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第三章 前世其ノ弐
第二幕 公爵家の嫁⑵
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「ご機嫌よう、公爵夫人。」
「ご機嫌よう、アイリーン様。」
「本日もよろしくお願いいたします。」
「ええ。」
ガーディランス公爵夫人はにっこりと微笑まれ、今日の淑女教育が始まりました。
語学 マナー(この時のマナーとは、食事マナーでは無く(食事マナー等令嬢であれば出来て当たり前)お茶会や夜会での振る舞い方やおもてなしの仕方等をさします。)ダンス 他貴族の家族構成や親戚関係のお名前や好み性格等、そして王家の歴史(ガーディアン公爵家は、王族の関係者が多い。公爵家が何代か前の末姫様の嫁ぎ先であったり、その逆も然り)が教育の内容なのですが、夫人は一日の教育が終わると必ず試験をなさいます。
本日覚えたのは何なのか?理解出来た事は何なのか?等を聞かれます。
そのため夫人のお話は必ず紙に記録を取り、一瞬たりとも気を抜かないようにしないと、邸に帰った時の課題が上乗せになってしまうのです。
私としましては、それは大好きなお菓子作りができなくなってしまう為、最も避けなければならない事でした。
緊張感を持って夫人からの教育を受けていると、サロンの戸をノックする音が聞こえました。
夫人が返事をすると、戸を開けて入って来られたのはロイド様とリュークアッセンドラ殿下でした。
「恐れながらリュークアッセンドラ殿下。お越しになられるのでしたら、前触れを……「申し訳ございません、母上。殿下は俺に着いて来られただけなんだ。」」
夫人のお言葉に被せて殿下が来られた理由をロイド様が説明なさいました。
殿下はニコニコされながら、私が受けた教育内容をご覧になっておられました。
「ふぅ~ん…アイリーン様は、未来の公爵夫人になる為に頑張っているんだね。」
と仰いながら私の隣りで記録した紙を覗き込まれました。
殿下との距離があまりにも近く、私は驚き顔を真っ赤にしながら俯くと、
「リューク!お前俺の婚約者に近過ぎだろうが!」
と私と殿下の間に強引に割り込んでこられました。
殿下の匂いと仄かな温もりが私から離れ、ロイド様の匂いが私を包み込みました。
そうです。ロイド様は椅子に座っている状態のままの私を、横から抱きしめ殿下から見えない様になさったのでした。
「まぁまぁ、ロイドったら。そんなに独占欲が強いと、アイリーン様に嫌われてしまいますよ?」
と夫人がコロコロと笑われ、母子のやり取りをご覧になった殿下もまた、愉快そうに笑っておられました。
「ご機嫌よう、アイリーン様。」
「本日もよろしくお願いいたします。」
「ええ。」
ガーディランス公爵夫人はにっこりと微笑まれ、今日の淑女教育が始まりました。
語学 マナー(この時のマナーとは、食事マナーでは無く(食事マナー等令嬢であれば出来て当たり前)お茶会や夜会での振る舞い方やおもてなしの仕方等をさします。)ダンス 他貴族の家族構成や親戚関係のお名前や好み性格等、そして王家の歴史(ガーディアン公爵家は、王族の関係者が多い。公爵家が何代か前の末姫様の嫁ぎ先であったり、その逆も然り)が教育の内容なのですが、夫人は一日の教育が終わると必ず試験をなさいます。
本日覚えたのは何なのか?理解出来た事は何なのか?等を聞かれます。
そのため夫人のお話は必ず紙に記録を取り、一瞬たりとも気を抜かないようにしないと、邸に帰った時の課題が上乗せになってしまうのです。
私としましては、それは大好きなお菓子作りができなくなってしまう為、最も避けなければならない事でした。
緊張感を持って夫人からの教育を受けていると、サロンの戸をノックする音が聞こえました。
夫人が返事をすると、戸を開けて入って来られたのはロイド様とリュークアッセンドラ殿下でした。
「恐れながらリュークアッセンドラ殿下。お越しになられるのでしたら、前触れを……「申し訳ございません、母上。殿下は俺に着いて来られただけなんだ。」」
夫人のお言葉に被せて殿下が来られた理由をロイド様が説明なさいました。
殿下はニコニコされながら、私が受けた教育内容をご覧になっておられました。
「ふぅ~ん…アイリーン様は、未来の公爵夫人になる為に頑張っているんだね。」
と仰いながら私の隣りで記録した紙を覗き込まれました。
殿下との距離があまりにも近く、私は驚き顔を真っ赤にしながら俯くと、
「リューク!お前俺の婚約者に近過ぎだろうが!」
と私と殿下の間に強引に割り込んでこられました。
殿下の匂いと仄かな温もりが私から離れ、ロイド様の匂いが私を包み込みました。
そうです。ロイド様は椅子に座っている状態のままの私を、横から抱きしめ殿下から見えない様になさったのでした。
「まぁまぁ、ロイドったら。そんなに独占欲が強いと、アイリーン様に嫌われてしまいますよ?」
と夫人がコロコロと笑われ、母子のやり取りをご覧になった殿下もまた、愉快そうに笑っておられました。
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