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第二章 逆行~幼少期〜
第一話 目覚め
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「待って!待って母様!!」
どんなに手を伸ばしても、菜摘美には届かない。
「やだ!置いていかないで、母様。私もそっちに連れて行って~!!」
必死で手を伸ばす姫菜子。
だが、不意にその手をぎゅっと握る者がいた。
「誰?」
姫菜子はパチッと目を開けると、姫菜子の手を握っていたのは、父の慎也だった。
「と、父……様?」
「姫菜子!目が覚めたのか?姫菜子。大丈夫か?今、医者を呼ぶからな!」
ベッドで寝ていたらしい姫菜子の身体は、慎也によって上半身を抱き起こされた状態にされ、ガバッと効果音が付くくらいの勢いで抱き締められた後、顔を両手で挟まれた状態で視線を合わせさせられ、再び抱き締められてしまった。
(え?もしかしたら私、本当に生き返ったの?)
苦しいくらい強く抱き締められたまま、声をあげて泣いている父親の様子に、理由が分からないと固まってしまった姫菜子だったが、
「父様。あの…苦しいです。」
と言ったつもりが、声が掠れて上手く話せない。
「こ、えが……出、な、い。」
昨日男達に犯された時、首を絞められた。声が出にくいのは、その事による後遺症か?
と思った途端。
姫菜子の身体はガタガタと震えだし、顔は青ざめ、脂汗がタラタラと額から流れ落ちる。
姫菜子の尋常ではない様子に、慎也は姫菜子の背中をさすりながら、
「姫菜子。大丈夫だ。お前は助かったんだよ。犯人は捕まったから安心しなさい。」
「犯人?つ…かま……た?」
震えが止まらないまま、掠れる声で慎也の言った事を復唱する姫菜子。
(犯人が捕まった?って事は、陽子も捕まったの?)
「よ、う子は?」
「ようこ?それは誰の事なんだ?」
「陽子。従姉妹の……。比嘉…陽子。」
「比嘉?従姉妹?」
聞き覚えが無い名前なのか?しきりと首を傾げる慎也の様子から、嘘でも演技でも無く、本当に覚えていない 知らない名前の様だと姫菜子は思った。
(陽子が犯人じゃない?父様が陽子を知らないわけが無い。でも、父様が嘘をついている様には見えないわね。じゃぁ、犯人って?私はなんで声が出ないの?)
「怖かっただろう?すまない、姫菜子。パパがあの男を放置したからだな。だから、誘拐なんて酷い事を……。姫菜。パパの大事なお姫様。もう安心して良いからな。パパが姫を守るから。」
再びきつく抱き締められた姫菜子が、ギブアップの意味をこめ慎也の背中を叩こうとした時、
「失礼致します。旦那様、お医者様がいらっしゃいました。」
とドアをノックして執事の三枝が入ってきた。
「さ、三枝さ、ん?」
「姫菜子お嬢様。ご無事でなによりでございました。旦那様?お医者様の診察のお邪魔になりませんよう、お嬢様から少しお離れ下さい。」
三枝にピシャリと言われた慎也は、泣く泣く姫菜子から離れた。
医者から受けた病名は、PDSE(心的外傷後ストレス障害)~命の安全が脅かされるような出来事(戦争、天災、事故、犯罪、虐待など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらしているストレス障害~と後に診断されるのだが、今の時点では事件直後で1ヶ月を経過していない為、急性ストレス障害と診断された。
「今、姫菜子お嬢様に必要な事は、ストレスを少しでも軽減出来る静かな場所での療養かと思われます。心身共に健康になられるまでは、ゆっくり過ごされる事
をお奨め致します。」
「静養出来る場所か……。」
慎也は医者に言われ、所有している別荘の中から、何処であれば姫菜子が静養出来るであろうかを考えるため、部屋から出て行った。
どんなに手を伸ばしても、菜摘美には届かない。
「やだ!置いていかないで、母様。私もそっちに連れて行って~!!」
必死で手を伸ばす姫菜子。
だが、不意にその手をぎゅっと握る者がいた。
「誰?」
姫菜子はパチッと目を開けると、姫菜子の手を握っていたのは、父の慎也だった。
「と、父……様?」
「姫菜子!目が覚めたのか?姫菜子。大丈夫か?今、医者を呼ぶからな!」
ベッドで寝ていたらしい姫菜子の身体は、慎也によって上半身を抱き起こされた状態にされ、ガバッと効果音が付くくらいの勢いで抱き締められた後、顔を両手で挟まれた状態で視線を合わせさせられ、再び抱き締められてしまった。
(え?もしかしたら私、本当に生き返ったの?)
苦しいくらい強く抱き締められたまま、声をあげて泣いている父親の様子に、理由が分からないと固まってしまった姫菜子だったが、
「父様。あの…苦しいです。」
と言ったつもりが、声が掠れて上手く話せない。
「こ、えが……出、な、い。」
昨日男達に犯された時、首を絞められた。声が出にくいのは、その事による後遺症か?
と思った途端。
姫菜子の身体はガタガタと震えだし、顔は青ざめ、脂汗がタラタラと額から流れ落ちる。
姫菜子の尋常ではない様子に、慎也は姫菜子の背中をさすりながら、
「姫菜子。大丈夫だ。お前は助かったんだよ。犯人は捕まったから安心しなさい。」
「犯人?つ…かま……た?」
震えが止まらないまま、掠れる声で慎也の言った事を復唱する姫菜子。
(犯人が捕まった?って事は、陽子も捕まったの?)
「よ、う子は?」
「ようこ?それは誰の事なんだ?」
「陽子。従姉妹の……。比嘉…陽子。」
「比嘉?従姉妹?」
聞き覚えが無い名前なのか?しきりと首を傾げる慎也の様子から、嘘でも演技でも無く、本当に覚えていない 知らない名前の様だと姫菜子は思った。
(陽子が犯人じゃない?父様が陽子を知らないわけが無い。でも、父様が嘘をついている様には見えないわね。じゃぁ、犯人って?私はなんで声が出ないの?)
「怖かっただろう?すまない、姫菜子。パパがあの男を放置したからだな。だから、誘拐なんて酷い事を……。姫菜。パパの大事なお姫様。もう安心して良いからな。パパが姫を守るから。」
再びきつく抱き締められた姫菜子が、ギブアップの意味をこめ慎也の背中を叩こうとした時、
「失礼致します。旦那様、お医者様がいらっしゃいました。」
とドアをノックして執事の三枝が入ってきた。
「さ、三枝さ、ん?」
「姫菜子お嬢様。ご無事でなによりでございました。旦那様?お医者様の診察のお邪魔になりませんよう、お嬢様から少しお離れ下さい。」
三枝にピシャリと言われた慎也は、泣く泣く姫菜子から離れた。
医者から受けた病名は、PDSE(心的外傷後ストレス障害)~命の安全が脅かされるような出来事(戦争、天災、事故、犯罪、虐待など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらしているストレス障害~と後に診断されるのだが、今の時点では事件直後で1ヶ月を経過していない為、急性ストレス障害と診断された。
「今、姫菜子お嬢様に必要な事は、ストレスを少しでも軽減出来る静かな場所での療養かと思われます。心身共に健康になられるまでは、ゆっくり過ごされる事
をお奨め致します。」
「静養出来る場所か……。」
慎也は医者に言われ、所有している別荘の中から、何処であれば姫菜子が静養出来るであろうかを考えるため、部屋から出て行った。
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