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第3章 聖女の力と幸せな時間
豊穣祭はバレンタイン?~当日編(昼間)〜
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いい匂いがそこかしこから漂い、賑わう声が聞こえる。
此処ジーンの店でも、パンとクッキーのいい匂いが漂い、道行く人達にクッキーの試食と入店を促す声掛けをする子供達の声が聞こえる。
「いらっしゃいませ~」
「美味しいクッキーは如何ですか?」
「焼きたてパンの詰め合わせ。美味しいですよ~。」
「その場でご希望の言葉を刺繍します。どうですか?」
「畑で採れた新鮮野菜で~す。無農薬で回復魔法付きですよ~。」
子供達は皆揃いの服でキメている。真っ白いシャツと、男の子はベージュのチノパン、女の子はベージュのジャンパースカート姿だ。そして全員、揃いのネクタイをしている。領地のリューベック侯爵家の家紋である柊とトルコキキョウの刺繍入り。
勿論ネクタイも売り物で、色も長さも幅も各種取り揃えて置いてある。
ジーンのパンも孤児院の商品も、午前中から売れ行きは好調だ。名前の刺繍の依頼もあり、うちの可愛いお針子達は汗を拭きふき頑張っている。
そう!季節は日本でいうところの秋。私がこの世界に来て、丁度1年経った計算になる。
天気は快晴。「天高く馬肥ゆる秋」て言葉がピッタリの天候なんだけど、少し動くと汗ばむくらいの気温だ。
よし!アレの出番だね。
私は冷凍庫で凍らせた、オレンジ、イチゴ、葡萄、スイカ、メロンの果肉入り果実水を取り出し、綺麗に洗った短刀でザクザク砕いた物を器に盛り子供達に振る舞った。
「冷た~い!」
「美味しい~!!」
と大喜びする子供達の声に興味を惹かれたお客様にも、
「ご注文頂ければお出ししますよ?」
とメニューを渡す。勿論、字が読めない人でも分かる様にイラスト付きで。
暑さも手伝って、1杯100モン(日本円で100円)の果実水氷(シャーベット)は、刺繍を待つお客様やパンの焼き上がりを待つお客様達によって飛ぶように売れていき、短刀で氷を砕く私とキャシーさんの腕は腱鞘炎になりそうだった。
お昼過ぎ、領主のお屋敷前にある大きな緑地公園の広場で開催される、騎士達による演舞や旅芸人による大道芸を観るため、お客様が一旦引いたのを見計らい、朝から頑張った子供達の服を一張羅に着替えさせ、売上金の1部をお小遣いとして持たせる。
「お店の事は気にせず、お祭りを楽しんでいらっしゃい。渡したお小遣いの中で、上手に計算して欲しい物や食べたい物を買っていいからね。」
「大きな子は、ちゃんと小さな子の面倒をみるのよ?」
私とキャシーさんの言葉に、目をキラキラさせながら頷く子供達。
「キャシー先生。マコ先生。」
「「「「いってきま~す」」」」
「「いってらっしゃい。」」
子供達を見送ると、ジーンが作ってくれたパンをいただく。
「マコ先生?」
「どうしたの?ジーン」
「アイツら大丈夫ですか?子供達だけで行かせるとか……オレ心配なんだよな。」
と眉を下げるジーンに、
「あの子達に持たせた財布と、着ている服には『災難防止』の魔法をかけてあるから、悪い事に巻き込まれる心配はないわよ。」
と伝えた。
ジーンは安心したようで、私が作った果実水氷のメロン味を「美味しい美味しい」と言って舌鼓を打っていた。
此処ジーンの店でも、パンとクッキーのいい匂いが漂い、道行く人達にクッキーの試食と入店を促す声掛けをする子供達の声が聞こえる。
「いらっしゃいませ~」
「美味しいクッキーは如何ですか?」
「焼きたてパンの詰め合わせ。美味しいですよ~。」
「その場でご希望の言葉を刺繍します。どうですか?」
「畑で採れた新鮮野菜で~す。無農薬で回復魔法付きですよ~。」
子供達は皆揃いの服でキメている。真っ白いシャツと、男の子はベージュのチノパン、女の子はベージュのジャンパースカート姿だ。そして全員、揃いのネクタイをしている。領地のリューベック侯爵家の家紋である柊とトルコキキョウの刺繍入り。
勿論ネクタイも売り物で、色も長さも幅も各種取り揃えて置いてある。
ジーンのパンも孤児院の商品も、午前中から売れ行きは好調だ。名前の刺繍の依頼もあり、うちの可愛いお針子達は汗を拭きふき頑張っている。
そう!季節は日本でいうところの秋。私がこの世界に来て、丁度1年経った計算になる。
天気は快晴。「天高く馬肥ゆる秋」て言葉がピッタリの天候なんだけど、少し動くと汗ばむくらいの気温だ。
よし!アレの出番だね。
私は冷凍庫で凍らせた、オレンジ、イチゴ、葡萄、スイカ、メロンの果肉入り果実水を取り出し、綺麗に洗った短刀でザクザク砕いた物を器に盛り子供達に振る舞った。
「冷た~い!」
「美味しい~!!」
と大喜びする子供達の声に興味を惹かれたお客様にも、
「ご注文頂ければお出ししますよ?」
とメニューを渡す。勿論、字が読めない人でも分かる様にイラスト付きで。
暑さも手伝って、1杯100モン(日本円で100円)の果実水氷(シャーベット)は、刺繍を待つお客様やパンの焼き上がりを待つお客様達によって飛ぶように売れていき、短刀で氷を砕く私とキャシーさんの腕は腱鞘炎になりそうだった。
お昼過ぎ、領主のお屋敷前にある大きな緑地公園の広場で開催される、騎士達による演舞や旅芸人による大道芸を観るため、お客様が一旦引いたのを見計らい、朝から頑張った子供達の服を一張羅に着替えさせ、売上金の1部をお小遣いとして持たせる。
「お店の事は気にせず、お祭りを楽しんでいらっしゃい。渡したお小遣いの中で、上手に計算して欲しい物や食べたい物を買っていいからね。」
「大きな子は、ちゃんと小さな子の面倒をみるのよ?」
私とキャシーさんの言葉に、目をキラキラさせながら頷く子供達。
「キャシー先生。マコ先生。」
「「「「いってきま~す」」」」
「「いってらっしゃい。」」
子供達を見送ると、ジーンが作ってくれたパンをいただく。
「マコ先生?」
「どうしたの?ジーン」
「アイツら大丈夫ですか?子供達だけで行かせるとか……オレ心配なんだよな。」
と眉を下げるジーンに、
「あの子達に持たせた財布と、着ている服には『災難防止』の魔法をかけてあるから、悪い事に巻き込まれる心配はないわよ。」
と伝えた。
ジーンは安心したようで、私が作った果実水氷のメロン味を「美味しい美味しい」と言って舌鼓を打っていた。
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