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第三章 逆行~中学 高校~
第十六話 打ち明け話 3
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旭陽の到着を三枝から聞いた慎也と姫菜子は、旭陽が待つ応接間へと向かった。
「旭陽君。さっきは済まなかったね。」
「いえ、大丈夫です。」
旭陽は立ち上がり慎也からの言葉に真顔で答えた。
「リッチー。来てくれてありがとう。」
旭陽を見て笑顔で近づく姫菜子には、旭陽も笑顔で答える。
あからさまな態度の違いに苦笑いする慎也。
「顔色、良くなったな。良かった。」
「うん。ありがと、リッチー。」
姫菜子の顔に手を当て姫菜子の顔色が良くなった事を確認する旭陽。
その手に頬を擦り寄せ笑顔を見せる姫菜子。
見つめ合う旭陽と姫菜子に対して、なんとも複雑な表情で見ていた慎也が、ゴホンと1つ咳払いをすると、
「姫菜。話とはなんだい?」
と1人がけのソファに腰掛けながら、姫菜子に座る席を示しながら話しかける。
姫菜子は慎也から見て右側、旭陽の対面ソファに腰を下ろし、旭陽も姫菜子と向かい合うソファに座った。
丁度そのタイミングで、三枝がワゴンを押しながら応接間に入って来て、3人の前に好みの飲み物を置いた。
一礼した三枝が退室するのを待って、姫菜子が話し始めた。
「あのね。今日私が冴島の家で気分が悪くなったのは、ある人に会ったからなの。」
姫菜子によると、誘拐事件で無事に保護はされたが、その時とても怖い夢を見た。
それは、香住の家にある日突然、菜摘美の従姉妹を名乗る母娘が現れ慎也を丸め込んで居候を始めた。
その娘は、慎也が不在中、こっそりと香住家の先祖代々伝わる大事な物を盗んでいた。
それだけでなく、姫菜子の物や、亡くなった母 菜摘美の形見の宝石やドレスも盗んでいた。
それを見つけ咎めた姫菜子を虐めていて、酷い折檻もした。
慎也に話せば、どうなるか分かるか?と言って脅迫もされた。
またその夢の中では、姫菜子は祥太郎と婚約していた。が、その祥太郎は姫菜子の事が嫌いで、その泥棒母娘の娘と結託し、姫菜子を亡き者にしようとした。
そして姫菜子を殺した後、自分達が香住の人間に収まろうとしていた。
「そして今日私は、その母娘の娘の方を冴島の家で見たの。彼女は冴島家のメイドだったわ。」
と話をしめくくった。
たかが夢だと言ってしまえばそれまでだったが、姫菜子の夢の話はいつも本当になる事を慎也は知っている。
何故なら、今までも何度か『姫菜子の夢』が現実に起っていたからだ。
姫菜子としては、いつか過去に自身が殺された話をする時の為に、慎也には何度か「夢で見た」と言っては、香住家が被る被害について話し、『姫菜子の夢は当たる』と慎也に思わせる事に成功していた。
「そうか。そうだったんだね?だからあの時酷く魘されていたんだね。」
9歳の時の姫菜子の様子を思い出し、辛そうに眉間に皺を寄せる祥太郎。
「にわかには信じ難いが、姫菜子の夢は本当によく当たるんだよ、旭陽君。」
「…………はい。」
「姫菜子が見た夢は実際に起った事が何度かあったんだ。それから僕は、そんな姫菜子の夢を真実にしたくなくて、未然に防ぐ努力をした事で、大きな被害を被らずに済んでいるんだ。」
旭陽はなるほどといった様に頷きながら、慎也の話を聞いていた。
「旭陽君。さっきは済まなかったね。」
「いえ、大丈夫です。」
旭陽は立ち上がり慎也からの言葉に真顔で答えた。
「リッチー。来てくれてありがとう。」
旭陽を見て笑顔で近づく姫菜子には、旭陽も笑顔で答える。
あからさまな態度の違いに苦笑いする慎也。
「顔色、良くなったな。良かった。」
「うん。ありがと、リッチー。」
姫菜子の顔に手を当て姫菜子の顔色が良くなった事を確認する旭陽。
その手に頬を擦り寄せ笑顔を見せる姫菜子。
見つめ合う旭陽と姫菜子に対して、なんとも複雑な表情で見ていた慎也が、ゴホンと1つ咳払いをすると、
「姫菜。話とはなんだい?」
と1人がけのソファに腰掛けながら、姫菜子に座る席を示しながら話しかける。
姫菜子は慎也から見て右側、旭陽の対面ソファに腰を下ろし、旭陽も姫菜子と向かい合うソファに座った。
丁度そのタイミングで、三枝がワゴンを押しながら応接間に入って来て、3人の前に好みの飲み物を置いた。
一礼した三枝が退室するのを待って、姫菜子が話し始めた。
「あのね。今日私が冴島の家で気分が悪くなったのは、ある人に会ったからなの。」
姫菜子によると、誘拐事件で無事に保護はされたが、その時とても怖い夢を見た。
それは、香住の家にある日突然、菜摘美の従姉妹を名乗る母娘が現れ慎也を丸め込んで居候を始めた。
その娘は、慎也が不在中、こっそりと香住家の先祖代々伝わる大事な物を盗んでいた。
それだけでなく、姫菜子の物や、亡くなった母 菜摘美の形見の宝石やドレスも盗んでいた。
それを見つけ咎めた姫菜子を虐めていて、酷い折檻もした。
慎也に話せば、どうなるか分かるか?と言って脅迫もされた。
またその夢の中では、姫菜子は祥太郎と婚約していた。が、その祥太郎は姫菜子の事が嫌いで、その泥棒母娘の娘と結託し、姫菜子を亡き者にしようとした。
そして姫菜子を殺した後、自分達が香住の人間に収まろうとしていた。
「そして今日私は、その母娘の娘の方を冴島の家で見たの。彼女は冴島家のメイドだったわ。」
と話をしめくくった。
たかが夢だと言ってしまえばそれまでだったが、姫菜子の夢の話はいつも本当になる事を慎也は知っている。
何故なら、今までも何度か『姫菜子の夢』が現実に起っていたからだ。
姫菜子としては、いつか過去に自身が殺された話をする時の為に、慎也には何度か「夢で見た」と言っては、香住家が被る被害について話し、『姫菜子の夢は当たる』と慎也に思わせる事に成功していた。
「そうか。そうだったんだね?だからあの時酷く魘されていたんだね。」
9歳の時の姫菜子の様子を思い出し、辛そうに眉間に皺を寄せる祥太郎。
「にわかには信じ難いが、姫菜子の夢は本当によく当たるんだよ、旭陽君。」
「…………はい。」
「姫菜子が見た夢は実際に起った事が何度かあったんだ。それから僕は、そんな姫菜子の夢を真実にしたくなくて、未然に防ぐ努力をした事で、大きな被害を被らずに済んでいるんだ。」
旭陽はなるほどといった様に頷きながら、慎也の話を聞いていた。
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