鳴らない電話を抱き締めて

Saeko

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第一章

決別8

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お風呂に入ってから学校の課題をやってたら、私のスマホが机の上でブブブ…と震えた(夜だから着信音は切ってあるんだ)。
ん?誰?と思って画面を見ると、そこには【 藤堂先輩 】と表示されていた。

急いでスワイプしてスピーカーにすると、優しく低い先輩の声。
「さっきぶり」
と笑って(声色がそんな感じだったから、多分)言う先輩の声に、こっちもつられて笑顔になってしまう。
「はい。さっきぶりですね。先輩は今、家ですか?」
「うん、そうだよ。シャワー浴びて部屋から(電話)してる。里緒は?」

突然。彼氏でも何でもない、ただの学校の先輩からなのに、愛称で呼ばれ、びっくりした。ドキドキと心臓が暴れ出す。

(え?ちょ……。何ドキドキしてんの?里緒菜!ちょっと愛称で名前を呼ばれただけでしょ?それに暫く恋愛はしないって決めたじゃないの。てか、そもそも先輩から何か言われたわけじゃないじゃない!)
と、自分の両頬をパンッと両手で叩いて、自身を叱咤激励すると、無理矢理平常を取り戻した。そして、コホンと1つ咳払いしてから、
「……はい。私もお風呂に入って… で今、学校の課題をやってました。」
と、答えた。

「そうか… 里緒ちゃんは真面目だね。」
と言う先輩の言葉に(先輩に焦ってんのバレなくて良かった)とホッと胸を撫で下ろした。そして、
「そんな事ないですよ。ってゆーか、明日授業で絶対当たるから、やっとかないと!って事で…」
と、先輩あいてには見えやしないのに、顔の前でパタパタと手を左右に振ってしまう。

「ハハハ。そっか、当たるからか。なら、やっとかないとだよな。」
「そうなんです!だからなんです。少しも真面目なんかじゃ…」
と言いかけてたら、
「よし!じゃオレもやろっかな。里緒ちゃんと一緒にさ。」
と言った先輩の言葉に、何故だか心臓がまた煩くなった。

そんな私の様子を知ってか知らずか、
「あ、そうだ!あのさ里緒ちゃん。カメラ通話にしないか?そしたら、(俺が)里緒ちゃんの課題も教えてあげられるしさ。」
と、先輩から突飛な提案をされたんだ。

え?カメラ通話!?
え?マジ?てか私、既にすっぴんなのに!!
すっぴんを、先輩に見られちゃうとか超恥ずいんだけど!

私自身、聡達のグループを囲む女達みたいな"校則違反ギリ”って感じの派手メイクはしないけど、だからといって身内以外の人間にすっぴんを見せられる程、容姿に自信はないのだ。

そう思った私は、どう誤魔化そうかめちゃくちゃ悩んだ。
だけど
「大丈夫。里緒ちゃんなら、すっぴんだって可愛いよ。」
とサラっと言う先輩に絶句した。電話口で思わず息を飲んでしまった。
だって、今考えてた事を見透かされた?て事を先輩に言われたんだもの。
まさかの先輩ってエスパーなの?とか本気で思った。

戸惑ってる私に先輩は、
「ほら里緒ちゃん、早く!早く片付けちゃおうぜ」
と急かされ、私は仕方なくカメラ通話に切り替えつつ、慌てて手櫛で髪を整えた。

「お!やっぱ、すっぴんも可愛いじゃん。ってか、あんまり変わらないよな。」
「やめて下さい。んもぅ、恥ずかしいから、あんま見ないで下さい。」
「照れてる里緒ちゃん。めっちゃ可愛いな。」
「も… ぅ…  先輩、からかわないで下さい。それよか課題やらないとですよ?」

私は何とか話題を変え、課題に集中す為下を向いた。
そんな先輩は、カメラの向こうでクスクス笑っていた。

カメラの向こうで先輩が見てると思うと、緊張してしまい、課題を終えるのに余計に時間がかかってしまった。




その日からというもの
先輩は、毎日私と図書室で勉強をした後、塾がある日は一緒に行き、塾がない日はそのまま家迄送ってくれるようになった。

別にカレカノの関係じゃない
ただの先輩後輩の関係

聡との恋に疲れてしまっていた私は、そんな関係が心地よかったし、心穏やかな気持ちになれていた。
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