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第一章 今世其ノ壱
第四幕 事故⑴
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今日は、年内最後の出勤日であり、忘年会でもあった。
『今日は年内最後の出勤日です。終わったら忘年会だぁ!飲むぞ~w』
『早く仕事終わらせよっと』
仕事をしながらスマホを片手に呟き、笑顔を見せている私を怪訝な顔で見ている人がいるなんて全く気付かないほど、私は楽しかった。
まさかその数時間後、奈落の底に叩き落とされる様な事になる事なんて、夢にも思っていなかった。
仕事が終わり、会社が借り切ったホテルに移動した。
車で通勤されている社員の為に、部屋まで借りてくれているのだ。
本当にいい会社だなぁと思いながら、私はまたそれを少し盛って呟いていた。
社長の挨拶が始まると、ザワザワしていた社員は私語を止め、社長の言葉を頷きながら聞いていた。
そして……
「ここで大変重大な話がある。竜二君!」
竜二さんが社長に呼ばれると、視線は自ずと竜二さんがいる方に向けられた。
竜二さんが徐ろに壇上の社長の横に並ぶと、低くよく響く声で
「この度は私的な話ではありますが、お時間を頂いたので、お話させて頂きます。私、大野竜二は、本日をもちましてグループ会社でもある弊社を退職し、新年より父が経営致します会社へ移動、会社役員に就任する事になりました。引き継ぎにつきましては、既に後輩の堤君にしており完了しております。顧客の皆様にはご迷惑をおかけする事はないのでご安心下さい。」
朗々と淡々と事実を壇上で話す竜二さん。
私は、何がなんだかわからず、ただボーっと壇上の竜二さんを見ていた。
「最後になりますが、皆様 6年間本当にお世話になりました。これから私は、グループの発展の為に、私の秘書となる婚約者と共に力を尽くして参りますので、宜しくお願い申し上げます。」
割れんばかりの拍手と、女性社員からの悲鳴の様な声が会場を包んだ。
私は倒れそうになる体をどうにか真っ直ぐに保ち、震える手でグラスワインを一気に飲み干した。
会場に来るまでは、家で再現出来る料理があったらいいなぁとか竜二さんに久しぶりに会えるから嬉しいなぁとか…本当に楽しみにしていたのに……
目の前に突き付けられた現実は、私の精神を壊すのには十分過ぎるものだったのだ。
『今日は年内最後の出勤日です。終わったら忘年会だぁ!飲むぞ~w』
『早く仕事終わらせよっと』
仕事をしながらスマホを片手に呟き、笑顔を見せている私を怪訝な顔で見ている人がいるなんて全く気付かないほど、私は楽しかった。
まさかその数時間後、奈落の底に叩き落とされる様な事になる事なんて、夢にも思っていなかった。
仕事が終わり、会社が借り切ったホテルに移動した。
車で通勤されている社員の為に、部屋まで借りてくれているのだ。
本当にいい会社だなぁと思いながら、私はまたそれを少し盛って呟いていた。
社長の挨拶が始まると、ザワザワしていた社員は私語を止め、社長の言葉を頷きながら聞いていた。
そして……
「ここで大変重大な話がある。竜二君!」
竜二さんが社長に呼ばれると、視線は自ずと竜二さんがいる方に向けられた。
竜二さんが徐ろに壇上の社長の横に並ぶと、低くよく響く声で
「この度は私的な話ではありますが、お時間を頂いたので、お話させて頂きます。私、大野竜二は、本日をもちましてグループ会社でもある弊社を退職し、新年より父が経営致します会社へ移動、会社役員に就任する事になりました。引き継ぎにつきましては、既に後輩の堤君にしており完了しております。顧客の皆様にはご迷惑をおかけする事はないのでご安心下さい。」
朗々と淡々と事実を壇上で話す竜二さん。
私は、何がなんだかわからず、ただボーっと壇上の竜二さんを見ていた。
「最後になりますが、皆様 6年間本当にお世話になりました。これから私は、グループの発展の為に、私の秘書となる婚約者と共に力を尽くして参りますので、宜しくお願い申し上げます。」
割れんばかりの拍手と、女性社員からの悲鳴の様な声が会場を包んだ。
私は倒れそうになる体をどうにか真っ直ぐに保ち、震える手でグラスワインを一気に飲み干した。
会場に来るまでは、家で再現出来る料理があったらいいなぁとか竜二さんに久しぶりに会えるから嬉しいなぁとか…本当に楽しみにしていたのに……
目の前に突き付けられた現実は、私の精神を壊すのには十分過ぎるものだったのだ。
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