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第3章 聖女の力と幸せな時間
豊穣祭はバレンタイン?~リューベック編2~
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それから数日後、突然司祭から呼び出しがあった。
明日からマコの護衛で魔獣の森に行って欲しいというものだった。
唐突な依頼ではあったが、母上の恩人の護衛だからと、俺は二つ返事で支度をし、魔獣の森へ彼女を連れて行った。
そこでの彼女は、俺の護衛なぞ全く必要ないのでは?と思えるくらい強く、そして美しかった。
俺が彼女に強く惹かれたのは、なんと言っても母上の呪いを祓ってくれた事だ。
あの日、母上の病を治した後の複雑そうな顔、そして魔獣討伐に出た意味は、全部この日のこの魔法に繋がっていた。
そして我が侯爵家をずっと呪っていた魔女をも許し浄化する彼女の優しさ。慈悲深い女神イズール様の愛し子の彼女は、真の聖女だと思った。
呪いの浄化が終わった瞬間、安堵の表情を浮かべながらも力尽きたのか?その場に倒れそうになった彼女を支え抱き締めた。
そして分かった。
俺は彼女を、マコを守りたい。
マコを自分のものにしたい。
俺はマコを愛している
と……。
豊穣祭の夜
それは男性が、意中の女性を連れ出し、愛の告白をする夜でもある。
俺はマコに約束を取り付け、砦の上に連れて来た。
月明かりに照らされるマコは美しかった。
「マコ…。俺は、マコが好きだ。」
「……」
「どうか俺と結婚して欲しい。」
彼女からしたら、思いがけない俺からのプロポーズに、マコは固まってしまった。
その後訪れた長い長い沈黙は、一世一代の大舞台は失敗に終わったかと思った。
俺の心は虚しさでいっぱいになりそうになったその時、
「私……私……」
とマコが小さな声で呟いている。
俺は彼女の頬に触れ、小さな顔を上向かせた。
俺を見上げたマコの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「わ、私…も……私も、貴方が好きです。」
俯きそうになる彼女を、俺の腕の中にすっぽりと入ってしまう小さな細い身体を、俺は壊さない様にギュッと抱き締めた。
「マコ。愛している。」
「リューベック様。私も…愛しています。」
俺の腕の中でくぐもった声ではあったが、しっかりと告げてくれた彼女の言葉は、俺を最強にした。
俺はマコの腰を抱き寄せ、頬に手を当て、上を向かせ……
そして、彼女の震えるピンクの薔薇の花弁のような唇にキスを落とした。
それはまるで月の女神に祝福された、厳かで神聖な2人だけの儀式だった。
月は、飽きもせず 抱きしめ合い見つめ合ってはキスをする俺たちを、ずっと見ていた。
明日からマコの護衛で魔獣の森に行って欲しいというものだった。
唐突な依頼ではあったが、母上の恩人の護衛だからと、俺は二つ返事で支度をし、魔獣の森へ彼女を連れて行った。
そこでの彼女は、俺の護衛なぞ全く必要ないのでは?と思えるくらい強く、そして美しかった。
俺が彼女に強く惹かれたのは、なんと言っても母上の呪いを祓ってくれた事だ。
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そして我が侯爵家をずっと呪っていた魔女をも許し浄化する彼女の優しさ。慈悲深い女神イズール様の愛し子の彼女は、真の聖女だと思った。
呪いの浄化が終わった瞬間、安堵の表情を浮かべながらも力尽きたのか?その場に倒れそうになった彼女を支え抱き締めた。
そして分かった。
俺は彼女を、マコを守りたい。
マコを自分のものにしたい。
俺はマコを愛している
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「……」
「どうか俺と結婚して欲しい。」
彼女からしたら、思いがけない俺からのプロポーズに、マコは固まってしまった。
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「私……私……」
とマコが小さな声で呟いている。
俺は彼女の頬に触れ、小さな顔を上向かせた。
俺を見上げたマコの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「わ、私…も……私も、貴方が好きです。」
俯きそうになる彼女を、俺の腕の中にすっぽりと入ってしまう小さな細い身体を、俺は壊さない様にギュッと抱き締めた。
「マコ。愛している。」
「リューベック様。私も…愛しています。」
俺の腕の中でくぐもった声ではあったが、しっかりと告げてくれた彼女の言葉は、俺を最強にした。
俺はマコの腰を抱き寄せ、頬に手を当て、上を向かせ……
そして、彼女の震えるピンクの薔薇の花弁のような唇にキスを落とした。
それはまるで月の女神に祝福された、厳かで神聖な2人だけの儀式だった。
月は、飽きもせず 抱きしめ合い見つめ合ってはキスをする俺たちを、ずっと見ていた。
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