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第4章 マコこそが真の聖女
カイルの困惑と敗北感
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父上が…父上があの様な事を思っていたなど、俄に信じられなかった。
確かに私は、聖女と結婚する事が目標であり夢でもあった。
聖女召喚の時期に王子としてこの世に生を受けたのであれば、それを望むのは当然だと思う。
女神によって召喚されたチカを見た瞬間、私はチカに恋をした。運命の相手だと思った。
だから求婚をし、婚約関係となったのだ。
やがて私はチカと結ばれた。私の腕の中のチカはとても可愛らしかった。それが後に命取りとなる事なぞ頭の中からキレイさっぱり消えていて、夢中でチカを抱いた。
純潔で無い聖女は封印が出来ない。
父上から怒りを買った私とチカは、大氾濫を食い止めている騎士団に合流した。
だが…何も出来なかった。私達が到着した時には、全てが終わっていたから。
城でのばん晩餐会に招かれた聖女マコを巡り、私と父上は言い争いを始めてしまった。
封印をした真の聖女のマコを、親子で取り合った。
それにお怒りになった女神イズール様が、マコの魔法により降臨され、私達親子の愚かな言動が暴露されてしまったのだ。
母上は私達の醜態に呆れ会場から退室され、父上は断罪のショックで倒れられた。
チカに聖女の魔法をと頼むが、チカはまだ聖魔法が使えない。
それもその筈、私のせいでチカはまだ聖魔法の修得が出来てなかったから。
意識が戻らない父上に縋る私を退かせ、無理矢理チカを連れてきたマコは、チカに聖魔法を施すよう指南する。チカはまだ聖魔法が出来ない事をわかってての仕打ちに腹を立てる私を一喝し、マコはチカに聖魔法の力を授けた。
光に包まれたチカからそっと離れて行ったマコは、先程伯爵位に即位したリューベックに抱き締められ頭を撫でられていた。
駆けつけた従医に感謝され、戸惑っているチカの姿を見たマコは、リューベックと2人、そっと大広間を出て行こうとする。
そんな彼等を、私は大声で引き止めた。
「マコ!父上を助けてくれた事感謝する。ありがとう!」
私の声に立ち止まり振り向いた彼等。
「陛下を助けたのはチカ様ですよ?カイル王子。」
「いや、父上を助けてくれたのはチカに聖魔法を授けてくれたマコのおかげだ。貴女はなんと清らかで優しい心の持ち主なのだろう。それを私はあの日……すまなかった。」
頭を下げる私に、
「王族が下の者に頭を下げるのは駄目なんじゃなかった?」
とマコが言う。
こんな時でも私の立場を気遣ってくれるマコに、私はどんどん惹かれていく。
「ありがとう、マコ。貴女は真の聖女だ。どうかこの私と結婚して欲しい。」
私のこの発言に大広間が水を打ったように静まり返った。
「何言ってんの?カイル王子。貴方にはチカさんがいるでしょ?」
「チカは…チカは聖女では「無くしたのは誰?ってか、聖女じゃなくなったって決定した根拠は何?」」
「は?根拠とは?マコは一体何をい「確かに扉の封印は純潔の聖女しか出来ない。でも、そうじゃなくなったからって、聖女の仕事 聖女の役割、聖魔法も含めて、全てが無くなるわけじゃないでしょ?違うの?大司教様?」」
「如何にも。殿下、チカ様は封印をする事は出来ませんでしたが、聖女になるべく日々の鍛錬に励んでおられました。チカ様の聖魔法習得は、徐々に進んでいらしたのです。」
「え?」
「大司教様の言うとおりだと思うわよ?でなきゃ、私が助力したくらいじゃ王様助かんなかったし?」
「そ…れは……」
「チカさんには、私の聖魔法を受け取れるだけの魔力があった。私がチカさんにあげた聖魔法はほんの少しだけ。彼女の王様を助けたい!って気持ちが本当の力を目覚めさせたのよ。愛する貴方のお父さんを助けてあげたかった彼女の純粋な気持ちが、王様を救ったのよ。彼女はちゃんと聖女だからね。」
「そうですよ、殿下。チカ様には、殿下の伴侶として、また聖女として、この国を守って貰わなければなりません。明日からまた厳しい特訓に励んで貰いますよ?良いですか?チカ様。」
いつの間にか私の近くに来ていたチカが、戸惑いながらも頷いた。
「カイル様。私、頑張るから。だから捨てないで下さい。」
真っ黒な瞳で見上げられ、私はチカを抱き締める。
「それからさぁ。私、王子様とは結婚出来ないから。」
マコの言葉に驚き、
「え?今なんて……」
チカもマコの言葉に驚いて固まっている。
「私、もう婚約してるんだよね。」
「え?あ、相手は「私です。皇太子殿下。」」
マコの肩を抱き寄せマコの頬に接吻をするリューベックと、恥ずかしそうに頬を染めリューベックを見つめるマコの姿に、私は敗北感と絶望感に苛まれた。
確かに私は、聖女と結婚する事が目標であり夢でもあった。
聖女召喚の時期に王子としてこの世に生を受けたのであれば、それを望むのは当然だと思う。
女神によって召喚されたチカを見た瞬間、私はチカに恋をした。運命の相手だと思った。
だから求婚をし、婚約関係となったのだ。
やがて私はチカと結ばれた。私の腕の中のチカはとても可愛らしかった。それが後に命取りとなる事なぞ頭の中からキレイさっぱり消えていて、夢中でチカを抱いた。
純潔で無い聖女は封印が出来ない。
父上から怒りを買った私とチカは、大氾濫を食い止めている騎士団に合流した。
だが…何も出来なかった。私達が到着した時には、全てが終わっていたから。
城でのばん晩餐会に招かれた聖女マコを巡り、私と父上は言い争いを始めてしまった。
封印をした真の聖女のマコを、親子で取り合った。
それにお怒りになった女神イズール様が、マコの魔法により降臨され、私達親子の愚かな言動が暴露されてしまったのだ。
母上は私達の醜態に呆れ会場から退室され、父上は断罪のショックで倒れられた。
チカに聖女の魔法をと頼むが、チカはまだ聖魔法が使えない。
それもその筈、私のせいでチカはまだ聖魔法の修得が出来てなかったから。
意識が戻らない父上に縋る私を退かせ、無理矢理チカを連れてきたマコは、チカに聖魔法を施すよう指南する。チカはまだ聖魔法が出来ない事をわかってての仕打ちに腹を立てる私を一喝し、マコはチカに聖魔法の力を授けた。
光に包まれたチカからそっと離れて行ったマコは、先程伯爵位に即位したリューベックに抱き締められ頭を撫でられていた。
駆けつけた従医に感謝され、戸惑っているチカの姿を見たマコは、リューベックと2人、そっと大広間を出て行こうとする。
そんな彼等を、私は大声で引き止めた。
「マコ!父上を助けてくれた事感謝する。ありがとう!」
私の声に立ち止まり振り向いた彼等。
「陛下を助けたのはチカ様ですよ?カイル王子。」
「いや、父上を助けてくれたのはチカに聖魔法を授けてくれたマコのおかげだ。貴女はなんと清らかで優しい心の持ち主なのだろう。それを私はあの日……すまなかった。」
頭を下げる私に、
「王族が下の者に頭を下げるのは駄目なんじゃなかった?」
とマコが言う。
こんな時でも私の立場を気遣ってくれるマコに、私はどんどん惹かれていく。
「ありがとう、マコ。貴女は真の聖女だ。どうかこの私と結婚して欲しい。」
私のこの発言に大広間が水を打ったように静まり返った。
「何言ってんの?カイル王子。貴方にはチカさんがいるでしょ?」
「チカは…チカは聖女では「無くしたのは誰?ってか、聖女じゃなくなったって決定した根拠は何?」」
「は?根拠とは?マコは一体何をい「確かに扉の封印は純潔の聖女しか出来ない。でも、そうじゃなくなったからって、聖女の仕事 聖女の役割、聖魔法も含めて、全てが無くなるわけじゃないでしょ?違うの?大司教様?」」
「如何にも。殿下、チカ様は封印をする事は出来ませんでしたが、聖女になるべく日々の鍛錬に励んでおられました。チカ様の聖魔法習得は、徐々に進んでいらしたのです。」
「え?」
「大司教様の言うとおりだと思うわよ?でなきゃ、私が助力したくらいじゃ王様助かんなかったし?」
「そ…れは……」
「チカさんには、私の聖魔法を受け取れるだけの魔力があった。私がチカさんにあげた聖魔法はほんの少しだけ。彼女の王様を助けたい!って気持ちが本当の力を目覚めさせたのよ。愛する貴方のお父さんを助けてあげたかった彼女の純粋な気持ちが、王様を救ったのよ。彼女はちゃんと聖女だからね。」
「そうですよ、殿下。チカ様には、殿下の伴侶として、また聖女として、この国を守って貰わなければなりません。明日からまた厳しい特訓に励んで貰いますよ?良いですか?チカ様。」
いつの間にか私の近くに来ていたチカが、戸惑いながらも頷いた。
「カイル様。私、頑張るから。だから捨てないで下さい。」
真っ黒な瞳で見上げられ、私はチカを抱き締める。
「それからさぁ。私、王子様とは結婚出来ないから。」
マコの言葉に驚き、
「え?今なんて……」
チカもマコの言葉に驚いて固まっている。
「私、もう婚約してるんだよね。」
「え?あ、相手は「私です。皇太子殿下。」」
マコの肩を抱き寄せマコの頬に接吻をするリューベックと、恥ずかしそうに頬を染めリューベックを見つめるマコの姿に、私は敗北感と絶望感に苛まれた。
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