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第7章 番外編(ルミエール王国奪還 〜準備編)
施して恩を報いず、施されて恩を忘れず 1
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マイルスさんに渡した瓶の中身は"聖水”だった。
『これは再生魔法を施した聖水です。お化粧をしっかりと落としたら、これを顔に塗ってみてください。』
と使用上の注意を書いた紙も同時に渡すと、
「ありがとうございます、聖女様。」
と瓶を抱えた(勿論、蔦は解きました)マイルスさんはそう言って何度も頭を下げたの。だけど
「聖女様。大変申し訳ありませんが、キラメイが持っている鞄しか、この大事な聖水を入れられません。どうかキラメイからあの鞄を取り返して下さいませんか?」
と懇願され、私は青龍にキラメイを説得してもらうよう話してみた。
『お易い御用だ、我が主』
とこれまた思念で答えてくれた青龍は、私の首から離れキラメイの母鳥の方へ飛んでいく。
それを見たマイルスさんはびっくりしている様だったけど、私は見ないふりをして、青龍からの思念を待ったの。
数分後
『我が主よ。母鳥が了承した。』
という青龍の言葉を聞いた私は、キラメイに近づいて行き、マイルスさんの鞄の中から雛鳥を取り出した。
そして、母鳥に返す前に怪我等が無いか?を確認し、
「人間の勝手な振る舞いで、貴女の大切な子供を攫ってごめんなさいね。」
と言うと、そっと母鳥の羽の中に返してあげたの。
母鳥はとても愛おしそうに我が子を抱くと、そっと雛鳥を脚で掴んで大空へと舞い上がった。そして私の頭上で3回旋回すると、森の奥の方へと飛び去っていったの。
私はそんな彼女達を見送り、残された鞄をふと見ると、それはなかなかな攻防を繰り広げられたと思えるくらいの状態で、最早そこに物を入れる事が出来るとは思えなかった。
仕方なく私は、異空間鞄から丈夫な草で編んだ肩紐付きの鞄(リュックサック的なやつね)をマイルスさんにあげたの。
そして鞄に聖水と、元々彼が持っていた鞄の中身を入れさせ、
「いいこと?お屋敷に帰ったらご主人様にこう言うのよ?『森で出会った聖女様からキラメイの血よりももっと効き目がある聖水を頂きました。使い方はこの紙のとおりです。もし聖水を使い切ってしまっても、カルディール伯爵領へ遣いを寄越して下されば、聖水を安価でお売りしますよ。』言ってましたってね。どう?覚えられたかしら?」
「はい!」
「そう。それは良かったわ。あ、そうだ!お屋敷に帰る道中、悪い事が起こらないように、マイルスさんにはこれをあげるわね。」
と言って、彼の左手首にミサンガを結わえてあげた。
マイルスさんから
「この組紐みたいなものは?」
と聞かれ、
「女神イズール様の御加護付きの"ミサンガ”という物よ。まぁ簡単に言うと、お守りみたいなものね。」
と答え、
「そんな事より。早くこの森から出ていかないと、1番近くの街に着く頃には真っ暗になっちゃうわよ?貴方、野営の支度とかしてないのでしょ?」
と聞くと、マイルスさんはハッとした表情を浮かべた後、直ぐに頭を下げ、立ち去って行った。
「さぁて!私達も早く目標達成しないと、日が暮れちゃうわね。何処かに怪我した烏ちゃんはいませんかぁ。飛べなくなった蝙蝠ちゃんはいませんかぁ。」
『我が主よ。貴女は何を言っているんだ?』
再び私の首に戻って来た青龍が呆れ果てたといわんばかりの口調でいうのを聞き流し、私はまた、森の中をあちこちさまよった。
「あ~あ。きょうは収穫なし…かぁ。仕方ない。今夜はここでキャンプだね、青龍。日が落ちる前にちゃちゃっと野営の支度でもしよっか。」
私は魔獣探しを早々に諦め、少し開けた場所にテントを張ると、其れを覆う様にドーム形の結界を張った。
しっかりと結界が張られてるから魔獣に襲われる事は無いだろうけど、一応キャンプの雰囲気出したくて、焚き火をし夕食を作って食べたの。
そしてその夜
私は満天の星空の下
今もまだ冒険者達からご贔屓にされている寝袋に包まれぐっすり眠ったの。
まさか翌朝
想像もしてないくらい驚く事がおきるとも思わずにね。
『これは再生魔法を施した聖水です。お化粧をしっかりと落としたら、これを顔に塗ってみてください。』
と使用上の注意を書いた紙も同時に渡すと、
「ありがとうございます、聖女様。」
と瓶を抱えた(勿論、蔦は解きました)マイルスさんはそう言って何度も頭を下げたの。だけど
「聖女様。大変申し訳ありませんが、キラメイが持っている鞄しか、この大事な聖水を入れられません。どうかキラメイからあの鞄を取り返して下さいませんか?」
と懇願され、私は青龍にキラメイを説得してもらうよう話してみた。
『お易い御用だ、我が主』
とこれまた思念で答えてくれた青龍は、私の首から離れキラメイの母鳥の方へ飛んでいく。
それを見たマイルスさんはびっくりしている様だったけど、私は見ないふりをして、青龍からの思念を待ったの。
数分後
『我が主よ。母鳥が了承した。』
という青龍の言葉を聞いた私は、キラメイに近づいて行き、マイルスさんの鞄の中から雛鳥を取り出した。
そして、母鳥に返す前に怪我等が無いか?を確認し、
「人間の勝手な振る舞いで、貴女の大切な子供を攫ってごめんなさいね。」
と言うと、そっと母鳥の羽の中に返してあげたの。
母鳥はとても愛おしそうに我が子を抱くと、そっと雛鳥を脚で掴んで大空へと舞い上がった。そして私の頭上で3回旋回すると、森の奥の方へと飛び去っていったの。
私はそんな彼女達を見送り、残された鞄をふと見ると、それはなかなかな攻防を繰り広げられたと思えるくらいの状態で、最早そこに物を入れる事が出来るとは思えなかった。
仕方なく私は、異空間鞄から丈夫な草で編んだ肩紐付きの鞄(リュックサック的なやつね)をマイルスさんにあげたの。
そして鞄に聖水と、元々彼が持っていた鞄の中身を入れさせ、
「いいこと?お屋敷に帰ったらご主人様にこう言うのよ?『森で出会った聖女様からキラメイの血よりももっと効き目がある聖水を頂きました。使い方はこの紙のとおりです。もし聖水を使い切ってしまっても、カルディール伯爵領へ遣いを寄越して下されば、聖水を安価でお売りしますよ。』言ってましたってね。どう?覚えられたかしら?」
「はい!」
「そう。それは良かったわ。あ、そうだ!お屋敷に帰る道中、悪い事が起こらないように、マイルスさんにはこれをあげるわね。」
と言って、彼の左手首にミサンガを結わえてあげた。
マイルスさんから
「この組紐みたいなものは?」
と聞かれ、
「女神イズール様の御加護付きの"ミサンガ”という物よ。まぁ簡単に言うと、お守りみたいなものね。」
と答え、
「そんな事より。早くこの森から出ていかないと、1番近くの街に着く頃には真っ暗になっちゃうわよ?貴方、野営の支度とかしてないのでしょ?」
と聞くと、マイルスさんはハッとした表情を浮かべた後、直ぐに頭を下げ、立ち去って行った。
「さぁて!私達も早く目標達成しないと、日が暮れちゃうわね。何処かに怪我した烏ちゃんはいませんかぁ。飛べなくなった蝙蝠ちゃんはいませんかぁ。」
『我が主よ。貴女は何を言っているんだ?』
再び私の首に戻って来た青龍が呆れ果てたといわんばかりの口調でいうのを聞き流し、私はまた、森の中をあちこちさまよった。
「あ~あ。きょうは収穫なし…かぁ。仕方ない。今夜はここでキャンプだね、青龍。日が落ちる前にちゃちゃっと野営の支度でもしよっか。」
私は魔獣探しを早々に諦め、少し開けた場所にテントを張ると、其れを覆う様にドーム形の結界を張った。
しっかりと結界が張られてるから魔獣に襲われる事は無いだろうけど、一応キャンプの雰囲気出したくて、焚き火をし夕食を作って食べたの。
そしてその夜
私は満天の星空の下
今もまだ冒険者達からご贔屓にされている寝袋に包まれぐっすり眠ったの。
まさか翌朝
想像もしてないくらい驚く事がおきるとも思わずにね。
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