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第3章 聖女の力と幸せな時間
王都の聖女 1
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「こんの~。大たわけが~!!」
バーーーーーーーン!!
王の執務室に響き渡る怒声と机を叩く音に、カイル王子とその婚約者のチカが震え上がった。
「父上。そのようにお怒りになると、チカが怯えてしま「ばっかも~ん!!」ひっ!」
「私のこの怒りの原因は、全てカイル、お前のせいだという事が分からぬか!!」
国王である父親が何故こんなに怒っているのか皆目見当もつかないカイルは首を傾げた。
その様子にとうとう頭を抱えだした国王は、大司教を呼びつけ
「そこの馬鹿息子に分かる様、私の怒りの理由を説明してやってくれ。」
と言い、国王はそっぽを向いてしまった。
仕方なく、大司教は話始めた。
「カイル王子。チカ様は聖女としてこの国に召喚されました。」
「それは分かっております。だからこそ、チカは私の妻になったのですから。」
「では王子。魔獣の大氾濫を封印した異世界からの聖女は、『黒髪の少女』であると記録されているのは、ご存知ですかな。」
「勿論。知っております。」
「では…魔女を封印する為の聖女の条件もご存知ですな?」
「封印の条件……」
カイルは暫し考えた直後、真っ青になり、俯いたまま震え出した。
その様子を隣で見ていたチカは、心配そうにカイルを覗き見る。
そして、徐ろに口を開いたチカは大司教に尋ねた。
「あの…大司教様?私には全然わからないのですが…なんの事ですか?」
と。
それに答えた大司教の言葉に、チカもまた震え出してしまう。
封印する為の聖女の条件
それは……
【純潔の聖女である事】
チカは少女であったが、純潔の意味くらい知っていた。
純潔とは、バージン(処女)である事を。
チカは王子にバージンを捧げてしまった事で封印が出来なくなってしまったという事実を知った。そしてとうとうチカは泣き出してしまった。
(私がカイル様と結婚出来るのは、転生した聖女だから。聖女じゃなくなったら、王子様に嫌われちゃうよね?チカは捨てられちゃうよね?)
そう考えると涙が止まらなくなり、カイルの胸に縋り泣きじゃくり始めた。
カイルは泣き止まないチカを宥めながら、
「父上。お願いがございます。」
「なんだ?カイル。申してみよ。」
「チカと一緒に召喚された者を、王都に呼び戻す伝令をあの者が暮らす修道院に出して下さいませんか。」
と言った。
「ふん!何を言い出すかと思えば…。カイルよ。あの者は聖女認定を受けておらぬただの庶民なのだぞ。呼び戻しても無駄というもの。」
この期に及んでまだ性懲りもない事を言い出すカイルを、王は睨みつけたのでした。
バーーーーーーーン!!
王の執務室に響き渡る怒声と机を叩く音に、カイル王子とその婚約者のチカが震え上がった。
「父上。そのようにお怒りになると、チカが怯えてしま「ばっかも~ん!!」ひっ!」
「私のこの怒りの原因は、全てカイル、お前のせいだという事が分からぬか!!」
国王である父親が何故こんなに怒っているのか皆目見当もつかないカイルは首を傾げた。
その様子にとうとう頭を抱えだした国王は、大司教を呼びつけ
「そこの馬鹿息子に分かる様、私の怒りの理由を説明してやってくれ。」
と言い、国王はそっぽを向いてしまった。
仕方なく、大司教は話始めた。
「カイル王子。チカ様は聖女としてこの国に召喚されました。」
「それは分かっております。だからこそ、チカは私の妻になったのですから。」
「では王子。魔獣の大氾濫を封印した異世界からの聖女は、『黒髪の少女』であると記録されているのは、ご存知ですかな。」
「勿論。知っております。」
「では…魔女を封印する為の聖女の条件もご存知ですな?」
「封印の条件……」
カイルは暫し考えた直後、真っ青になり、俯いたまま震え出した。
その様子を隣で見ていたチカは、心配そうにカイルを覗き見る。
そして、徐ろに口を開いたチカは大司教に尋ねた。
「あの…大司教様?私には全然わからないのですが…なんの事ですか?」
と。
それに答えた大司教の言葉に、チカもまた震え出してしまう。
封印する為の聖女の条件
それは……
【純潔の聖女である事】
チカは少女であったが、純潔の意味くらい知っていた。
純潔とは、バージン(処女)である事を。
チカは王子にバージンを捧げてしまった事で封印が出来なくなってしまったという事実を知った。そしてとうとうチカは泣き出してしまった。
(私がカイル様と結婚出来るのは、転生した聖女だから。聖女じゃなくなったら、王子様に嫌われちゃうよね?チカは捨てられちゃうよね?)
そう考えると涙が止まらなくなり、カイルの胸に縋り泣きじゃくり始めた。
カイルは泣き止まないチカを宥めながら、
「父上。お願いがございます。」
「なんだ?カイル。申してみよ。」
「チカと一緒に召喚された者を、王都に呼び戻す伝令をあの者が暮らす修道院に出して下さいませんか。」
と言った。
「ふん!何を言い出すかと思えば…。カイルよ。あの者は聖女認定を受けておらぬただの庶民なのだぞ。呼び戻しても無駄というもの。」
この期に及んでまだ性懲りもない事を言い出すカイルを、王は睨みつけたのでした。
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