誰にも奪わせない 〜ボロ雑巾の様に捨てられた令嬢の復讐～

第四章 留学

第一話 語学留学と約束

龍輝の父 博龍と話をしてから、姫菜子と龍輝の留学話はトントン拍子ですすんだ。

留学に必要なビザの申請や学校の手配等は、約束どおり博龍が主体となって行ってくれた。

また、ホームステイ先は、麗蘭の実姉 秀麗ｼｩﾘｰの夫である、ウィリアム=バークリー氏の家になった。

ウィリアムには、3人の子供がいる。
上から長男のスティーブ（29）、長女 ヴィクトリア（26）、次男 ジョージ（22）だ。
スティーブは妻帯者で妻はカロリーヌ（24）その娘 キャロライン（2）という。
スティーブはウィリアムの家から車で30分位離れた地域で、妻と娘と共に生活している。
ヴィクトリアは現在婚約中で、婚約者のアダムと同棲中。
そして現在、ウィリアムの家に同居しているのはジョージのみ。
ジョージは日本でいうところの大学院生で、姫菜子と龍輝が通うことになるであろう大学の先輩にあたるのだ。
博龍の話では、ウィリアム家の上の2人の子の部屋が空いているからという理由で、姫菜子達のホームステイが可能になったという事だった。

姫菜子と龍輝の留学の話だが、秘密裏に進められていた。

慎也と博龍からきつく口止めされている為、姫菜子と龍輝は留学の話を誰にもしなかった。
それは姫菜子の親友の菫香に対しても同様だ。

そこまで注意深く行動するには理由があった。
それは当然陽子の存在だ。

前の生を覚えているとしか思えない陽子の言動は、姫菜子の神経を容易に疲労させていく。

陽子がスクールに現れた日の姫菜子は、陽子に悟られまいと気丈に振舞ってはいるものの、自分の屋敷に入った途端発作が出て寝込んでしまう。

慎也は、これ以上日本にいては姫菜子が危険だと考える様になっていた。

だからこそ、水面下で動く必要があると考えた慎也は、姫菜子の身を案じ、博龍に姫菜子を守って貰えないか？と打診をしていた。

勿論、慎也の方でなんとか出来ないことでは無い。
だが、博龍の父親の関係者は、一見普通の人間に見えるが、実は物凄く強い。

彼等だったら、陽子がどんなに汚い手を使ったとしても、姫菜子にまで魔の手が及ぶ事はないであろう。

勿論慎也は、博龍との約束を忘れてはいなかった。

事業拡大の為に、慎也の会社と懇意になりたいという博龍の希望を、慎也は無事姫菜子が留学したあかつきには叶えようとしていた。

お互いの利害関係が一致していた慎也と博龍は、昔からの親友だったのでは？と思える位気が合う同士になってきていた。

そしてとうとう、2人の子供は、今週末の夜の便で渡米することになった。