上 下
11 / 56
第二章 逆行~幼少期〜

第六話 未来を変える出逢い 1(ハワイ)

しおりを挟む
日本の地を離れ、ハワイの地に着くまでの快適な空の旅は、姫菜子の心を少しだけ自由にしたようだ。

それを証拠に、ダニエル・K・イノウエ国際空港に降り立った姫菜子は、慎也の左手を右手でギュッと握り、左手で機内持ち込み用の赤い小さなスーツケースを引きながらキョロキョロと辺りを見渡している。

一応ミッションスクールに通っている為、英語はそれなりに出来る姫菜子は、入国審査もすんなりと通ることが出来、大きな荷物を受け取ったあと、

「Aloha。Welcome to Hawaii.」

と言われレイをかけて貰った時も、少しも臆すること無く、

「Thank you. I would like to enjoy the winter vacation.」

と答えていた。
そんな姫菜子の様子を目を細めて見ている慎也は、(これで少しでも気持ちが落ち着いてくれたら良いな。)と思っていた。

「さぁ、僕のお姫様。ハワイの駐在員の白鷺君が待っててくれているから行こうか。」

「うん。早く行こう、パパ。」

そう言って姫菜子は慎也の腕を引っ張って歩きだそうとする。

慎也は笑いながら、スーツケースを乗せたカートの上に姫菜子を乗せ、

「迷子になっちゃうと困るからね。」

と言って、空港の出入り口を目指した。

スーツケースの上に乗った事で目線が上がった姫菜子は、また嬉しそうにキョロキョロと辺りを見渡していた。

空港の出入り口を出て、送迎レーンに到着すると、慎也を呼ぶ声が聞こえた。

「香住副社長。長旅お疲れ様でした。」

声に気づいた姫菜子が、その方向を指を差すと、慎也は頷きカートを押した。

「お迎えありがとう、白鷺君。」

「いえ。お荷物はこれだけですか?」

「あぁそうだよ。」

そう言いながら、姫菜子を抱き上げ地面にそっと下ろした。

「娘の姫菜子だ。姫菜子。白鷺 孝介こうすけ君だよ。」

「香住慎也の娘の、香住姫菜子です。」

姫菜子は着ていたワンピースのスカートを少しだけ持ち上げて、まるで御伽噺おとぎばなしのお姫様の様に、白鷺孝介に挨拶をした。

「可愛らしいお嬢様ですね。」

「だろ?自慢のお姫様なんだ。」

そう言って姫菜子を抱っこする慎也。

中身は22歳の姫菜子は恥ずかしさのあまり、慎也の肩に顔を隠してしまった。

「照れてしまわれましたか。本当に可愛らしいですね。さぁ、ホテルまでお送り致します。どうぞお乗り下さい。」

そう言われた慎也は、姫菜子を下に下ろし、白鷺の車に乗り込んだ。
その隙に白鷺は、スーツケースをトランクに積んでいた。

「これから行くホテルはね?パパの会社が手掛けたホテルなんだよ。だから色々無理もきくんだ。部屋からハワイの海が一望出来るし、プライベートビーチもある。勿論プールも付いてるから、姫菜もきっと気に入ると思うよ。」

「白鷺さんは、ホテルの人なの?パパ」

「いや、違うよ。白鷺君はこれから会社が手掛ける大プロジェクトの総指揮官なんだ。」

「凄い人なのね?白鷺さんは。」

「そうだね。此方には家族で駐在してるから、その家族も呼んで今度一緒に食事でもしような。」

「うん。楽しみ。」

そんな会話をしていると、トランクに荷物を積み終えた白鷺が運転席に乗り込んだ。

「それでは参りますね。」

そう言うと白鷺は、静かに車を走らせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

処理中です...