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第二章 前世其ノ壱
第三幕 社交界デビュー⑺
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ホールに入り最初に目を奪われたのは天井の豪華なシャンデリアでしたが、私がその次にホールの装飾に目を奪われたのは、壁に飾られた素晴らしい絵画の数々でした。
ガーディランス公爵閣下の油絵の腕前はプロ並みだとの事でしたので、なるほど流石でいらっしゃるのね。と思いながら、家族とは離れ1人壁の絵画をじっと見入っておりました。
「随分と熱心に見ていらっしゃるのですね?そんなに絵がお好きでしたか?アイリーン嬢がお好きなのはお菓子作りかと思っておりましたが…。」
優しい声色に驚いて振り返ると、そこにはクスクス笑いをなさっているリュークアッセンドラ殿下と見知らぬ男性がたっておられました。
その見知らぬ男性は、年の頃なら王太子と同じ位でしょうか。
背も非常に高く、麗しいお顔をなさっておられました。
私は慌てて王太子殿下とお隣の男性に、最上級のご挨拶を致しました。
「ご無沙汰しております、リュークアッセンドラ殿下。お元気そうで何よりでございます。」
「アイリーン様も元気そうですね。良かった。」
そうニッコリお笑いになったお美しい笑顔に見とれていると、ふと視線を感じ其方を見やると、殿下のお隣の男性からじっと見つめられているのでした。
私は小首を傾げ、
「どうかなさいましたか?」
とお尋ねすると、殿下がこう仰いました。
「こちらは、ガーディランス公爵子息のロイドだよ。……ロイ、こちらはシェヴェルディア伯爵令嬢アイリーン様。」
私は背の高いロイド様を見上げ、
「ロイド様。アイリーンと申します。この度はご生誕おめでとう存じます。」
とカーテシーを致しました。が、ロイド様は直立不動のままで何もお言葉を発せられませんでした。
私は何か失礼をしてしまったのかとおろおろしておりましたが、
「ごめんね、アイリーン様。ロイは昔から無愛想なんだよ。ほら、ロイ。アイリーン様が困ってらっしゃるじゃないか。せめて挨拶くらいしたらどうだ?」
と、殿下は肘でロイド様を小突いていらっしゃいます。
ですが肝心のロイド様ご本人は、ずっと無表情で私を見下ろしていらっしゃいます。
「そうか。ロイはアイリーン様が気に入ったみたいだね。」
あっけらかんと爆弾発言をなさる殿下に、私はどう反応したらいいのかわからず、ただただ呆然としておりました。
そんな私でしたので、
「可憐だ」
と微かに呟かれたロイド様のお声は、私の耳に届く事はありませんでした。
ガーディランス公爵閣下の油絵の腕前はプロ並みだとの事でしたので、なるほど流石でいらっしゃるのね。と思いながら、家族とは離れ1人壁の絵画をじっと見入っておりました。
「随分と熱心に見ていらっしゃるのですね?そんなに絵がお好きでしたか?アイリーン嬢がお好きなのはお菓子作りかと思っておりましたが…。」
優しい声色に驚いて振り返ると、そこにはクスクス笑いをなさっているリュークアッセンドラ殿下と見知らぬ男性がたっておられました。
その見知らぬ男性は、年の頃なら王太子と同じ位でしょうか。
背も非常に高く、麗しいお顔をなさっておられました。
私は慌てて王太子殿下とお隣の男性に、最上級のご挨拶を致しました。
「ご無沙汰しております、リュークアッセンドラ殿下。お元気そうで何よりでございます。」
「アイリーン様も元気そうですね。良かった。」
そうニッコリお笑いになったお美しい笑顔に見とれていると、ふと視線を感じ其方を見やると、殿下のお隣の男性からじっと見つめられているのでした。
私は小首を傾げ、
「どうかなさいましたか?」
とお尋ねすると、殿下がこう仰いました。
「こちらは、ガーディランス公爵子息のロイドだよ。……ロイ、こちらはシェヴェルディア伯爵令嬢アイリーン様。」
私は背の高いロイド様を見上げ、
「ロイド様。アイリーンと申します。この度はご生誕おめでとう存じます。」
とカーテシーを致しました。が、ロイド様は直立不動のままで何もお言葉を発せられませんでした。
私は何か失礼をしてしまったのかとおろおろしておりましたが、
「ごめんね、アイリーン様。ロイは昔から無愛想なんだよ。ほら、ロイ。アイリーン様が困ってらっしゃるじゃないか。せめて挨拶くらいしたらどうだ?」
と、殿下は肘でロイド様を小突いていらっしゃいます。
ですが肝心のロイド様ご本人は、ずっと無表情で私を見下ろしていらっしゃいます。
「そうか。ロイはアイリーン様が気に入ったみたいだね。」
あっけらかんと爆弾発言をなさる殿下に、私はどう反応したらいいのかわからず、ただただ呆然としておりました。
そんな私でしたので、
「可憐だ」
と微かに呟かれたロイド様のお声は、私の耳に届く事はありませんでした。
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