誰にも奪わせない 〜ボロ雑巾の様に捨てられた令嬢の復讐~

Saeko

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第二章 逆行~幼少期〜

閑話 1 姫菜子の葬儀

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姫菜子の遺体が漸く香住家に帰ってきた。

「姫菜子。お帰り。」

無言の帰宅となった姫菜子の身体を1回の客間に運び入れて貰うと、慎也は柩から片時も離れる事をせず、もの言わぬ姫菜子に話しかけていた。

家の者はそんな主を心配し、軽食を運び入れたり休むよう促したりしたが、娘との最期を邪魔しないでくれと言い、アルバムを捲っては、姫菜子に思い出話を語りかけていた。

そんな慎也の事を心配するかのように、比嘉美子が

「姫菜子さんが何処かへ行くことはもう無いのですから、食事くらい召し上がったら?」

と言ってしまった事で、美子は慎也の逆鱗に触れてしまった。
確かに死者が歩いて何処かに行く事は出来ないが、それは愛娘の死を悲しむ父親にかける言葉では無い。

「人が折角好意で置いてやっているのに、その言いぐさはなんだ!出ていけ!!」

と怒鳴られ、美子は転げるように居間から出ていった。

「バカね、ママは。嫌われてどうすんのよ。これじゃいつまで経っても、アタシが香住 陽子・・ ・・になれないでしょ?もっと空気読んで言葉選びなさいよ。ホント頭悪いんだから。だからパパに捨てられたんじゃないの。」

と実の娘の陽子にも言われてしまった美子は、ほぞを噛んだ。


翌日
姫菜子の葬儀は、姫菜子が洗礼を受けた教会でしめやかに行われた。

慎也は火葬されるその瞬間まで姫菜子の柩に縋り付き泣いていた。

そんな未来の父親になるはずだった慎也を見ていた祥太郎は、陽子をそっと呼び出し、隣接する公園へと向かった。

「なぁに?こんな所に呼び出すなんて。」

「ふん!何が『なぁに?』だ。姫菜子を殺したのはお前だろ?」

「よく言うわ。消して欲しいって言ったのは祥太郎の方よ?ベッドで激しく愛し合った後でね。」

「何も殺せとは言っていないだろ?」

「あらヤダ。消すイコール殺すでしょう?姫菜子がいなくなれば、俺たちで香住の財産は山分けだと、貴方は確かにそう言ったわ。それには、あの世間知らずなおバカさんには死んで貰わないとでしょう?」

「だからと言って…」

「あの女がいなくなった事で悲しむ慎也をママが慰めて後妻に入る。で、アタシが娘になって、祥太郎はアタシと結婚する。そういうシナリオだったでしょ?全く……。褒めてもらえると思っていたけど、まさか責められるとは思ってもみなかったわ。」

「兎に角だ!俺は何も知らないからな。万が一警察が俺の所に来たとしても、俺は知らぬ存ぜぬを貫き通すからそのつもりでいろ!」

「はぁ?アタシ達は共犯でしょう?」

「そんな事、俺は知らない!」

そう言ってスタスタ歩き出した祥太郎を、陽子は追い掛けた。

二人のその様子は、ずっと祥太郎を疑っていた刑事達に証拠として押さえられた。
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