王子様に恋をした【完結】

Saeko

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第二章 前世其ノ壱

幕間④ 病室2

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「ざけんな!!」

男の怒鳴り声が聞こえる。

「お静かに!!ここは病院です!」

松葉杖をつき大声を出した男に、看護師が注意する。

「僕は彼女に会いに来たんだ。そこを通してくれないかな?」

怒鳴った男とは別の男が静かに言った。

怒鳴った男は渋々病室のドアを開けると、別の男は花束を持って静かに入って行く。

怒鳴った男はそれを苦虫を噛み潰したような顔をして見ていた。



「こんにちは。久しぶりだね。気分はどう?」

男は、ベットに横たわり何も答えない女の傍に立ち、見下ろしながら笑顔で問う。

「……」

「大変な目にあったね。でも助かって良かった。」

「……」

「また君の美味しい弁当が食べたいな。だから早く目を覚ましてくれ。」

「……」

何も答えない女を見て、悲しそうな顔をする。

女の顔と首には事故で負ったであろう傷が、無数に付いていた。
ただそれらはいずれ綺麗に消える傷らしい。


「あ!そうだ。これ。お見舞いの花。此処に置いて行くから、後で彼に生けてもらうといい。」

そう言って、ベットの隣りにある椅子の上に花束を置いた。

病室のドアの方をふと見やると、松葉杖の男がその様子を見て睨みつけていた。

「彼は相当君を好きみたいだね。」

と、苦笑する。

「……」

「また来るよ。お大事にね。」

そう言って男は静かにベットから離れて行った。


入り口でまだ尚睨みつける男に、

「彼女をよろしくな。」

そう言って病室から離れようとすると、

「二度と来ないで下さい。アイツがこんな目にあったのは、そもそもアンタのせいなんだ。これ以上アイツを苦しめんの止めてくんねぇかな。」

と、松葉杖をついたまま頭を下げる男。

そんな男に苦笑いを浮かべたまま、

「またな。」

と言って去っていった。

松葉杖の男は病室に入ると、

「煩くしてごめんな?今夜は遅くなっちまったから、花生けたら俺も行くわ。」

そう言って、花瓶と花束を持ち、器用に松葉杖をついて男は病室を出て行った。



男が帰った後、部屋には花のいい匂いがしていた。

ベットの女の指が小さく動いた事に気付いた者は誰もいなかった。



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