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第7章 番外編(ルミエール王国奪還 〜準備編)
母は強し!
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キラメイのパパ鳥が急に飛ぶ速度を上げた理由は、彼の住処に着いた時に分かりました。
パパ鳥は、切り立つ崖の様な険しい山の中腹にある巣と思わしき場所に降り立つと、その大きな翼を畳み、パパ鳥より少し小さな鳥にそっと近づいていきました。
「ね?青龍。あれって、昨日のママ鳥さんよね?どうかしたのかしら?」
とパパ鳥を追って来た私は、青龍に乗ったままの状態で、眼下の様子を見守っていた。
するとパパ鳥はママ鳥と話をしているみたいに見えたのだけれど、突然私に思念で話しかけてきた。
『聖女殿。誠にあいすまぬが、ちとおりてきては下さらんか。』
と相変わらず変な言葉遣いで、私に青龍から降下するよう要求してきた。
「分かったわ、パパ鳥さん。ちょっと待っててね」
と言って、私は自分の周りに結界を球体状に張り、ふわふわと浮きながら巣に降り立った。
するとそこには、ママ鳥の羽に守られる様にして身体を寄せあっている3羽の雛鳥がいたんだ。
しかも全ての雛鳥の身体と、翼に隠れていて上空からじゃ分からなかったママ鳥の腹部には大きな傷があり、かなり出血していた。
『聖女殿。某が聖女殿が御座す場所に居た際、我が妻は子供達の餌を取りに行っていた。どうやら親鳥がいぬその隙を狙って、ワイバーンが子供達を襲いに来たらしいのだ。』
「え?ワイバーンに襲われたの?」
『その様だ。妻は子供達の危険信号を感知し、慌てて巣に戻ったのだが、子供達を連れ去ろうとしている一体のワイバーンがいた。妻はワイバーンから子供達を守ろうとし、怪我を負ってしまった。聖女殿。誠にあいすまぬが、妻を診て治してやってはくれぬだろうか。』
「分かったわ。先ずは雛鳥達からでも良い?ワイバーンの足の爪はとても鋭いから、体毛で見えない箇所に怪我があるかもしれないから。」
『聖女殿のご判断にお任せ申す。』
と人間の様に頭を下げるパパ鳥に「大丈夫よ」と告げ、雛鳥 ┄ と言っても、私の身長と同じくらいの背丈があるんだけど ┄ の身体を1羽ずつ診ていった。
幸いな事に3羽の雛達はいずれも軽傷だった。
治癒魔法をかけずとも、自然治癒力で治ってしまう程度の怪我だったのだ。
きっとママ鳥が戻ってくる迄の時間が早かったせいだろう。
「チビちゃん達は大丈夫だったわ。でも、念の為に、聖水をかけておいたから、直ぐに治るわよ。」
と言うと、パパ鳥が「かたじけない」と言って頭を下げた。
「それじゃ、ママ鳥さん?今度は貴女のお腹を見せて貰える?」
と言うが、ママ鳥さんには私の言葉が理解出来ないらしく、お腹を隠そうとする。
彼女の行為は至極当然の事だ。
野性動物は、自分の弱ってる姿を見せるものじゃないもの。
でもこのままじゃいつまで経っても治癒してあげられない。
そこで私はパパ鳥に頼んで、ママ鳥に話して貰う事にした。
私には分からない鳥語(?)でやり取りをしていたキラメイ夫妻は、軈て会話を止め、ママ鳥がおずおずとお腹を見せてくれた。
「ありがとう、ママ鳥さん。ちょっと見せてね」
と言って、パパ鳥に奥さんのお腹の傷がある高さまで彼の羽に乗って上げてもらった。
そして、彼女の血で固まってしまっている羽毛をかき分け、肌の傷の具合を診てみたの。
そこにはワイバーンから付けられたと思う、巾30cm 深さ5cm位の深い引っ掻き傷が3本袈裟懸けに入っていたんだ。
「これは酷いわ。ちょっと聖水をかけて傷口を洗うわね。パパ鳥さん?ママ鳥さんに、染みるかもしれないけど頑張って堪えて?って言って貰える?」
とパパ鳥を見上げてそう言えば、『合点承知』と言ってママ鳥に事情を話していた。
私はその間に、異空間鞄から聖水を数本取り出しておき、治療の準備をしておいた。
『聖女殿。妻は承知した。』
というパパ鳥の言葉を受け、私は彼女の傷口に聖水をかける。
流石に染みたのか?ママ鳥は歯を食いしばれないので、嘴を歪めている。
私は「ママ頑張れ!」と励ましながら、傷口に出来るだけ触れない様に洗っていく。
そして、傷口に入り込んでいた彼女の羽毛を取り去り、改めてそこに治癒魔法をかけた。
私の魔法の熱さに彼女が身体を引きそうになるが、パパがそれを止めてくれた。
「パパ、ありがとう」
とお礼を言いながら、ラストスパートの魔法をかけていった。
「ふぅ~」
額に薄ら滲んだ汗を拭いて、ママ鳥の身体を撫でてやる。
「終わったよ、ママ鳥さん。よく頑張ったね」
と言ってやると、ありがとうと言いたかったのか、彼女は大きな羽で私をそっと覆ってくれた。
優しいお母さんだと思った。
私はそんな彼女とその子供達を守る為に、パパ鳥にルミエール王国潜入をして貰っている間の事で、とある提案を考えていたんだ。
パパ鳥は、切り立つ崖の様な険しい山の中腹にある巣と思わしき場所に降り立つと、その大きな翼を畳み、パパ鳥より少し小さな鳥にそっと近づいていきました。
「ね?青龍。あれって、昨日のママ鳥さんよね?どうかしたのかしら?」
とパパ鳥を追って来た私は、青龍に乗ったままの状態で、眼下の様子を見守っていた。
するとパパ鳥はママ鳥と話をしているみたいに見えたのだけれど、突然私に思念で話しかけてきた。
『聖女殿。誠にあいすまぬが、ちとおりてきては下さらんか。』
と相変わらず変な言葉遣いで、私に青龍から降下するよう要求してきた。
「分かったわ、パパ鳥さん。ちょっと待っててね」
と言って、私は自分の周りに結界を球体状に張り、ふわふわと浮きながら巣に降り立った。
するとそこには、ママ鳥の羽に守られる様にして身体を寄せあっている3羽の雛鳥がいたんだ。
しかも全ての雛鳥の身体と、翼に隠れていて上空からじゃ分からなかったママ鳥の腹部には大きな傷があり、かなり出血していた。
『聖女殿。某が聖女殿が御座す場所に居た際、我が妻は子供達の餌を取りに行っていた。どうやら親鳥がいぬその隙を狙って、ワイバーンが子供達を襲いに来たらしいのだ。』
「え?ワイバーンに襲われたの?」
『その様だ。妻は子供達の危険信号を感知し、慌てて巣に戻ったのだが、子供達を連れ去ろうとしている一体のワイバーンがいた。妻はワイバーンから子供達を守ろうとし、怪我を負ってしまった。聖女殿。誠にあいすまぬが、妻を診て治してやってはくれぬだろうか。』
「分かったわ。先ずは雛鳥達からでも良い?ワイバーンの足の爪はとても鋭いから、体毛で見えない箇所に怪我があるかもしれないから。」
『聖女殿のご判断にお任せ申す。』
と人間の様に頭を下げるパパ鳥に「大丈夫よ」と告げ、雛鳥 ┄ と言っても、私の身長と同じくらいの背丈があるんだけど ┄ の身体を1羽ずつ診ていった。
幸いな事に3羽の雛達はいずれも軽傷だった。
治癒魔法をかけずとも、自然治癒力で治ってしまう程度の怪我だったのだ。
きっとママ鳥が戻ってくる迄の時間が早かったせいだろう。
「チビちゃん達は大丈夫だったわ。でも、念の為に、聖水をかけておいたから、直ぐに治るわよ。」
と言うと、パパ鳥が「かたじけない」と言って頭を下げた。
「それじゃ、ママ鳥さん?今度は貴女のお腹を見せて貰える?」
と言うが、ママ鳥さんには私の言葉が理解出来ないらしく、お腹を隠そうとする。
彼女の行為は至極当然の事だ。
野性動物は、自分の弱ってる姿を見せるものじゃないもの。
でもこのままじゃいつまで経っても治癒してあげられない。
そこで私はパパ鳥に頼んで、ママ鳥に話して貰う事にした。
私には分からない鳥語(?)でやり取りをしていたキラメイ夫妻は、軈て会話を止め、ママ鳥がおずおずとお腹を見せてくれた。
「ありがとう、ママ鳥さん。ちょっと見せてね」
と言って、パパ鳥に奥さんのお腹の傷がある高さまで彼の羽に乗って上げてもらった。
そして、彼女の血で固まってしまっている羽毛をかき分け、肌の傷の具合を診てみたの。
そこにはワイバーンから付けられたと思う、巾30cm 深さ5cm位の深い引っ掻き傷が3本袈裟懸けに入っていたんだ。
「これは酷いわ。ちょっと聖水をかけて傷口を洗うわね。パパ鳥さん?ママ鳥さんに、染みるかもしれないけど頑張って堪えて?って言って貰える?」
とパパ鳥を見上げてそう言えば、『合点承知』と言ってママ鳥に事情を話していた。
私はその間に、異空間鞄から聖水を数本取り出しておき、治療の準備をしておいた。
『聖女殿。妻は承知した。』
というパパ鳥の言葉を受け、私は彼女の傷口に聖水をかける。
流石に染みたのか?ママ鳥は歯を食いしばれないので、嘴を歪めている。
私は「ママ頑張れ!」と励ましながら、傷口に出来るだけ触れない様に洗っていく。
そして、傷口に入り込んでいた彼女の羽毛を取り去り、改めてそこに治癒魔法をかけた。
私の魔法の熱さに彼女が身体を引きそうになるが、パパがそれを止めてくれた。
「パパ、ありがとう」
とお礼を言いながら、ラストスパートの魔法をかけていった。
「ふぅ~」
額に薄ら滲んだ汗を拭いて、ママ鳥の身体を撫でてやる。
「終わったよ、ママ鳥さん。よく頑張ったね」
と言ってやると、ありがとうと言いたかったのか、彼女は大きな羽で私をそっと覆ってくれた。
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