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第一章 プロローグ

第二話 遺棄

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目隠しをされたまま、下着を剥ぎ取られると、男達の手や唇が身体中を這い回る。
どんなにイヤイヤをしても、かろうじて動く手足の先をばたつかせても、手首の痛みを我慢して身体を捩り拒否を表現しても、男達の手が止まる事は無かった。

姫菜子にとって、初めてがこんなに酷い仕打ちになるとは、誰が想像しただろう。

姫菜子の下で代わる代わる腰を振る男達。

生まれて初めて、男の猛りを秘部に打ち込まれた時、あまりの痛みに大声を出した為、口を布で覆われてしまった。

声さえ上げることも叶わなくなった姫菜子は、とうとう抵抗をやめてしまう。
するとどうだろう。
痛みも何も感じなくなったのだ。
男達がしきりと何か言っているが、姫菜子の耳には届かない。
そう。姫菜子は心を閉ざしてしまった。


陽子は、今は亡き姫菜子の母親の形見や、姫菜子が父親から貰った宝石等を全て奪った。
それを父や他の誰かに言いつけようとすると、陽子の母親から酷い折檻を受ける。
したがって、大人しい姫菜子は誰にも言えずにいた。

唯一幼馴染で大好きな婚約者である祥太郎といる時だけが姫菜子にとって幸せな時間だったが、陽子の話から察すると、祥太郎も陽子に取られてしまったようだ。

何かも奪われた。

きっとその内お父様も陽子の父親になるのだろう。
私のお友達も、私の宝物も、何もかも陽子の物になる。

それに、こんな辱めを受けた女なんて、誰も貰ってくれはしない。

生きる意味、生き続ける意味などないのでは?と思うようになっていく。

陽子の言うとおり、早く消して欲しい。人魚姫の様に海の泡となって、今すぐ消えてしまいたい。

そんな事を閉ざした心の殻の中で考えていた。


「ったく、面白くもなんともねぇな。」
「ホントにな。こんな女とヤったって、萎えるだけだぜ。」

無反応になった姫菜子に興味を無くした男達は、自分達の着衣を整えると、姫菜子の手足の拘束を解き、彼女を全裸のまま近くの林の中に放置した。

ぐったりと地面に横たわる姫菜子。

「やべぇ。死ぬんじゃね?コイツ」
「早く逃げねぇと、逆に俺達がヤバい。」
「そうだな。じゃぁな嬢さん。楽しかったぜ。」

そう言って、近くに停めてあった車に乗り込み、その場をあとにした。

季節は冬
夜になれば外気温は一桁になる。

遠ざかる車のエンジン音を聞きながら、姫菜子はなんとか身体を動かそうと試みるが、乱暴に扱われた身体は言う事を聞いてはくれなかった。

野犬だろうか?遠吠えする声が聞こえる。

結婚を控え、花嫁修業の一環で通い始めた料理教室を出た途端、拉致され連れてこられた。
今頃香住家では、自分がいなくて大騒ぎしている頃だろう。
ううん。もうとっくに父親からも見放されているのかもしれない。


手足の感覚が無くなり、眠気が襲って来た。
鏡が無いから分からないが、きっと身体は傷だらけだろう。
金髪に殴られた頬も腫れたまま。
解されることも無く強引に挿入された為、擦れた箇所から出血もしたようだ。
それは行為の最中に、男達が「ちっとも濡れねぇが、血のせいでなんとかなるな。」と笑いながら言っていたのを聞いたから。

まるでボロボロになった雑巾の様ね。
姫菜子はぼんやりと木々の合間から見える星を見ながらそう思った。
ボロボロになった雑巾は捨てられて当たり前。
このまま此処で寂しく消えてしまおう。

生きる事をあきらめた姫菜子はそっと眼を閉じた。
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