は?勝手に召喚しといてそれですか?

Saeko

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第4章 マコこそが真の聖女

愛し子の本気とざまぁ~王都凱旋編〜

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サルベール王国の王都を囲む城門を潜る王家の馬車と、それを守るように騎士団の一団が、王都に住む人々からの声援の中、王城までの道のりを凱旋がいせんする。

みな口々に、

「聖女様がやって下さった。」

「皇太子妃様こそ、真の聖女様だ。」

「これでこの国も安泰あんたいだな。」

と王子とその婚約者をたたえ、賞賛しょうさんする言葉を発していた。

馬車の中にいる2人に、それ等が聞こえているのかはさだかでは無いが、馬車の周りを囲む騎士団隊員達は皆、(王子達は何もしていない。全てが終わった頃のこのことやってきただけだ。むしろ賞賛されるべきは後ろのアイツらのはずだ。)と思っていた。




一団が王城の門をくぐると、サルベール国王自らが出迎えた。

みなの者 よくやった。ご苦労であったな。今宵こよいぜいを尽くしたもてなしのうたげを催す運びになっておる。それまで皆は、客室でくつろいでおるとよい。」
一団は、王の言葉にこうべを垂れた。

「父上。只今戻りました。」

「おお!カイルよ。そなたも騎士団の一員として力を尽くしてきたのであろうな?」

「…………」
「どうしたのだ?カイルよ。」

「……は、はい。…………私の持てる全てを尽くしました。」

「そうか、そうか。して、チカよ。そなたはどうなのだ?」

「わ、私は……その……。」

「チ、チカも私と共に…。」

カイルのその言葉に、満足気に頷く国王陛下。そしておもむろに口を開きこう言った。

「して………。もう1人の聖女は何処におるのだ?カルディール侯爵領の聖女とらやは。……聖女殿、どうか姿を現してはくれぬか?」

と。

すると、ランスロット率いる騎士団が二手に別れ、花道を作るかのように並んだ。
その道をカルディール侯爵領の聖女と呼ばれた女性が、1人の美丈夫な男性にエスコートされ、王の目の前で止まり静かにカーテシーをしたのだ。
その姿は、まるで侯爵令嬢の様な美しい所作だった。

「お久しゅうございます。国王陛下。」

「おお!そうであったな。聖女殿。変わりないか?」

「カルディール侯爵閣下の領地にて、幸せに暮らしております。」

「そうかそうか。それは良かった。そなたも疲れたであろう。客室を用意した。宴までゆるりと過ごすが良いぞ。」

(真の聖女を王都に引き止め、このまま王都の教会に住まわせてしまおう。あわよくば、私の側室にしても良いかもしれんな…)等とたくらんでいた。
そんな国王の思惑おもわくを知ってか知らずか。
ただ、聖女は黙って頷いた。

一方カイル王子はというと……

(あの時俺は、チカしか見ていなかった。が、この女もどうだ。なかなか美しいではないか。しかも聖女。そして……チカには無い大人の魅力が……。やはり側室として迎え入れるよう、父上に懇願こんがんしよう。)
カイルはそう思いながら、聖女マコの身体をめる様に見ていた。
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