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第三章 逆行~中学 高校~
第十五話 打ち明け話 2
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魘されて目が覚めた姫菜子の体は、汗でびっしょりだった。
起きた時には夢の内容は忘れてしまったが、怖かったという記憶だけはあった。
「きっと記憶とは違うタイミングで陽子に会ったから、其れが原因で見た夢に違いないわね。」
折角、この日の為に慎也に買って貰ったドレスなのに、着替える事無くそのまま寝てしまった事で皺だらけになってしまっただけで無く、汗でも汚れてしまった事を残念に思う姫菜子。
「旭陽に会う前に、お風呂に入りたいわ。」
そう思った姫菜子は、部屋のモニター付きインターフォンで執事室にいる三枝を呼び、お風呂の準備をしてもらう事と、ドレスをクリーニングに出して欲しい旨を伝え、ラフなルームウエアに着替えた。
もしかしたら、まだ旭陽が家の中に居るかも?と思い、慌ててスマホを見ると、一時間も経っていたという事実と、メッセージアプリに旭陽からのメッセージが残っている事に気がついた。
『一度帰るな。起きたら連絡くれよ。』
旭陽らしい簡素なメッセージだったが、姫菜子の心はとても温かくなった。
湯船に浸かりながら、旭陽にどう説明しようかを考える。
寝る前にも思った事だが、2度目の生を生きている事は話さない方が良いだろう。
旭陽を混乱させるだけだし、気味悪がられるのがオチだと思うからだ。
「夢で見た未来って事が良いわよね。亡くなった母様に『気をつけなさい』と言われて目が覚めたと言えば纏まるかもしれないわ。実際、イエス様とお話させて頂いた時、最後に母様の声で『頑張りなさい』って言われたんだもの。あながち嘘って事でもないと思うし…………うん!やっぱりそれしかないわね。そうしましょう。」
そう言って湯船から出ると、流石にルームウエアで旭陽に会うわけにはいかないと思った姫菜子は、着替えをしようと部屋へ戻る事にした。
階段を上がりきった所で、執筆の三枝から、慎也が帰って来ている事を聞き、執務室のドアをノックする姫菜子に、慎也は
「姫菜かな?入っておいで。」
と姫菜子の入室を促した。
「おかえりなさいパパ。さっきはごめんなさい。」
と謝る姫菜子に
「姫菜が謝る事は何一つ無いよ?だから大丈夫だ。」
と姫菜子をソファに座らせ、その対面に座った慎也は優しく姫菜子に話をした。
そこで姫菜子は、これから旭陽に話す事を、慎也にも聞いてもらおうと思った。
「パパ。お話があるの。」
「なんだい?僕のお姫様。」
「車の中で旭陽に話があるって言ったんだけど。それをパパにも聞いて貰いたいの。とっても大切な事なの。」
「分かったよ、姫菜。君の話を聞くよ。」
「ありがとう、パパ。これから旭陽を呼ぶ事になってるから、その時一緒に聞いてくれる?」
「了解した。じゃあ、旭陽君が来たら呼んでくれるかな?パパはもう少し仕事が残っているから。」
「うん、分かった。」
そう言って執務室から姫菜子が出ていって直ぐ、慎也は三枝を呼んだ。
「お呼びでございますか?旦那様。」
「あぁ。もう少ししたら白鷺旭陽君が我が家を訪れる。彼が来たら、応接間に通してくれ。」
「畏まりました。」
「それから……もしかしたら、姫菜子のこれまでの行動の理由が分かるかもしれない。悪いが君も、応接間のアレを起動して、会話を聞いてくれないか?」
「承知致しました。それでは後ほど。」
「あぁ、頼む。」
三枝は慎也の言葉を理解し、応接間に入ると、アレをセットし、自室にあるモニターで画像と音声チェックを始めた。
一方姫菜子は、旭陽に電話をかけていた。
「起きたよ、リッチー。」
「体調はどうだ?」
「うん、寝たから大丈夫だよ。ありがと。」
「彼女の心配が出来るのは彼氏の特権だろ?姫菜はもっと人に甘えれば良いんだ。」
「うん。」
「あ!でもアレだ。」
「アレって?」
「甘えても良い男は、慎也さんと俺だけだぞ。他の奴は絶対にダメだ。」
旭陽のストレートな束縛に、姫菜子の顔はたちまち赤くなる。
(電話で良かった。)
と赤面した事を見られなくて安心する姫菜子。
「じゃこれから行くからな。」
「うん、待ってるね。気をつけて。」
「あぁ。」
旭陽は電話を切る前にチュッっと1つリップ音を残して切った。
「もう!また赤くなっちゃったじゃない!」
ドレッサーに写る自身の顔を見て、恥ずかしさに身をよじる姫菜子は、
「あ!早く着替えないと。薄くメイクもしなきゃだわ。」
と我に返り、急いで支度を始めたのだった。
起きた時には夢の内容は忘れてしまったが、怖かったという記憶だけはあった。
「きっと記憶とは違うタイミングで陽子に会ったから、其れが原因で見た夢に違いないわね。」
折角、この日の為に慎也に買って貰ったドレスなのに、着替える事無くそのまま寝てしまった事で皺だらけになってしまっただけで無く、汗でも汚れてしまった事を残念に思う姫菜子。
「旭陽に会う前に、お風呂に入りたいわ。」
そう思った姫菜子は、部屋のモニター付きインターフォンで執事室にいる三枝を呼び、お風呂の準備をしてもらう事と、ドレスをクリーニングに出して欲しい旨を伝え、ラフなルームウエアに着替えた。
もしかしたら、まだ旭陽が家の中に居るかも?と思い、慌ててスマホを見ると、一時間も経っていたという事実と、メッセージアプリに旭陽からのメッセージが残っている事に気がついた。
『一度帰るな。起きたら連絡くれよ。』
旭陽らしい簡素なメッセージだったが、姫菜子の心はとても温かくなった。
湯船に浸かりながら、旭陽にどう説明しようかを考える。
寝る前にも思った事だが、2度目の生を生きている事は話さない方が良いだろう。
旭陽を混乱させるだけだし、気味悪がられるのがオチだと思うからだ。
「夢で見た未来って事が良いわよね。亡くなった母様に『気をつけなさい』と言われて目が覚めたと言えば纏まるかもしれないわ。実際、イエス様とお話させて頂いた時、最後に母様の声で『頑張りなさい』って言われたんだもの。あながち嘘って事でもないと思うし…………うん!やっぱりそれしかないわね。そうしましょう。」
そう言って湯船から出ると、流石にルームウエアで旭陽に会うわけにはいかないと思った姫菜子は、着替えをしようと部屋へ戻る事にした。
階段を上がりきった所で、執筆の三枝から、慎也が帰って来ている事を聞き、執務室のドアをノックする姫菜子に、慎也は
「姫菜かな?入っておいで。」
と姫菜子の入室を促した。
「おかえりなさいパパ。さっきはごめんなさい。」
と謝る姫菜子に
「姫菜が謝る事は何一つ無いよ?だから大丈夫だ。」
と姫菜子をソファに座らせ、その対面に座った慎也は優しく姫菜子に話をした。
そこで姫菜子は、これから旭陽に話す事を、慎也にも聞いてもらおうと思った。
「パパ。お話があるの。」
「なんだい?僕のお姫様。」
「車の中で旭陽に話があるって言ったんだけど。それをパパにも聞いて貰いたいの。とっても大切な事なの。」
「分かったよ、姫菜。君の話を聞くよ。」
「ありがとう、パパ。これから旭陽を呼ぶ事になってるから、その時一緒に聞いてくれる?」
「了解した。じゃあ、旭陽君が来たら呼んでくれるかな?パパはもう少し仕事が残っているから。」
「うん、分かった。」
そう言って執務室から姫菜子が出ていって直ぐ、慎也は三枝を呼んだ。
「お呼びでございますか?旦那様。」
「あぁ。もう少ししたら白鷺旭陽君が我が家を訪れる。彼が来たら、応接間に通してくれ。」
「畏まりました。」
「それから……もしかしたら、姫菜子のこれまでの行動の理由が分かるかもしれない。悪いが君も、応接間のアレを起動して、会話を聞いてくれないか?」
「承知致しました。それでは後ほど。」
「あぁ、頼む。」
三枝は慎也の言葉を理解し、応接間に入ると、アレをセットし、自室にあるモニターで画像と音声チェックを始めた。
一方姫菜子は、旭陽に電話をかけていた。
「起きたよ、リッチー。」
「体調はどうだ?」
「うん、寝たから大丈夫だよ。ありがと。」
「彼女の心配が出来るのは彼氏の特権だろ?姫菜はもっと人に甘えれば良いんだ。」
「うん。」
「あ!でもアレだ。」
「アレって?」
「甘えても良い男は、慎也さんと俺だけだぞ。他の奴は絶対にダメだ。」
旭陽のストレートな束縛に、姫菜子の顔はたちまち赤くなる。
(電話で良かった。)
と赤面した事を見られなくて安心する姫菜子。
「じゃこれから行くからな。」
「うん、待ってるね。気をつけて。」
「あぁ。」
旭陽は電話を切る前にチュッっと1つリップ音を残して切った。
「もう!また赤くなっちゃったじゃない!」
ドレッサーに写る自身の顔を見て、恥ずかしさに身をよじる姫菜子は、
「あ!早く着替えないと。薄くメイクもしなきゃだわ。」
と我に返り、急いで支度を始めたのだった。
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