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第四章 今世其ノ弐
第一幕 確信
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翌日の夜
まだ固形物を殆ど食べる事が出来ないが、重湯や赤ちゃんの離乳食の様な物を食べた後、ベッドを起こしのんびりと読書をしていた。
すると個室のドアをノックする音がし、私は「はい。」と答え、来訪者の入室を促した。
入ってきたのは……
「え?ロイド様?」
一昨日まで、ずっと見ていた夢の中の人物と面差しが似ていた気がして、思わす口走った私に、
「お疲れ、亜衣。意識戻ったんだってな。」
入ってきた男性は、私の言葉に無反応だったので、恥ずかしくなって俯いてしまった。
男性は笑いながら、
「今世は一眞だぞ。忘れたのか?アイリーン。」
「え?ア…アイリーンって……」
「前世のお前の名前。アイリーンなんとか伯爵令嬢。因みに俺の前世の名前は、ロイド•J•なんちゃらだ。」
「貴方様のお名前は、ロイド•J•ガーディランス様」
「あ~。確かそんなんだった気がするな。」
記憶を辿る様に瞼を閉じ考えているロイド様。
そうか。そうだったのね。
あれは夢ではなくて、前世の私の記憶だったのね。
「私の前世は、アイリーン•シェヴェルディアという名前でしたわ、ロイド様。」
「うろ覚えだが、そんなやつだったと思うわ。俺も、交差点にフラフラ出てくお前さんを見て、咄嗟に身体が動いてさ。その時こう、ガーッと断片的に思い出しただけだからな。」
「そうでしたか。私は意識が無かった間、ずっと夢の中で前世を生きていたかのようでしたわ。辛い事も嬉しかった事も全て覚えております。」
「あ、あぁ…………」
「確か私は…馬車に轢かれて、それで……」
「ああ。前世、お前さんは城を飛び出して馬車に轢かれちまって。城の中に担ぎ込まれたはいいが、適切な処置が出来ずで、前世の俺やお前さんのご両親に見守られて生涯を閉じた。今ぐらい医療が発達してりゃ助かったかもしんねぇな。」
「私…ロイド様に疑われて………」
「そうだったな。あの時の俺は、お前と婚約してたくせに、お前を信じてやれず…マジで悪かったわ。前世のお前はずっと王子様が好きだったからな。嫉妬から疑っちまってたみてーだ。」
「私は幼い頃からずっと、リュークアッセンドラ王太子殿下に憧れを抱いておりました。」
「ああ。」
「ですが、ロイド様の婚約者となり、私なりにロイド様に心を寄せておりましたし、愛そうと思っておりました。」
「それなのに俺が……だよな。マジすまなかったな。」
ロイド様、いや一眞さんは、そう言って頭を下げ、謝罪をしてくれた。
「でももう良いのです。前世の私はもういないのですし、今世、こうして生まれ変わり、事故にはあいましたが、ちゃんと生きているのですから。」
「あぁ、そうだな。前世は助けられなかったが、今世は助けられて良かったわ。」
「え?ロイド様…一眞さんが助けて下さったのですか?」
「ああ。」
「そうでしたか。命を救って下さりありがとうございました。」
私がロイド様、いえ一眞さんにお礼を言ったのと同時に、看護師さんが部屋に入ってこられました。
「面会時間が終わりますので、お帰り下さい。」
「ああ、もうそんな時間か。じゃ亜衣。また明日な。ゆっくり休めよ。」
「一眞さん、ありがとうございました。おやすみなさい。」
一眞さんは、後ろ手に手を振って病室を出て行った。
まだ固形物を殆ど食べる事が出来ないが、重湯や赤ちゃんの離乳食の様な物を食べた後、ベッドを起こしのんびりと読書をしていた。
すると個室のドアをノックする音がし、私は「はい。」と答え、来訪者の入室を促した。
入ってきたのは……
「え?ロイド様?」
一昨日まで、ずっと見ていた夢の中の人物と面差しが似ていた気がして、思わす口走った私に、
「お疲れ、亜衣。意識戻ったんだってな。」
入ってきた男性は、私の言葉に無反応だったので、恥ずかしくなって俯いてしまった。
男性は笑いながら、
「今世は一眞だぞ。忘れたのか?アイリーン。」
「え?ア…アイリーンって……」
「前世のお前の名前。アイリーンなんとか伯爵令嬢。因みに俺の前世の名前は、ロイド•J•なんちゃらだ。」
「貴方様のお名前は、ロイド•J•ガーディランス様」
「あ~。確かそんなんだった気がするな。」
記憶を辿る様に瞼を閉じ考えているロイド様。
そうか。そうだったのね。
あれは夢ではなくて、前世の私の記憶だったのね。
「私の前世は、アイリーン•シェヴェルディアという名前でしたわ、ロイド様。」
「うろ覚えだが、そんなやつだったと思うわ。俺も、交差点にフラフラ出てくお前さんを見て、咄嗟に身体が動いてさ。その時こう、ガーッと断片的に思い出しただけだからな。」
「そうでしたか。私は意識が無かった間、ずっと夢の中で前世を生きていたかのようでしたわ。辛い事も嬉しかった事も全て覚えております。」
「あ、あぁ…………」
「確か私は…馬車に轢かれて、それで……」
「ああ。前世、お前さんは城を飛び出して馬車に轢かれちまって。城の中に担ぎ込まれたはいいが、適切な処置が出来ずで、前世の俺やお前さんのご両親に見守られて生涯を閉じた。今ぐらい医療が発達してりゃ助かったかもしんねぇな。」
「私…ロイド様に疑われて………」
「そうだったな。あの時の俺は、お前と婚約してたくせに、お前を信じてやれず…マジで悪かったわ。前世のお前はずっと王子様が好きだったからな。嫉妬から疑っちまってたみてーだ。」
「私は幼い頃からずっと、リュークアッセンドラ王太子殿下に憧れを抱いておりました。」
「ああ。」
「ですが、ロイド様の婚約者となり、私なりにロイド様に心を寄せておりましたし、愛そうと思っておりました。」
「それなのに俺が……だよな。マジすまなかったな。」
ロイド様、いや一眞さんは、そう言って頭を下げ、謝罪をしてくれた。
「でももう良いのです。前世の私はもういないのですし、今世、こうして生まれ変わり、事故にはあいましたが、ちゃんと生きているのですから。」
「あぁ、そうだな。前世は助けられなかったが、今世は助けられて良かったわ。」
「え?ロイド様…一眞さんが助けて下さったのですか?」
「ああ。」
「そうでしたか。命を救って下さりありがとうございました。」
私がロイド様、いえ一眞さんにお礼を言ったのと同時に、看護師さんが部屋に入ってこられました。
「面会時間が終わりますので、お帰り下さい。」
「ああ、もうそんな時間か。じゃ亜衣。また明日な。ゆっくり休めよ。」
「一眞さん、ありがとうございました。おやすみなさい。」
一眞さんは、後ろ手に手を振って病室を出て行った。
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