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第三章 前世其ノ弐
第四幕 疑惑⑶
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次の日、私はまた公爵家に呼び出されお屋敷まで赴きました。
「公爵夫人。アイリーンにございます。」
と公爵家のサロンまで連れてこられ、ノックに対して返された「どなた?」に応えるかたちで申し上げました。
「お入りなさい。」
「失礼致します。」
「お掛けなさい。」
夫人の正面の椅子への着席を促され、私は緊張しながら着席をし、ドレスの上で手を握りしめ視線をテーブルに落としていました。
「昨晩、伯爵をこの邸に招き事情を聞きましたわ。貴女は元々殿下に憧れを抱いていらしたのね。」
「は…はい。」
「半年程前に開催したロイドの生誕祭の時、殿下と一緒にいたロイドが、貴女と殿下とのやり取りを見て貴女を見初め、そして婚約をしたのでしたね。」
「そのとおりでございます。」
「貴族の婚姻は政略結婚が当たり前。ですがアイリーン様。いくら想いを持たない相手だったとしても、それを顔に出してはなりません。ましてやあの様な公の場で、自身の想い人が現れただけであからさまに態度に現れる等以ての外。婚約者がある身でそのような事では、ご実家が危うくなる事もあるのです。貴女のご実家は伯爵位、我が家は公爵位。力は我が家の方が上です。しかも我が公爵家は皇族出身の方もおいでの、由緒正しいお家柄。公爵閣下の采配いかんで、貴女のご実家のお取り潰しなぞ造作もない事なのです。そこの所をよくわきまえ、今後は公爵家に嫁ぐロイドの婚約者として、二度とこのような失態をせず、重々心に誓い留め置きなさい。宜しいですね?アイリーン様。」
「はい。寛大なる処置を頂き、有難う存じます。二度とこのような事のないよう心に刻みます。」
私は立ち上がり片手を胸に当てもう片方の手でスカートを持ち、夫人に敬意を表す礼を致しました。
「分かれば良いのです。これからも公爵家に嫁ぐ者として、精進なさい。」
「はい。」
「明日からまた教育を再開致します。伯爵家に戻り、これらの本を全て読み覚えていらっしゃい。よろしくて?」
そう仰って、私に分厚い本を10冊持たせました。
公爵家のサロンを退室し、馬車に乗り伯爵家に着いた私は、出迎えてくれたローラに本を半分持って貰い、自室に籠り勉強を始めたのだった。
「お嬢様。お勉強も大事ですが、王太子殿下とサラティーニ妃殿下と、それからロイド様へのお見舞いのお返事を返さないと不敬にあたるかと存じます。」
「あぁそうね。今からお返事を書くから、便箋と封筒を用意しておいて?」
「畏まりました。それでは失礼致します。」
そう言ってローラが静かに扉を閉め出ていった事を音だけで確認した私は、一心不乱に勉強を始めたのでした。
「公爵夫人。アイリーンにございます。」
と公爵家のサロンまで連れてこられ、ノックに対して返された「どなた?」に応えるかたちで申し上げました。
「お入りなさい。」
「失礼致します。」
「お掛けなさい。」
夫人の正面の椅子への着席を促され、私は緊張しながら着席をし、ドレスの上で手を握りしめ視線をテーブルに落としていました。
「昨晩、伯爵をこの邸に招き事情を聞きましたわ。貴女は元々殿下に憧れを抱いていらしたのね。」
「は…はい。」
「半年程前に開催したロイドの生誕祭の時、殿下と一緒にいたロイドが、貴女と殿下とのやり取りを見て貴女を見初め、そして婚約をしたのでしたね。」
「そのとおりでございます。」
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「はい。寛大なる処置を頂き、有難う存じます。二度とこのような事のないよう心に刻みます。」
私は立ち上がり片手を胸に当てもう片方の手でスカートを持ち、夫人に敬意を表す礼を致しました。
「分かれば良いのです。これからも公爵家に嫁ぐ者として、精進なさい。」
「はい。」
「明日からまた教育を再開致します。伯爵家に戻り、これらの本を全て読み覚えていらっしゃい。よろしくて?」
そう仰って、私に分厚い本を10冊持たせました。
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