にだけ、なんの感情も持てないなんて……。ただ1つおかしいのは、香住の事を考えると同時に、あの強烈な痛みが頭を襲ってくる。だが、同時に違う俺が、『考えろ!彼女の事を思い出せ!』と言ってくるんだ。するとあの映像が……。Shit!! As my dad says, do I have to go to the hospital?(父さんの言うとおり、病院で診てもらうしかないのか?)」
スクールの中庭にある大きな欅の幹にもたれ、旭陽は静かに空を見上げた。
そして、後日。
その強烈な痛みの原因が信じられない行為によるものであった事と、大事な人を手放したという事実にショックを受けることなる。
『皆さんにとっては突然の話になりますが……』
そう朝のホールムールで話を始めたのは、姫菜子のクラス担任のジョセフ先生だ。
『このクラスのMs.姫菜子 香住と、隣りのクラスのMr.龍輝 張が今日でスクールを休学し、U.S.Aへ行くことになりました。』
この言葉にクラスメイト達はザワザワし始めた。
動揺しなかったのは、姫菜子の親友の菫香とその恋人の玲音、そして、姫菜子に無関心になっている旭陽だけだった。
菫香と玲音が動揺しなかったのは、ずっと秘密裏に計画されていた姫菜子と龍輝の留学を、発表の1週間前に知らされており、秘密にしていた理由に納得出来た為と、2人から謝罪を受けたからだった。
ホールムールが終わった途端、ほぼ全員が姫菜子の席を取り囲む。
理由を聞く者、寂しいと言って姫菜子にしがみつく者、スマホを出して、自身のメッセージアプリのアカウントやメールアドレスを書いた紙を半ば強引に姫菜子に手渡す者と様々だった。
そして口々に、
『あんな薄情男なんて忘れて、向こうで頑張れ!』
と、旭陽を睨み付けながら、姫菜子にエールを送った。
すると、その輪の中から抜け出したクリスチーヌが
『無様なものね。あれだけ 姫菜を護るのは俺だ!姫菜子は俺のものだと言ってたあんたが、事故に遭ったとはいえ、最愛の恋人の事を忘れたばかりじゃなく、思い出そうともしないなんてね。結局あんたの【amour】なんてその程度のものだったのね。姫菜子は龍輝に幸せにして貰えば良いわ。』
と、旭陽の前で腰に手を当てフン!と鼻で笑った。
その言葉に、クラスメイト達も旭陽に向き直り、揃って首を縦にふっていた。
流石の旭陽もこれには耐えきれず、教室を出ていってしまった。
・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚・*:..。o○☼*゚
教室を出た旭陽は悩んでいた。
理由は、最近よく起こす原因不明の頭痛と同時に目の前に断片的に浮かぶ映像の事でだ。
映像には決まって同じ少女が出てくる。
そしてその少女はいつも泣いていた。
そんな少女を慰めてあげようと近づくも、悪魔の囁きが聞こえて、全く動けなくなってしまうのだ。
その内に少女は大人になり、ある時は自分の方をチラリと見た後悪魔の手によって声も出すこと無く命を落とす。
またある時は、自分ではない誰かが来て、彼女を護るように抱き締めると、すっと消える。
いずれのパターンも、自分は動く事も出来ず、声も発せられず、手を伸ばしても届く事は無く、ただ見ているだけだった。
そして彼女が消えた後、その場に崩れ落ち、初めて絶望の叫び声を出す。
悪夢に近いその映像は、旭陽の精神を蝕んでいったのだった。
「何故俺は、こんな風になったんだろう。香住にだけ、なんの感情も持てないなんて……。ただ1つおかしいのは、香住の事を考えると同時に、あの強烈な痛みが頭を襲ってくる。だが、同時に違う俺が、『考えろ!彼女の事を思い出せ!』と言ってくるんだ。するとあの映像が……。Shit!! As my dad says, do I have to go to the hospital?(父さんの言うとおり、病院で診てもらうしかないのか?)」
スクールの中庭にある大きな欅の幹にもたれ、旭陽は静かに空を見上げた。
そして、後日。
その強烈な痛みの原因が信じられない行為によるものであった事と、大事な人を手放したという事実にショックを受けることなる。
2
お気に入りに追加
654
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる