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第二章 前世其ノ壱
第四幕 生誕祭⑶
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「先ずはチェロ… 奏者はガーディランス公爵が令息、ロイド殿。」
「は?何?リューク、おっま!何言ってんだよ!」
ロイド様は殿下からいきなりお名前を呼ばれ、たいそう慌てておられます。
「お前と一緒に演奏して貰うのは、さっきまでの奏者の中から選ぶって、さっきお前言ったよな?」
と殿下にともすれば不敬と言われてしまってもおかしくないお言葉を返されるロイド様。
そんなロイド様のお言葉にも笑顔で対応される殿下は、本当にお優しく麗しく思いました。
そして、殿下とロイド様のお仲間に私も入れて頂きたいと願ったのでした。
そんな願いが天に通じたのでしょうか。
「ピアノ奏者は……アイリーン伯爵令嬢。お願い出来ますか?」
突然私の名前が聴こえ、私は素っ頓狂な声をあげそうになり、慌てて両手で口を押さえました。
隣にいらしたお兄様も、そんな私の様子に苦笑いをなさっておられます。
「シェヴェルディア伯爵家令嬢、アイリーン様は、いらっしゃいませか?」
「はい。ここに。」
とカーテシーをすると、私の周りにいらした方々がすっと左右に別れ、壇上までの道が出来ました。
「先程のアイリーン様の演奏はとても素晴らしかった。是非私と御一緒して頂けませんか?」
殿下からのお言葉。しかも、そんな優しい笑顔で仰られたら、お断りするなんて私に出来る筈もなく…
思わず震えそうになる声をどうにか抑えながら
「勿体なきお言葉でございます。謹んでお受け申し上げます。」
と最上級の礼をとりました。
その後殿下はフルートの奏者をエミリア様、そしてチェロの奏者にスタンレー様を選ばれ、私達は有名なバイオリンの為の協奏曲を皆様の前で演奏する事となりました。
殿下のバイオリンは、それはそれはお美しく優美な音を奏で、聴く者全てを魅了致します。
ある方は目を閉じてじっと聞き入り、またある方はご自身のパートナーの手をとり、優雅に踊っておられました。
私は、ただただ必死に鍵盤の上で指を動かし、殿下やロイド様 また他の方々の足を引っ張らない様に、間違えない様にとそればかり考えておりました。
殿下のバイオリン音だけが最後に残り、最後の音を奏で終えた瞬間…
その瞬間、広間は割れんばかりの拍手に包まれ、殿下を褒め称え、そしてロイド様を祝福する言葉が渦のように飛び交いました。
私は、そんなお2人のお背中を見つめながら、「失敗しなくて良かったぁ。」と安堵の言葉を呟いておりました。
「アイリーン様、スタンレー殿、エミリア様、そなた達の演奏 実に見事だった。心から礼を言う。ありがとう。」
と、殿下はそれはそれは爽やかな笑顔で仰い、私達の労を労って下さいました。
「私達こそ、貴重で素晴らしいお時間を頂き、感謝の念に耐えません。」
「ロイド様の演奏も、本当にお見事で、大変感銘を受けました。」
とリアハン侯爵家御息女エミリア様、リンデナル侯爵家御嫡男スタンレー様が礼をとり仰るので、私も慌てて
「御二方の仰るとおりでございます。本当に素晴らしいお時間をありがとうございました。私の拙い演奏が皆様の足を引っ張らない様にと、それだけを考えて弾かせて頂きました。」
と申し上げると、殿下はクスクスとお笑いになり、
「演奏中チラッと横目でアイリーン様を見たけど、本当に必死だったよね。可愛いかったよ。」
と仰ったので、私は顔から火が出るかと思う程顔を赤くし、思わず俯いてしまいました。
壇上は温かい笑い声に包まれ、ガーディランス公爵ご夫妻は、それを楽しげにご覧になっておられました。
「は?何?リューク、おっま!何言ってんだよ!」
ロイド様は殿下からいきなりお名前を呼ばれ、たいそう慌てておられます。
「お前と一緒に演奏して貰うのは、さっきまでの奏者の中から選ぶって、さっきお前言ったよな?」
と殿下にともすれば不敬と言われてしまってもおかしくないお言葉を返されるロイド様。
そんなロイド様のお言葉にも笑顔で対応される殿下は、本当にお優しく麗しく思いました。
そして、殿下とロイド様のお仲間に私も入れて頂きたいと願ったのでした。
そんな願いが天に通じたのでしょうか。
「ピアノ奏者は……アイリーン伯爵令嬢。お願い出来ますか?」
突然私の名前が聴こえ、私は素っ頓狂な声をあげそうになり、慌てて両手で口を押さえました。
隣にいらしたお兄様も、そんな私の様子に苦笑いをなさっておられます。
「シェヴェルディア伯爵家令嬢、アイリーン様は、いらっしゃいませか?」
「はい。ここに。」
とカーテシーをすると、私の周りにいらした方々がすっと左右に別れ、壇上までの道が出来ました。
「先程のアイリーン様の演奏はとても素晴らしかった。是非私と御一緒して頂けませんか?」
殿下からのお言葉。しかも、そんな優しい笑顔で仰られたら、お断りするなんて私に出来る筈もなく…
思わず震えそうになる声をどうにか抑えながら
「勿体なきお言葉でございます。謹んでお受け申し上げます。」
と最上級の礼をとりました。
その後殿下はフルートの奏者をエミリア様、そしてチェロの奏者にスタンレー様を選ばれ、私達は有名なバイオリンの為の協奏曲を皆様の前で演奏する事となりました。
殿下のバイオリンは、それはそれはお美しく優美な音を奏で、聴く者全てを魅了致します。
ある方は目を閉じてじっと聞き入り、またある方はご自身のパートナーの手をとり、優雅に踊っておられました。
私は、ただただ必死に鍵盤の上で指を動かし、殿下やロイド様 また他の方々の足を引っ張らない様に、間違えない様にとそればかり考えておりました。
殿下のバイオリン音だけが最後に残り、最後の音を奏で終えた瞬間…
その瞬間、広間は割れんばかりの拍手に包まれ、殿下を褒め称え、そしてロイド様を祝福する言葉が渦のように飛び交いました。
私は、そんなお2人のお背中を見つめながら、「失敗しなくて良かったぁ。」と安堵の言葉を呟いておりました。
「アイリーン様、スタンレー殿、エミリア様、そなた達の演奏 実に見事だった。心から礼を言う。ありがとう。」
と、殿下はそれはそれは爽やかな笑顔で仰い、私達の労を労って下さいました。
「私達こそ、貴重で素晴らしいお時間を頂き、感謝の念に耐えません。」
「ロイド様の演奏も、本当にお見事で、大変感銘を受けました。」
とリアハン侯爵家御息女エミリア様、リンデナル侯爵家御嫡男スタンレー様が礼をとり仰るので、私も慌てて
「御二方の仰るとおりでございます。本当に素晴らしいお時間をありがとうございました。私の拙い演奏が皆様の足を引っ張らない様にと、それだけを考えて弾かせて頂きました。」
と申し上げると、殿下はクスクスとお笑いになり、
「演奏中チラッと横目でアイリーン様を見たけど、本当に必死だったよね。可愛いかったよ。」
と仰ったので、私は顔から火が出るかと思う程顔を赤くし、思わず俯いてしまいました。
壇上は温かい笑い声に包まれ、ガーディランス公爵ご夫妻は、それを楽しげにご覧になっておられました。
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