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第四章 今世其ノ弐
第二幕 呆れた人
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ある日の午後
リハビリに疲れきってぐったりしていた私の所に、一眞さんがやって来ました。
「お疲れ」
「お疲れ様、一眞さん」
「久しぶりだね?澤村さん。」
一眞さんの後ろから顔を出した声の主は、笑顔でベッドの近くまで来ると、ベッドサイドの椅子に座った。
「大野先輩…」
「事故、大変だったね。でも元気になって良かったよ。」
「ありがとうございます。」
(元気って何?ちっとも元気じゃない事、先輩には分からないんだ?それくらい私に興味ないんだね。)
「退院したらさ。」
「え?」
「退院したらまた、弁当作ってよ。」
空気を読まず、図々しくもそんな勝手な事を言ってきた先輩にイラッとした。
「は?先輩何言ってるんですか?」
「え?」
「先輩。結婚するんでしょ?それに…「竜二先輩。悪いがコイツ俺んだから。」」
一眞さんの爆弾発言に驚く先輩は、
「え?斉藤君?それはどういう意味かな?」
と問うが、その先輩の問を無視したまま、一眞さんが話し続け、
「それにコイツ、仕事辞めるんで。」
「え?」
そう。私は今月付けで退職する事になった。
歩けないどころか、いつ体調を崩すか分からない人間じゃ、会社に迷惑かけると思ったから。
「そうなんです。だから、お弁当は婚約者さんに作ってもらって下さい。」
「澤村さんまで。一体どうしたの?」
尚も空気を読まない先輩を威嚇する一眞さん。
「は?どうしたもこうしたも。あんたが亜衣を捨てたから、亜衣は事故に合ったんだろ~が!!それに、あんたには婚約者で秘書の女がいるじゃねぇか。これ以上亜衣を苦しめんな!」
何も言わない先輩に追い討ちをかけるように言い放つ一眞さん。
すると黙っていた先輩が徐ろに口を開いて、
「俺は、俺の為に弁当まで作って甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた澤村さんを、ずっと可愛い後輩だと思ってたよ。澤村さんだって俺の事は、先輩だって思ってたんだろ?」
「え?どういう事ですか?」
先輩の言葉に、私の頭の中にはクエスチョンマークが飛び交う。
「だってそうだろ?澤村さんは、俺の事、ずっと『大野先輩』って呼んでたじゃないか。だから俺も、可愛い後輩としか思えなくなってたんだ。まあ、事故に合ったのが俺のせいだと言われたのは残念だけどな。」
(え?私のせいなの?なんでそうなるわけ?)
先輩の言葉に混乱した私でしたが、
(でもいいや、もう先輩への気持ちは無いから。)
「確かに事故に合った時、君を助け意識がない時もずっと側にいたのは斉藤君だ。きっと澤村さんを一番大切におもっているのは、彼なんだと思うよ。」
「…………」
「斉藤君」
「あ?」
「俺の可愛い後輩をよろしくな。」
「あんたに言われなくても、亜衣は俺が幸せにする。」
「それを聞いて安心したよ。結婚式の時は是非呼んでくれ。じゃ、またね。」
先輩は、そう言って病室を出て行きました。
リハビリに疲れきってぐったりしていた私の所に、一眞さんがやって来ました。
「お疲れ」
「お疲れ様、一眞さん」
「久しぶりだね?澤村さん。」
一眞さんの後ろから顔を出した声の主は、笑顔でベッドの近くまで来ると、ベッドサイドの椅子に座った。
「大野先輩…」
「事故、大変だったね。でも元気になって良かったよ。」
「ありがとうございます。」
(元気って何?ちっとも元気じゃない事、先輩には分からないんだ?それくらい私に興味ないんだね。)
「退院したらさ。」
「え?」
「退院したらまた、弁当作ってよ。」
空気を読まず、図々しくもそんな勝手な事を言ってきた先輩にイラッとした。
「は?先輩何言ってるんですか?」
「え?」
「先輩。結婚するんでしょ?それに…「竜二先輩。悪いがコイツ俺んだから。」」
一眞さんの爆弾発言に驚く先輩は、
「え?斉藤君?それはどういう意味かな?」
と問うが、その先輩の問を無視したまま、一眞さんが話し続け、
「それにコイツ、仕事辞めるんで。」
「え?」
そう。私は今月付けで退職する事になった。
歩けないどころか、いつ体調を崩すか分からない人間じゃ、会社に迷惑かけると思ったから。
「そうなんです。だから、お弁当は婚約者さんに作ってもらって下さい。」
「澤村さんまで。一体どうしたの?」
尚も空気を読まない先輩を威嚇する一眞さん。
「は?どうしたもこうしたも。あんたが亜衣を捨てたから、亜衣は事故に合ったんだろ~が!!それに、あんたには婚約者で秘書の女がいるじゃねぇか。これ以上亜衣を苦しめんな!」
何も言わない先輩に追い討ちをかけるように言い放つ一眞さん。
すると黙っていた先輩が徐ろに口を開いて、
「俺は、俺の為に弁当まで作って甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた澤村さんを、ずっと可愛い後輩だと思ってたよ。澤村さんだって俺の事は、先輩だって思ってたんだろ?」
「え?どういう事ですか?」
先輩の言葉に、私の頭の中にはクエスチョンマークが飛び交う。
「だってそうだろ?澤村さんは、俺の事、ずっと『大野先輩』って呼んでたじゃないか。だから俺も、可愛い後輩としか思えなくなってたんだ。まあ、事故に合ったのが俺のせいだと言われたのは残念だけどな。」
(え?私のせいなの?なんでそうなるわけ?)
先輩の言葉に混乱した私でしたが、
(でもいいや、もう先輩への気持ちは無いから。)
「確かに事故に合った時、君を助け意識がない時もずっと側にいたのは斉藤君だ。きっと澤村さんを一番大切におもっているのは、彼なんだと思うよ。」
「…………」
「斉藤君」
「あ?」
「俺の可愛い後輩をよろしくな。」
「あんたに言われなくても、亜衣は俺が幸せにする。」
「それを聞いて安心したよ。結婚式の時は是非呼んでくれ。じゃ、またね。」
先輩は、そう言って病室を出て行きました。
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