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第四章 今世其ノ弐
第二幕 愛しい女(一眞side)
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亜衣が目を覚ましたと彼女の親から聞いて、俺は亜衣の部屋を訪ねた。
病室に入るなり、亜衣は俺を「ロイド様」と呼んだ。
ああ、やっぱりアイリーンだったのか。
俺は彼女を助けた時、前世が貴族で、アイリーンという女が婚約者で…といった断片的ではあったが思い出したんだ。
そしてアイリーンを愛していた事。
愛していたのに、信じきれず事故に合わせてしまった事。
アイリーンが王子を好きだった事。
俺が亜衣に初めて会ったのは入社式。
めちゃくちゃ可愛い子がいると思った俺は、直ぐにアプローチを仕掛けるも、亜衣はその後に行われた新人研修会で、教育担当だった竜二さんに一目惚れしたようだった。
確かに先輩はかっこいい。男の目から見てもだ。仕事は出来るし、イケメンで優しい。
まぁ俺は亜衣が幸せになるなら見守っていこうと。亜衣が竜二先輩と付き合う事になったと人伝に聞いた時そう思ったのだ。
それが色々間違いだったと気づいたのは、亜衣がどんどんおかしくなり、滅多にやらない大ポカを仕事でやらかしたり、目の下に隠せない程の隅を作ったりしていたからだ。
俺は、心配で心配で、何度も亜衣に声をかけるが、鬱陶しがられ相手にさえしてくれねぇ。
極めつけがあの年末の忘年会だ。
先輩が親会社へ栄転になる事。しかも婚約した事。
それ等を聞いた後の亜衣の表情が最悪だった。
亜衣はさほど強くもねぇ酒を煽り、フラフラとホテルから出ていった。
そして……
俺の目の前で車に撥ねられた亜衣。
小さな身体がまるでスローモーションの様に飛ばされていく。
俺は夢中で走った。
飛ばされた亜衣の身体が地面に叩きつけられる前に受け止めてやりたくて。
その行為が尋常ではない事くらいわかっていたが、それでも亜衣を助けたくて…
あの日、遠い昔、愛する女を助けられず失った記憶が蘇る。
「亜衣!!アイリーン!死ぬなーー。」
サイレンが聞こえる。
遠のいていく意識の中で、ボロボロになりながらも愛しい女の身体を抱き締める。
温かい
良かった……俺は、今度は……間に合ったんだな。
そう思いながら、俺は意識を手放した。
病室に入るなり、亜衣は俺を「ロイド様」と呼んだ。
ああ、やっぱりアイリーンだったのか。
俺は彼女を助けた時、前世が貴族で、アイリーンという女が婚約者で…といった断片的ではあったが思い出したんだ。
そしてアイリーンを愛していた事。
愛していたのに、信じきれず事故に合わせてしまった事。
アイリーンが王子を好きだった事。
俺が亜衣に初めて会ったのは入社式。
めちゃくちゃ可愛い子がいると思った俺は、直ぐにアプローチを仕掛けるも、亜衣はその後に行われた新人研修会で、教育担当だった竜二さんに一目惚れしたようだった。
確かに先輩はかっこいい。男の目から見てもだ。仕事は出来るし、イケメンで優しい。
まぁ俺は亜衣が幸せになるなら見守っていこうと。亜衣が竜二先輩と付き合う事になったと人伝に聞いた時そう思ったのだ。
それが色々間違いだったと気づいたのは、亜衣がどんどんおかしくなり、滅多にやらない大ポカを仕事でやらかしたり、目の下に隠せない程の隅を作ったりしていたからだ。
俺は、心配で心配で、何度も亜衣に声をかけるが、鬱陶しがられ相手にさえしてくれねぇ。
極めつけがあの年末の忘年会だ。
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それ等を聞いた後の亜衣の表情が最悪だった。
亜衣はさほど強くもねぇ酒を煽り、フラフラとホテルから出ていった。
そして……
俺の目の前で車に撥ねられた亜衣。
小さな身体がまるでスローモーションの様に飛ばされていく。
俺は夢中で走った。
飛ばされた亜衣の身体が地面に叩きつけられる前に受け止めてやりたくて。
その行為が尋常ではない事くらいわかっていたが、それでも亜衣を助けたくて…
あの日、遠い昔、愛する女を助けられず失った記憶が蘇る。
「亜衣!!アイリーン!死ぬなーー。」
サイレンが聞こえる。
遠のいていく意識の中で、ボロボロになりながらも愛しい女の身体を抱き締める。
温かい
良かった……俺は、今度は……間に合ったんだな。
そう思いながら、俺は意識を手放した。
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