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第6章 番外編(聖獣ユニコーンとの出会い)
白馬を救う 2
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私達が住まうカルディール伯爵邸へ白馬を連れていく事になったのはいいが、今私達がいるこの場所は、邸より離れた森の泉がある場所よりも更に森の奥深い位置だ。
とてもじゃないが、この場所から泉付近に置いてある馬車まで、人の手だけで白馬を運ぶ事は難しいのは目に見えている。
実はこのカルディール伯爵家の領地は、サルベージ王国一 二を争う広大な敷地面積を誇っている。
また、父上が治めておられる伯爵領の隣りの領地は、私達のお爺様でいらっしゃるカルディール侯爵領があるが、この二つの領地は自由に行き来出来、領民に対して関税等はない為、物資や商品のやり取りも自由だ。
よって、二領の総面積の広さから、他国から来た人達は、ここを"カルディール王国”と親しみを込めて呼んでいる。
そう。父上の領地とお爺様の領地は、母上の強大な結界魔法により護られている為、王都や他領地よりも安全なのだ。
だが、時にこの領地の広さに不都合な点が生じやすい事例もある。
今回の様な事例もその一つと言えるだろう。
私は、考え込まれている母上を見つめながら、白馬を励まし続けていた。
すると、
「ま、やるしかないわね。」
と母上が口を開いてそう仰った。
「何をなさるのですか?母上。」
と尋ねる私に、
「全員転移て事よ」
とパチンと片目を瞑ってみせたんだ。
母上が仰った"全員転移”とは、此処にいる全員を転移魔法で森の泉まで転移するという事だ。
私にはその力はないけれど、相当な魔力を使うという知識はある。
「善は急げね。リック?」
「どうしたマコ。」
「全員転移するから、白馬を抱いてくれる?」
と仰る母上に、
「白馬は私が抱きます!」
と言って、私は白馬をギュッと抱き締めた。
すると母上は優しく微笑まれ、
「分かったわ、マーミリアン。言った以上責任持って白馬を守りなさいね。」
と仰った。
私は力強く頷き、白馬を抱き締めた。
それをご覧になられた母上は、
「リック。シアを任せても?」
「分かった。ナターシャ、おいで。」
とターシャを任された父上が、ターシャに手を伸ばした。
ターシャは、その手に抱かれると、
「父様、母様。青龍も……。シアは青龍と一緒に帰りたいのです。」
と言って、青龍様を抱き締めている。
「え?青龍も?てか青龍。貴方、聖獣でしょ?自分で帰りなさいよね。」
と仰る母上に、
『まぁ良いでは無いか、聖女マコよ。ついでであろう?』
と仰って、ターシャの服の中にするりと入った青龍様に、
「もう!くすぐったいわ、青龍。」
と言って父上の腕の中で動くターシャに、
「コラ!そんなに動くと、転移中に落としてしまうぞ!じっとしていなさい!」
と父上がターシャを窘めた。
「分かったわ、父様。良い子にします。青龍もよ?良い子にしていなさい?良いわね?」
と、服の襟元を少しだけ引っ張って、自分よりも遥かに歳上であろう青龍に言って聞かすターシャ。
「シアにかかれば、青龍もペット同様ね。」
と仰ってフフッと笑われた母上は、
「シア、しっかりと父様にしがみつきなさい!マーミリアン?そのままの体制で私の手を握れる?」
と仰った。
私はコクンと頷き、手を目一杯伸ばして母上の手を握った。
すると父上は、そんな母上の腰をターシャを抱いている反対の腕でしっかりと抱かれ、
「いけるか?マコ。」
と仰った。
「えぇ。いけるわ!」
と言うや否や、母上は無詠唱で私達の足元に魔法陣を展開した。
「泉に転移するわよ!いい事?どんな事があっても互いの手を離さないで!!『森の泉へ転移』」
と母上が仰ったと同時に、私達は眩しい光に包まれた。
あまりの眩しさに、私はギュッと目を閉じ、母上の手を力一杯握りしめたんだ。
とてもじゃないが、この場所から泉付近に置いてある馬車まで、人の手だけで白馬を運ぶ事は難しいのは目に見えている。
実はこのカルディール伯爵家の領地は、サルベージ王国一 二を争う広大な敷地面積を誇っている。
また、父上が治めておられる伯爵領の隣りの領地は、私達のお爺様でいらっしゃるカルディール侯爵領があるが、この二つの領地は自由に行き来出来、領民に対して関税等はない為、物資や商品のやり取りも自由だ。
よって、二領の総面積の広さから、他国から来た人達は、ここを"カルディール王国”と親しみを込めて呼んでいる。
そう。父上の領地とお爺様の領地は、母上の強大な結界魔法により護られている為、王都や他領地よりも安全なのだ。
だが、時にこの領地の広さに不都合な点が生じやすい事例もある。
今回の様な事例もその一つと言えるだろう。
私は、考え込まれている母上を見つめながら、白馬を励まし続けていた。
すると、
「ま、やるしかないわね。」
と母上が口を開いてそう仰った。
「何をなさるのですか?母上。」
と尋ねる私に、
「全員転移て事よ」
とパチンと片目を瞑ってみせたんだ。
母上が仰った"全員転移”とは、此処にいる全員を転移魔法で森の泉まで転移するという事だ。
私にはその力はないけれど、相当な魔力を使うという知識はある。
「善は急げね。リック?」
「どうしたマコ。」
「全員転移するから、白馬を抱いてくれる?」
と仰る母上に、
「白馬は私が抱きます!」
と言って、私は白馬をギュッと抱き締めた。
すると母上は優しく微笑まれ、
「分かったわ、マーミリアン。言った以上責任持って白馬を守りなさいね。」
と仰った。
私は力強く頷き、白馬を抱き締めた。
それをご覧になられた母上は、
「リック。シアを任せても?」
「分かった。ナターシャ、おいで。」
とターシャを任された父上が、ターシャに手を伸ばした。
ターシャは、その手に抱かれると、
「父様、母様。青龍も……。シアは青龍と一緒に帰りたいのです。」
と言って、青龍様を抱き締めている。
「え?青龍も?てか青龍。貴方、聖獣でしょ?自分で帰りなさいよね。」
と仰る母上に、
『まぁ良いでは無いか、聖女マコよ。ついでであろう?』
と仰って、ターシャの服の中にするりと入った青龍様に、
「もう!くすぐったいわ、青龍。」
と言って父上の腕の中で動くターシャに、
「コラ!そんなに動くと、転移中に落としてしまうぞ!じっとしていなさい!」
と父上がターシャを窘めた。
「分かったわ、父様。良い子にします。青龍もよ?良い子にしていなさい?良いわね?」
と、服の襟元を少しだけ引っ張って、自分よりも遥かに歳上であろう青龍に言って聞かすターシャ。
「シアにかかれば、青龍もペット同様ね。」
と仰ってフフッと笑われた母上は、
「シア、しっかりと父様にしがみつきなさい!マーミリアン?そのままの体制で私の手を握れる?」
と仰った。
私はコクンと頷き、手を目一杯伸ばして母上の手を握った。
すると父上は、そんな母上の腰をターシャを抱いている反対の腕でしっかりと抱かれ、
「いけるか?マコ。」
と仰った。
「えぇ。いけるわ!」
と言うや否や、母上は無詠唱で私達の足元に魔法陣を展開した。
「泉に転移するわよ!いい事?どんな事があっても互いの手を離さないで!!『森の泉へ転移』」
と母上が仰ったと同時に、私達は眩しい光に包まれた。
あまりの眩しさに、私はギュッと目を閉じ、母上の手を力一杯握りしめたんだ。
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