王子様に恋をした【完結】

Saeko

文字の大きさ
上 下
55 / 66
第四章 今世其ノ弐

第一幕 確信

しおりを挟む
翌日の夜

まだ固形物を殆ど食べる事が出来ないが、重湯や赤ちゃんの離乳食の様な物を食べた後、ベッドを起こしのんびりと読書をしていた。

すると個室のドアをノックする音がし、私は「はい。」と答え、来訪者の入室を促した。

入ってきたのは……

「え?ロイド様?」

一昨日まで、ずっと見ていた夢の中の人物と面差おもざしが似ていた気がして、思わす口走った私に、

「お疲れ、亜衣。意識戻ったんだってな。」

入ってきた男性は、私の言葉に無反応だったので、恥ずかしくなって俯いてしまった。

男性は笑いながら、

「今世は一眞だぞ。忘れたのか?アイリーン。」

「え?ア…アイリーンって……」

「前世のお前の名前。アイリーンなんとか伯爵令嬢。ちなみに俺の前世の名前は、ロイド•J•なんちゃらだ。」

「貴方様のお名前は、ロイド•J•ガーディランス様」

「あ~。確かそんなんだった気がするな。」

記憶を辿たどる様にまぶたを閉じ考えているロイド様。

そうか。そうだったのね。
あれは夢ではなくて、前世の私の記憶だったのね。

「私の前世は、アイリーン•シェヴェルディアという名前でしたわ、ロイド様。」

「うろ覚えだが、そんなやつだったと思うわ。俺も、交差点にフラフラ出てくお前さんを見て、咄嗟とっさに身体が動いてさ。その時こう、ガーッと断片的だんぺんてきに思い出しただけだからな。」

「そうでしたか。私は意識が無かった間、ずっと夢の中で前世を生きていたかのようでしたわ。辛い事も嬉しかった事も全て覚えております。」

「あ、あぁ…………」

「確か私は…馬車に轢かれて、それで……」

「ああ。前世、お前さんは城を飛び出して馬車に轢かれちまって。城の中に担ぎ込まれたはいいが、適切な処置が出来ずで、前世の俺やお前さんのご両親に見守られて生涯を閉じた。今ぐらい医療が発達してりゃ助かったかもしんねぇな。」

「私…ロイド様に疑われて………」

「そうだったな。あの時の俺は、お前と婚約してたくせに、お前を信じてやれず…マジで悪かったわ。前世のお前はずっと王子様が好きだったからな。嫉妬から疑っちまってたみてーだ。」

「私は幼い頃からずっと、リュークアッセンドラ王太子殿下に憧れを抱いておりました。」

「ああ。」

「ですが、ロイド様の婚約者となり、私なりにロイド様に心を寄せておりましたし、愛そうと思っておりました。」

「それなのに俺が……だよな。マジすまなかったな。」

ロイド様、いや一眞さんは、そう言って頭を下げ、謝罪をしてくれた。

「でももう良いのです。前世の私はもういないのですし、今世、こうして生まれ変わり、事故にはあいましたが、ちゃんと生きているのですから。」

「あぁ、そうだな。前世は助けられなかったが、今世は助けられて良かったわ。」

「え?ロイド様…一眞さんが助けて下さったのですか?」

「ああ。」

「そうでしたか。命を救って下さりありがとうございました。」

私がロイド様、いえ一眞さんにお礼を言ったのと同時に、看護師さんが部屋に入ってこられました。

「面会時間が終わりますので、お帰り下さい。」

「ああ、もうそんな時間か。じゃ亜衣。また明日な。ゆっくり休めよ。」

「一眞さん、ありがとうございました。おやすみなさい。」

一眞さんは、後ろ手に手を振って病室を出て行った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

【完結】伯爵の愛は狂い咲く

白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。 実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。 だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。 仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ! そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。 両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。 「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、 その渦に巻き込んでいくのだった… アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。 異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点) 《完結しました》

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

踏み台令嬢はへこたれない

IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...