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第6章 番外編(聖獣ユニコーンとの出会い)
魔族の手に堕ちた地
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「魔族とはまた物騒な話ね」
母上は、森の泉の奥にある森の中で、ターシャが見つけた有翼の聖獣ユニコーン様から、ユニコーンを傷つけた相手について聞いた事に眉をひそめられた。
『我は魔族に操られてしまった人間達が住まう地の聖獣であった。我はその地に加護を与え、その地の町の娘と契約をしたのだ。』
「「…………」」
『ある日我は聖獣王に呼ばれ、その地を1週間程離れる事となった。その間に魔族が侵攻し、長やその配下の者達を支配し操ってしまった。』
「え?じゃあその娘さんも?」
という母上の言葉にユニコーン様は、
『いや、娘は……操られているふりをしていた。』
「操られているふり?それはどういう事ですか?」
訳が分からない私がそう尋ねると、
『その地には、我が留守の間に伝令を頼んだ木菟がおるのだが、その者から魔族の侵攻を受けたと聞いた我は、急いでその地に戻ったのだ。すると、我が住まう聖なる森と呼ばれる場に娘が待っておった。』
「「…………」」
『娘は言った。「聖獣様!早くお逃げ下さい!この地は魔族によって乗っ取られてしまいました。魔族は聖獣様を亡きものにしようとしています!父上も母上も、忠実なる家臣達でさえ、魔族に心を奪われ、今や聖獣様を敵とみなしております。」と』
「その様子だと、その娘さんはまだ正気だったのね?で、それからどうしたの?」
『娘は我との契約を解除すると……』
「解除……何故その方はそんな事を……」
契約を解除すると言ったその人の真意が分からずにいた私に、
「ユニコーンを守るために、その子は苦渋の選択をしたの。」
と母上はそう仰った。
「聖獣であるユニコーンとの契約結んでいるままだと、ユニコーンはその地に縛られてしまう事になるのよ。」
「そうなのですか?母上」
『そうだ。我ら聖獣は、契約者と常に共にある。契約者がいる限り、その地に加護を与え続けるのだ。』
私の問いに、母上ではなくユニコーン様が答えて下さった。
「だから彼女はユニコーンとの契約を解除して、貴方を逃がしたのね?でも何故あんなに傷だらけだったの?呪いはいつかけられてたわけ?」
と、立て続けにユニコーン様に質問をぶつける母上。
『娘が、我との契約解除すると宣言したまさにその時。長率いる人間達が我と娘がいる場に到着した。長達人間は、我に向かって矢を放とうとした。娘は我を庇おうとした為、我は娘を蹴り飛ばしたのだ。それを見て怒った長達は、走り出した我に向かって矢を放った。何本も何本も飛んでくる矢を何とか振り払い、躱しながら逃げるも、何本かは我の身体に刺さった。その鏃には毒が塗られておったのだろう。人間が作った毒であれば我は聖獣故、無効化する事も出来るのだが、魔族の毒を無効化する事は出来ぬ。体内に入った毒は、次第に我の身体を侵食していった。多分であるが、聖女マコのいう呪いも、その鏃に込められていたのやも知れぬ。』
とユニコーン様はその大きな瞳を悲しそうに揺らしながらそう仰った。
「そうだったの……。で、カルディール伯爵領に辿り着いたってわけね。頑張ったのね、貴方」
そう言ってユニコーン様の身体をポンポンと叩かれる母上に、
『あぁ。この地は青龍殿が加護を与えおる聖女が住まう地と聞いておったのでな。』
と仰るユニコーンに、
「あら?青龍が加護を与えてるのはシア、ナターシャによ。知ってると思うけど、ナターシャは私の娘なの。私に加護を与えてくれてるのは女神イズール様と、その妹の月の女神のルナ様よ。青龍は違うわね。大体、そんなにいっぱい加護貰っても仕方ないでしょうに。」
とアハハと笑いながらあっけらかんと言い放つ母上に、ユニコーン様は呆気に取られたかのように黙られたんだ。
母上は、森の泉の奥にある森の中で、ターシャが見つけた有翼の聖獣ユニコーン様から、ユニコーンを傷つけた相手について聞いた事に眉をひそめられた。
『我は魔族に操られてしまった人間達が住まう地の聖獣であった。我はその地に加護を与え、その地の町の娘と契約をしたのだ。』
「「…………」」
『ある日我は聖獣王に呼ばれ、その地を1週間程離れる事となった。その間に魔族が侵攻し、長やその配下の者達を支配し操ってしまった。』
「え?じゃあその娘さんも?」
という母上の言葉にユニコーン様は、
『いや、娘は……操られているふりをしていた。』
「操られているふり?それはどういう事ですか?」
訳が分からない私がそう尋ねると、
『その地には、我が留守の間に伝令を頼んだ木菟がおるのだが、その者から魔族の侵攻を受けたと聞いた我は、急いでその地に戻ったのだ。すると、我が住まう聖なる森と呼ばれる場に娘が待っておった。』
「「…………」」
『娘は言った。「聖獣様!早くお逃げ下さい!この地は魔族によって乗っ取られてしまいました。魔族は聖獣様を亡きものにしようとしています!父上も母上も、忠実なる家臣達でさえ、魔族に心を奪われ、今や聖獣様を敵とみなしております。」と』
「その様子だと、その娘さんはまだ正気だったのね?で、それからどうしたの?」
『娘は我との契約を解除すると……』
「解除……何故その方はそんな事を……」
契約を解除すると言ったその人の真意が分からずにいた私に、
「ユニコーンを守るために、その子は苦渋の選択をしたの。」
と母上はそう仰った。
「聖獣であるユニコーンとの契約結んでいるままだと、ユニコーンはその地に縛られてしまう事になるのよ。」
「そうなのですか?母上」
『そうだ。我ら聖獣は、契約者と常に共にある。契約者がいる限り、その地に加護を与え続けるのだ。』
私の問いに、母上ではなくユニコーン様が答えて下さった。
「だから彼女はユニコーンとの契約を解除して、貴方を逃がしたのね?でも何故あんなに傷だらけだったの?呪いはいつかけられてたわけ?」
と、立て続けにユニコーン様に質問をぶつける母上。
『娘が、我との契約解除すると宣言したまさにその時。長率いる人間達が我と娘がいる場に到着した。長達人間は、我に向かって矢を放とうとした。娘は我を庇おうとした為、我は娘を蹴り飛ばしたのだ。それを見て怒った長達は、走り出した我に向かって矢を放った。何本も何本も飛んでくる矢を何とか振り払い、躱しながら逃げるも、何本かは我の身体に刺さった。その鏃には毒が塗られておったのだろう。人間が作った毒であれば我は聖獣故、無効化する事も出来るのだが、魔族の毒を無効化する事は出来ぬ。体内に入った毒は、次第に我の身体を侵食していった。多分であるが、聖女マコのいう呪いも、その鏃に込められていたのやも知れぬ。』
とユニコーン様はその大きな瞳を悲しそうに揺らしながらそう仰った。
「そうだったの……。で、カルディール伯爵領に辿り着いたってわけね。頑張ったのね、貴方」
そう言ってユニコーン様の身体をポンポンと叩かれる母上に、
『あぁ。この地は青龍殿が加護を与えおる聖女が住まう地と聞いておったのでな。』
と仰るユニコーンに、
「あら?青龍が加護を与えてるのはシア、ナターシャによ。知ってると思うけど、ナターシャは私の娘なの。私に加護を与えてくれてるのは女神イズール様と、その妹の月の女神のルナ様よ。青龍は違うわね。大体、そんなにいっぱい加護貰っても仕方ないでしょうに。」
とアハハと笑いながらあっけらかんと言い放つ母上に、ユニコーン様は呆気に取られたかのように黙られたんだ。
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