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第二章 前世其ノ壱
第四幕 生誕祭⑷
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「アイリーン様。俺と踊って頂けますか?」
「え?私とですか?他のご令嬢「俺は貴女がいいんだ。」」
「申し訳ありません、ロイド様。大変失礼致しました。妹は今夜がデビュタントなのです。」
「そうでしたか、アンソニー殿。」
「アイリーン。ダンスのお申し出をお断りするのは不敬だよ。ロイド様は公爵家のご嫡男なんだ。喜んでお受けするのが礼儀だよ。」
お兄様に小声で教えて頂き、私は急いでロイド様にカーテシーをし失礼をお詫び致しました。
「ロイド様。大変失礼致しました。改めまして、お誘いありがとう存じます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。」
と。するとロイド様はうっとりするほど綺麗に微笑まれると私の手を取り、
「宜しくお願い致します。」
と仰って広間中央までエスコートしてくださいました。
軽やかなステップとリードで踊り始められたロイド様。
ターンをする度視界の端に写る令嬢達の羨望と嫉妬が混ざった視線に、思わず顔を伏せたくなってしまうと、
「自信を持って下さい、アイリーン様。貴方はどの令嬢よりも素敵なのですから。」
と頭の上から優しい声が聞こえました。
声の主は言わずもがな、ロイド様です。
ロイド様と私は、頭一つ半位の背丈の差があるので、見上げると首が痛くなりそうでしたが、
「大丈夫だ。俺が守るから。」
と耳元で囁かれ、耳が熱を持ったかのように熱くなりました。
その後ロイド様を見る度に目が合い微笑まれ、私はどぎまぎするやら恥ずかしいやらで、どうしたら良いのか分からなくなっていました。
結局私は、ロイド様と立て続けに三曲も踊ってしまったのです。
流石に四曲目も、となった時は
「ロイド様。これ以上は…私の足が……。」
と伝え、遠慮して頂きました。
そうです。同じ方と複数曲踊る事は、婚約者等特別な関係では無いと出来ない事になっているのですが、私はロイド様の婚約者ではないのですから、他のご令嬢の手前、これ以上のダンスは はばかられました。
「ならば、少し休憩致しましょう。」
ロイド様はそう仰って、途中給仕の人から果実水を二つ受け取り、バルコニーまで連れて行って下さいました。
「私はここで少し休憩をさせて頂きます。どうぞロイド様は、広間にお戻り下さいませ。」
とロイド様にお戻りになるよう促しましたが、
「いや…俺は……。俺はアイリーン様といた「そうだよロイ。主役がこんな所にいては、お父様の公爵もお困りになるだろう?」」
声の方を見やると、そこにはリュークアッセンドラ殿下とサラティーニ公爵令嬢がいらっしゃいました。
「リューク。それにサラ。」
「先程のダンス…。見ていたよ?武骨なロイも、アイリーン様の可憐さに参ったみたいだね。」
「本当に。ロイド様のあんな顔、初めて見ましたわ。」
『サラ』と呼ばれたこの方は確か……
私が思い出そうとしていると、
「初めまして、アイリーン様。」
と鈴のように可愛らしい声に、思わずハッとしました。
伯爵令嬢の私より高位でいらっしゃる公爵令嬢のサラティーニ様から挨拶されるだなんて、なんたる失敬でしょう。
私は慌てて、
「アイリーン=ド=シェヴェルディアでございます。お目にかかれて光栄に存じます。」
とカーテシーを致しました。
「そんなに畏まらないで、アイリーン様。ロイド様にあんな顔をさせるアイリーン様とお話してみたかったのです。」
そう仰ってロイド様をご覧になり、にこにこされているサラティーニ様。
「う、うるせぇサラ。リュークとあっち行ってろ。」
「あらあら。私ロイド様と踊りたくて参りましたのよ?それをあっちに行っていろだなんて酷すぎますわ。」
「は?サラはリュークと踊ればいいだろ。」
「酷いですわ、ロイド様。今宵の主役の殿方とダンスをと思って参りましたのに。」
サラティーニ様は扇で口元を隠され、悲しげに瞳を揺らされていらっしゃいます。
「あの…ロイド様。サラティーニ様と踊ってらして下さい。私は此方で休ませて頂きます。」
「いや…アイリーン様、俺「ありがとう存じます、アイリーン様。さ、参りましょ?ロイ。」」
サラティーニ様はロイド様を引っ張り、広間へと向かわれました。
「すまないね、アイリーン様。ロイをお借りするよ。」
「とんでもない事でございます、リュークアッセンドラ殿下。」
そう申し上げると、殿下もお二人を追って広間へ行かれました。
その時、このやり取りをじっと見ていらしたご令嬢がいらっしゃるとは、全く気づく事はありませんでした。
「え?私とですか?他のご令嬢「俺は貴女がいいんだ。」」
「申し訳ありません、ロイド様。大変失礼致しました。妹は今夜がデビュタントなのです。」
「そうでしたか、アンソニー殿。」
「アイリーン。ダンスのお申し出をお断りするのは不敬だよ。ロイド様は公爵家のご嫡男なんだ。喜んでお受けするのが礼儀だよ。」
お兄様に小声で教えて頂き、私は急いでロイド様にカーテシーをし失礼をお詫び致しました。
「ロイド様。大変失礼致しました。改めまして、お誘いありがとう存じます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。」
と。するとロイド様はうっとりするほど綺麗に微笑まれると私の手を取り、
「宜しくお願い致します。」
と仰って広間中央までエスコートしてくださいました。
軽やかなステップとリードで踊り始められたロイド様。
ターンをする度視界の端に写る令嬢達の羨望と嫉妬が混ざった視線に、思わず顔を伏せたくなってしまうと、
「自信を持って下さい、アイリーン様。貴方はどの令嬢よりも素敵なのですから。」
と頭の上から優しい声が聞こえました。
声の主は言わずもがな、ロイド様です。
ロイド様と私は、頭一つ半位の背丈の差があるので、見上げると首が痛くなりそうでしたが、
「大丈夫だ。俺が守るから。」
と耳元で囁かれ、耳が熱を持ったかのように熱くなりました。
その後ロイド様を見る度に目が合い微笑まれ、私はどぎまぎするやら恥ずかしいやらで、どうしたら良いのか分からなくなっていました。
結局私は、ロイド様と立て続けに三曲も踊ってしまったのです。
流石に四曲目も、となった時は
「ロイド様。これ以上は…私の足が……。」
と伝え、遠慮して頂きました。
そうです。同じ方と複数曲踊る事は、婚約者等特別な関係では無いと出来ない事になっているのですが、私はロイド様の婚約者ではないのですから、他のご令嬢の手前、これ以上のダンスは はばかられました。
「ならば、少し休憩致しましょう。」
ロイド様はそう仰って、途中給仕の人から果実水を二つ受け取り、バルコニーまで連れて行って下さいました。
「私はここで少し休憩をさせて頂きます。どうぞロイド様は、広間にお戻り下さいませ。」
とロイド様にお戻りになるよう促しましたが、
「いや…俺は……。俺はアイリーン様といた「そうだよロイ。主役がこんな所にいては、お父様の公爵もお困りになるだろう?」」
声の方を見やると、そこにはリュークアッセンドラ殿下とサラティーニ公爵令嬢がいらっしゃいました。
「リューク。それにサラ。」
「先程のダンス…。見ていたよ?武骨なロイも、アイリーン様の可憐さに参ったみたいだね。」
「本当に。ロイド様のあんな顔、初めて見ましたわ。」
『サラ』と呼ばれたこの方は確か……
私が思い出そうとしていると、
「初めまして、アイリーン様。」
と鈴のように可愛らしい声に、思わずハッとしました。
伯爵令嬢の私より高位でいらっしゃる公爵令嬢のサラティーニ様から挨拶されるだなんて、なんたる失敬でしょう。
私は慌てて、
「アイリーン=ド=シェヴェルディアでございます。お目にかかれて光栄に存じます。」
とカーテシーを致しました。
「そんなに畏まらないで、アイリーン様。ロイド様にあんな顔をさせるアイリーン様とお話してみたかったのです。」
そう仰ってロイド様をご覧になり、にこにこされているサラティーニ様。
「う、うるせぇサラ。リュークとあっち行ってろ。」
「あらあら。私ロイド様と踊りたくて参りましたのよ?それをあっちに行っていろだなんて酷すぎますわ。」
「は?サラはリュークと踊ればいいだろ。」
「酷いですわ、ロイド様。今宵の主役の殿方とダンスをと思って参りましたのに。」
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「あの…ロイド様。サラティーニ様と踊ってらして下さい。私は此方で休ませて頂きます。」
「いや…アイリーン様、俺「ありがとう存じます、アイリーン様。さ、参りましょ?ロイ。」」
サラティーニ様はロイド様を引っ張り、広間へと向かわれました。
「すまないね、アイリーン様。ロイをお借りするよ。」
「とんでもない事でございます、リュークアッセンドラ殿下。」
そう申し上げると、殿下もお二人を追って広間へ行かれました。
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