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第4章 マコこそが真の聖女

愛し子の本気とざまぁ~王都の貴族~

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「皆の者。今宵こよいはよくぞ集まってくれた。みなも承知しているとは思うが、我が国に古くから言い伝えられし魔獣の洞窟は、聖女により無事封印されたのだ!」

「おお!やって下さったか。」

「流石は聖女様だ。」

口々に聖女をたたえ、割れんばかりの拍手を送る貴族達。

勿論その視線の先にいる『聖女』とは、チカ・・の事である。
貴族達から賞賛の声を浴びるチカは、何もしていない、むしろ聖女としての仕事を何一つ出来ていないという事実に、決まりが悪いのか終始しゅうしうつむいていた。

此度こたびの封印には、遥々はるばる遠方の領地から侯爵家の者とその領地に住まう聖女も参じてくれたのだ。紹介しよう。」

サルベージ王国国王ダイバル陛下が声高らかにその者の名前を、手元の紙を見ながら読み上げた。

「カルディール侯爵家子息リューベック、そして…カルディール侯爵領の聖女マコである。」

名を呼ばれた2人はその場で立ち上がると、王族と貴族達に向かい礼をした。

貴族達はその2人の美しさに、「ほお~」と感嘆の声をもらす。

「お2人は王の前へ。」

と宰相であるマミエル公爵にうながされ、リューベックはマコをエスコートし、一段高い壇上にいる王の前までやってきた。

騎士の正装に身を包み、髪をしっかり後ろに流しているリューベックは、王の前で騎士としての礼を、一方美しいドレス姿のマコは、貴族でもなんでもない身分ではあったがカーテシーをした。

満足気に頷く国王は、

「そなた達両名の活躍は騎士団長ランスロットより聞き及んでおる。本当に良くやってくれた。改めて礼を言う。ご苦労であった。」

王の言葉に2人は黙って頭を下げた。

王は続けて

「この2人には、此度の労をたたえ、リューベックには伯爵位を またガルディール領の聖女マコは、正式に王都の聖女として迎え入れようと思うが、如何であろう。」

と言った。

王の提言に是の意を込めた拍手が広間を包む。

宰相マミエル公爵が伯爵位の証である勲章と、王都の正式な聖女の証であるレースがふんだんに使われたヴェールを王前に掲げる。それを取り上げ、リューベックとマコに渡す。
2人はそれを両手で受け取り、リューベックは左胸に勲章を付け、マコはヴェールを被る。と、マコの近くにいつの間にか現れた大神官ヤーザックが、金子銀子で作られた花冠を乗せた。

カイル王子の婚約者として王子の隣に座るチカは、ゲームではカイル推しではあったが、リューベックの事も気になっており、眼前がんぜんのリューベックの凛々しい姿に、頬を染め思わず見とれてしまう。

勿論それはチカだけにとどまらない。
親に連れられこの晩餐会に来た貴族令嬢もしかり。
騎士爵位ごときでは、いくら美丈夫だとしても、結婚しても庶民と似た生活しか出来ないが、リューベックはたった今伯爵位を得たばかりだ。
伯爵は当然貴族の一員。しかもリューベックは侯爵家の子息。将来安泰である事は言うまでもない。
令嬢達は、リューベックに話しかける事が出来る瞬間を、今か今かと虎視眈々こしたんたんと狙い 待っていた。

一方マコに対しても同様だった。
聖なる聖女としての姿となったマコを見た貴族達は、

「見よ!あのマコ様のお姿を。」

「あぁ…。なんと麗しい。」

「あのお姿。まるで花嫁のようだ。」

とマコを褒める。

ただ、リューベックに対する令嬢達の反応とは別だった。
聖女は王族に嫁ぐことが多かった為、自分の息子の嫁にと望む事は出来ない。
であるならば、マコに取り入る事で自身への覚えを良くして貰おうと媚びを売るしか無かった。

ただし。国王と王子は別である。理由は、聖女を自身の側妃としてめとる事が出来るからである。

だからこそ、この後ここにいる全員が言葉を失う発言をし、会場は混乱状態に陥る事になるのだった。





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