誰にも奪わせない 〜ボロ雑巾の様に捨てられた令嬢の復讐~

Saeko

文字の大きさ
上 下
33 / 56
第三章 逆行~中学 高校~

閑話7 18歳のメイド 2

しおりを挟む
その音を聞きつけた陽子の母 美子は、陽子の足元で粉々になった鉢を見て絶句した。

「あんた、なんて事してくれたんだい!!これは愛美お嬢様が大切になさっていた鉢なんだよ?しかも、当時ご婚約者でいらした矢幡様からの贈り物で、職人が作った一点物なんだ。それをあんたは。今すぐお嬢様の所へ行って誠心誠意謝ってくるんだね!」

そう言って美子は、

「なんだい、なんだい。今朝起きてからずっとおかしいままじゃないか。悪いもんでも食べたのかね?はぁ…バカ娘が壊したんだから、母親のあたしが弁償するんだろうな。はぁ……折角次のお給金で温泉にでも行こうってあの人と話していたのに…はぁ……」

とぶつぶつ言いながら、陽子を残して立ち去っていった。

すると教育係の女が陽子の前に来て、
『お嬢様の大切な鉢を壊したと美子さんから聞きました。今すぐお嬢様に謝ってきなさい。』
と書いた紙を出してきた。

「分かったわよ!行ってくりゃいいんでしょ?」

そう言って陽子はズカズカと歩くと、愛美の前に立ち、

「大事な鉢を誤って壊してしまいました~。すいませ~ん。」

と巫山戯た謝罪をした為、愛美に左頬をぶたれてしまった。

「貴女ね!悪い事をしたと思ったのなら、それ相応の謝り方があるでしょ?ったく。美子さんは働き者でとても感じのいい方なのに、貴女は本当に使えないわね。あの鉢代は、貴女の給料から差し引くようお父様に言っておくわ!とっとと持ち場に付きなさい!」

愛美に打たれた頬を擦りながら持ち場につこうと歩きだした陽子。
(そういえば、祥太郎はどうしたのかしら?)とキョロキョロと目を動かし、祥太郎を探した。が、陽子の目に入って来たのは別の人物。
慎也に付き添われて歩く姫菜子がいた。

(あれは、姫菜子!と、慎也だわ。そうか!アタシは生き返ったんじゃなくて、アタシを可哀想に思った神様だかなんだかが『人生をやり直してみなさい』とかで、18歳に戻してくれたんだわ。)

陽子はにんまり笑うと、姫菜子の方へ向かって歩き出した。が、直ぐまた足を止めた。

姫菜子の前に愛美が洸矢と一緒に立ったからだ。

(姫菜子の前に出るのは今じゃないわね。でも見てらっしゃい、姫菜子。今回は失敗しないわ。神様がくれたこのチャンスを無駄にしないで、今度こそ全て奪ってあ・げ・る。)

陽子はまた踵を返してサンルームの方へ戻った。

頭の中で、どうやって香住の家に入り込むか?作戦をねりながら

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~

椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」 仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。 料亭『吉浪』に働いて六年。 挫折し、料理を作れなくなってしまった―― 結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。 祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて―― 初出:2024.5.10~ ※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

処理中です...